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彼女が現実逃避しすぎて異世界の神になった  作者: 青我
Another World――第三章――
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――異世界書紀―― 第三章 第六節 舞台裏の魔女①

[*Topicks*]〈クエスト〉

 自我とともに与えられた役割に従って、トリガーを持つNPCが存在する。彼らにその自覚はないが、会話や出会いによってそのフラグが立ち、イベントが発生する。そのうちの一つにクエストというものがあり、モンスターを討伐したり、事件を解決することによりアイテムや経験値、スキルを得ることができる。

 時には、思いがけない出会いがあることも――。



 +now lo...ading**



「夜が来る前に、ちょっとだけ行っておきたい場所がある」

「あら、奇遇ね。あたしも同じところに行きたいんだけど、ご一緒していいかしら?」


 置いてけぼりをくらったシロナは頬を膨らませていたが、シロナはシロナで行きたい場所があったのを思い出したらしく、別行動を取ることとなった。


 俺が行っておきたかった場所、それは城だ。

 ユカリと共に散策した記憶を辿りながら、俺とカリンは城へと向かった。


「さすがに門番を前にしたら通れないな……」

「あたしも、訳あって素通りはできないのよね。どうするの?」

「うーん……試しにやってみるか」


「管理代行権限――“容姿変換・空白の席キャラビジュアル・ブランク”」


 透明化――。

 しかし、これは通常の透明化魔法とは違って、キャラクターのビジュアルデータを空白ブランクのものと置き換えているので、魔法による視認はもとより、アイテムなどによって発見されることがない。


「こんないやらしい魔法を使えるなんて……」

「言うな。もとよりそんな発想はないから安心しろ」

「あら? そんな発想ってどんな発想かしら?」

「うるさいっ!」


 こいつは本当に人をおちょくるのが好きみたいだ。

 何となく打ち解けてきている感覚が妙に嫌だったが、以前感じていた嫌悪感はかなり薄れていた。

 本当はいいやつだったのではないかと思ってしまうくらい、表情が自然に感じられた。


「でも、これじゃお互いが視認できないからいざという時困るわよねー」

「うぐ……確かに……」


 そんなやりとりをしながら、俺とカリンは城の中へと向かった――。



 **no...w loadin...g+*



 閑静な庭園――石畳の回廊――。

 荘厳な雰囲気を漂わせる煉瓦の城。

 そこを歩く二つの――妙な影があった。


「ねぇねぇ……あのさー……」

「ん? なんだ? 不平不満やクレームは受け付けないぞ。神聖なる神の御技に酔い痴れるが良い」

「いや、確かにさー……神の御技には違いないのだろうけど……」


 巡回の兵士が向こうから歩いてくる。

 俺とカリンは壁に張り付き、兵士をやり過ごそうとした。

 普通なら壁に寄ることで兵士をやり過ごすことなどできない。

 だが、壁に寄ることによって違和感がない物になることができれば――!


「なんでこの姿なの?」

「だって、そりゃあ魔女といったらあれしかないじゃん」


 魔女といえば、掃除用具に乗って空を飛ぶ。

 カリンはこの姿で良いだろうと思ったのだが……。


「おい、あんなところにデッキブラシなんてあったか?」

「誰かが片付け忘れたんだろ? ほっとけほっとけ」


 兵士の姿が見えなくなったところで、俺たちは深いため息をついた。


「いや、ほら……似たようなものだろ?」

「全然違うわよ! 箒とデッキブラシじゃ羊とヤマアラシぐらい差があるでしょうが!」

「もふもふとトゲトゲか……確かに。そうかもな」

「で、あんただけなんでゼリー系モンスターなの?」

「俺はほら……いざとなったらすばしっこく逃げまわりたいからな」

「いや……だったらネズミとか他にもあるでしょうに」

「仕方ないだろ……適当に姿を呼び出したんだから」

「(あたし、元の姿に戻れるのかしら……)」


 デッキブラシの姿をしたカリンと、ゼリー状の小型モンスターの姿をした俺。

 とにかく、城の中に潜入できたことは確かだ。

 それにしても、この城は妙に警戒が強い。一般市民の受け入れは制限されており、門や城の入り口、中庭に至るまで多くの兵士が警備に当たっていた。

 デッキブラシが二足歩行している姿はなんともいえないほど滑稽だったが、これなら違和感なく――かなりの違和感だが――移動できる。


 俺たちは城内の居住区エリアへと進んでいった。


 居住区エリアでは、王族と王族に仕える者たちが住んでいる。

 俺の目的は、ここに住んでいる人たちから情報を得ることだった。

 街の人たちが知らないことでも、ここには多くの噂が集まってくるはず。

 案の定、城で働くメイドや執事たちが暇を持て余して噂話をしている姿がちらほらと目に入った。


 街の噂、貴族たちの噂、そして、王族に関する噂。

 どこまでが真実かわからないが、火の無い所に煙は立たない。

 回廊を歩きながら会話をする二人のメイドの姿が目に入り、目立たないように後をつけながら聞き耳をたてた。


「――…ういえば……ってる? …女様………だって」

「――声…おきい…よ……。それ……なの?」


 どうやら王女様の噂らしい。幽霊とは関係なさそうだったが、有益な情報なら知っておきたい。

 慎重に、欲しい情報が得られないかギリギリまで近寄って噂を聞こうとしていた――。


「何をしているの?」


 後ろから声をかけられた――?

 振り向くと、そこには少女のメイドが興味深そうに俺を覗き込んでいた。


「なんでこんなところにテンテンがいるの? 迷子になったの?」


 冷や汗が垂れる……このまま元の姿に戻ってもよかったが、そんな隙さえ与えられないまま俺は少女メイドに摘まれる形で持ち上げられていた。


「ジー……」


 そんな間にも、デッキブラシはするりするりとその場を立ち去ろうとしていた。

 くそ、こうなったら……!


「そ、そんなに見つめられちゃ照れちゃうぜ!」

「え!? しゃ、しゃべった!」

「初めまして! 俺の名前はト…トコローテ! 寒天の精霊だよ!」

「トコローテって言うのね! 私はアイシャ」

「アイシャか! いい名前だな! あのー……実は困ったことがあって、そこにいるデッキブラシに魔法をかけて城の中をさまよっていたんだ。よかったら相談に乗ってくれないか?」


 デッキブラシは焦ったように動いていたが気にしない。

 旅は道連れ世は情けだ。


「そうなんだ……うん、わかった。じゃあとりあえず私の部屋に案内するね」


 アイシャに抱えられるようにして、俺とカリンはアイシャの部屋へと行くこととなった。

 まぁ、結果はどうあれ俺たちは色々と話が聞けそうだった。

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