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彼女が現実逃避しすぎて異世界の神になった  作者: 青我
――幕間――
29/54

――捜神記―― 第零章 第一節 原初の三人

新章スタートです。

 ――あなたにはこれから、多くの自我たちを導いてもらいたいの。

 ――あたしが居ないときには、あなたがあたしの代わりに自我たちを、この世界を守って欲しい。

 ――約束できる?



 ◇◇◇



 世界歴元年――。


 世界の中心とも言うべき場所、ユーカリアムは神の聖域である。

 広大な湖の中心に聳え立つ塔――現在は、その塔を巻き込むようにその根が包み込み、根は湖へと達し巨大な世界樹を育む。

 塔の先端は天を穿つように高く聳え立っている。

 その塔に押し上げられたかのように、世界樹はその幹を遥か上空へと至らしめた。

 陽の光を独り占めするかのように、その枝を広く伸ばし、世界樹の葉が生い茂る。

 根元には湖よりも二回りほど円周を小さくした島が浮かんでいる。

 いや、浮かんでいる、と言うよりは、塔によって押し上げられた世界樹の根元が陸地ごと浮き上がったような、そんな外観である。

 このような、明らかな不自然を前に言えることは、この塔は元々、この地には存在しなかった物であるということだ。

 神の代行者――彼らの定めるところの世界歴元年たる今、現在においてその塔は突如として出現したのであった。


 このような地は、世界を巡れば至る所に存在している。

 まるで、元々あった世界に新しい世界が上書きされたかのように。



 ◇◇◇



 この地には、世界樹を祀る樹霊人ドリアード樹人族トレント、他数多の魔物たちが住んでいる――いや、住んでいた、と言う方が正しいだろう。

 地に根を下ろし長きにわたり住んでいた土地を追われるということは、その地を統べる者が変わったのに他ならない。

 外敵の侵入――そう判断した神の聖域の守護者による排除が速やかに行われたのだった。



 新たにこの地を統べる者――神の代行者たる三人の手によって――。



「神が不在のこの地に無断で足を踏み入れるとは……」

「追い払ったの? リリス」

「えぇ、アダム……いいえ、正確には追い払おうとしたんじゃが、こやつらがあまりにも……」

「……弱すぎた……って感じかな?」


 目の前に広がる無数の死体――。

 虚しそうに眺める少女と少年。

 金髪のその少女は紫紺のドレスを身に纏い、肩には神獣の毛皮で作った肩掛けに飛び散った土埃を払いながら――黒髪のその少年は白のワイシャツに黒い短パン姿で、カーキ色のガウンを纏い、黒い帽子を取って頭を掻きながら――。

 そして――聖域の入り口から徐に現れた一人の――白髪のその少女は黒いローブに白の法衣――裾の方にかけて焦茶色に染まっている――を着ていて、顔の左反面に髑髏の仮面を被っている少女が口を開く。


「役目……イブたちは世界を守る……殺すのは……ダメ」

「わかっておる。最弱の魔法で威嚇したつもりだったのじゃが、新たな魔法を作るべきやもしれんな」


 ユーカリアムの塔、その最上階にして、世界樹の幹の麓となる島では、まるで巨人の手によって地面がそのまま抉り取られたかのような跡が残っていた。

 地に伏す無数の死体――であると思われる、様々な体の一部が散らばっている――に目を向けた少女の一人――イブと自称している――が、片手をかざし、ゆっくりと横に払うと、その場にあった無残な光景は一掃され、抉られた地面だけが残っていた。


「でも、さっきの頭痛ノイズはなんだったのかな?」

「不明……予想……神様たちの戻った世界、何かあった……かも」

「調べる必要があるのではないか?」

「そうだよね。僕たち、一応この世界の守護を任されているわけだし」

「そうじゃな。妾も同意じゃ」

「……敵対者は……」

「そりゃあ……できる限り生かす努力はしようかな」

「……イブ……神に背くものは……許さない」

「じゃあ世界を三つに分けて、それぞれで担当しようよ」

「ふむ……異議はないが……世界の地図がおかしなことになっておるぞ?」

「え? ……本当だ。知らない街があるね。元々あった街も変わっているような」

「確認……はじまりの街……三人で……」


 足元に魔法陣が浮かび上がる。

 その魔法陣が三人を包み、筒状にゆっくりと回転しながら輝いていく。

 魔法陣が三人の背丈を超えたあたりで青白く輝くと、光に包まれて姿が見えなくなった。


 島から追われ、住処を失った魔物たちは各地へと散っていったのだが、このことによって世界に大きな火種を生むことになろうとは、この時の三人には知る由もなかった。

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