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――異世界書紀―― 第二章 第四節 神の同行者

「NPCを同行者(パーティ)にできるのか?」

「アプリゲームとかで、パーティを組むときに人手が足りない時ってあるでしょ? そういうときに、近くにいる適当なNPCを誘って行けるようになってるの」

「それは結構便利だな。下手したら王様とか連れて行けるってことか」

「お、さすがはトウカ君。見抜いていらっしゃる」

「って、マジなのかよ……モンスター討伐を王様と肩を並べてやるのはなんだかシュールだな」

「まぁ普通のプレイヤーには無理だけど、神様特権ってやつね」

「管理代行者にも付与されるのか?」

「一応ね。あ、神様特権といえば、NPCを同行者に入れるとね――」



 ◇◆now loading…◇◆



「お願いします! 私に……力を……!」

「そう言われてもなぁ……」


 確かにこの子のステータス的に魔力は無くはないけど……力を与えて、復讐に目覚めさせるのはイメージ的に神の役目ではないしなぁ……。

 などと考えていると、しゅんとしているシロナの表情が目に入った。


「あ、あ、えーっと……その、なんというか……」

「つまり……やはり、私にその素質が無いということでしょうか……」

「うーん……素質が無いわけではないんだけど。なんでそんなに力を求めるんだ?」

「……私は神にお仕えし、神に代わって民を守る巫女です。都が襲われ、民に危険が及んでいる今、民の力となれなくて、どうして神殿の巫女を、この国の姫を名乗れるというのでしょう」

「……それはつまり、あくまで自分の使命を果たすためである、と言いたいわけか?」

「もちろんでございます」


 なるほど……なにやらもっと深い訳がありそうだ……掘り下げるだけ野暮ってもんだが……聞かないことには始まらないか。


「なぁ、シロナ。お前の使命感はわかった。だけど、シロナの心の中ではどう思っているんだ? 俺が聞きたいのは、お前の本当の気持ちの方なんだが」

「本当の気持ち……?」

「俺に命を預けるってことは、ことが済めばこの街を離れるということだし、最悪死ぬかもしれない。そうなっても良いってことか?」

「よくわかりません……さきほど私は、死ぬということを経験しました。正直に言うと、あんな思いは二度としたくはありません。暗くて、寒くて、心細くて……でも、覚悟はできています!」

「うーん……少し、考えさせてくれ」


力は貸してやりたいが……シロナが力を求める理由の在処をもっと確かめないことには、歪んだ道を歩ませてしまいかねない。

復讐の為だけに力を手に入れても、その後身を滅ぼすだけだしな。

かといって、俺もこのミニユカリの姿じゃ本来の力は出せないし……味方がいる分には心強いが……。

しかし、そう簡単に力を与えるなんてできるはずが――まてよ……確かユカリが言ってたな……神と同行者(パーティ)として組めば――!


「よし、決めた」


じっと息を飲んで緊張した面持ちで待っていたシロナに、俺は提案をすることにした。


「これから、お前をテストすることにする。シロナが力を正しい道に使えるか、力を持つに値する存在かどうか試させてもらおう。今からある儀式を行う。一時的とはいえ、シロナには神の名を与えることを了承してくれ。それと、これから与える力はシロナの潜在的な力に由来する……魔法が使えるようになるかは保証できない。覚悟はいいか?」

「……はい。私の覚悟をお受け取りください」


片膝をつき、胸に手を当てながら頭を垂れるシロナ――俺も頷き、その頭に手をかざした。


「では、神の名においてお前に力を与えよう。“管理代行権限による同行者編成(オーガナイズ)を発動――シロナ・ソーサレス・ロザリア改め、シロナ・ソーサレス・ユーカリアを同行者(パーティ)として認め、シロナ・ソーサレス・ユーカリアに新たな地位と使命を与える――”」


 ――管理者権限でNPCを同行者にするとね、管理者にしか使えない職業クラスが与えられて抜群に強くなるようにしてあるんだ。あ、NPCの名前に管理者名を入れるの忘れないでね。

 ――そうなのか! そしたらいざってときに管理者側も助かるし気の利いた仕様じゃないか。

 ――そうでしょ? このゲームを一般に公開したら、神様一同チート級のパーティを揃えて新参をボコボコにできるって寸法よ!

 ――それは……だめだろ……。


 ユカリとの会話を思い出しながら、シロナを正式に同行者(パーティ)に任命した。

 これまでのテストプレイでは試したことは無かったが、なかなかに神様らしい技に見えて自己満足度がぐんぐん伸びていった。

 なにせ、目の前でシロナは光に包まれて、これまでのボロボロで傷だらけだった体や服が再生され、今までのローブ姿から一気に衣装が変わっていったのだから。

 セミロングくらいの黒髪で、髪は頭の所で結んであり、衣装は和服のような白い着物で振袖があり、肩のところは露出している。

 腹部と腰の当たりはベルトを網目のように編んだものが巻かれ、白と藍色の模様の入った短めのスカートに、足元まで垂れ下がった腰巻の布、腰には二本の刀が差してあった。

 今までの巫女……というより祭司のような姿とは打って変わって、身軽そうな……剣士へと姿を変えていた。


「すごい……なんだか力が溢れてきます……!」

「見た目はどうだ?」

「すっごく可愛いです! こんな格好したことがないので、まるで夢のようです!」


 こうやって新しい服を着てはしゃいでいるのを見ると、現実世界にいる同じ年齢の女の子たちと変わらない。

 なんだか微笑ましい気分になった。


「ところで……どうみても剣士だな。巫女って言ってたから、魔法系になるかとは思ってたんだけど」

「まぁ……やっぱり……予想はできていたのですが……私、全く魔法使えないんですよ」

「え? 全く使えないの? 回復魔法も? 巫女なのに?」

「はい。 魔法の類は使えたことがありません」

「えっと……神殿に来た人たちはどうやって相手をしてたんだ?」

「苦しそうな人とか、怪我をした人とかは、頑張れー! 大丈夫ー! って励ましていました」


 巫女って一体……。


 こうして、シロナを一時的に仲間にした。

 そして、意外とアホの子というのがわかった。

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