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――創世記―― 第一章 第六節 神の集い(前編)

 休憩を挟むことにした。

 いや、実際ゲーム内でも休憩はできるが、さすがに空腹と生理現象までは止められない。

 俺とユカリはゲームからログアウトしたのだが……。


「「(なんだろう……現実に違和感がある……)」」


 それもそのはずだ。

 ゲーム内では、「歩こう」と思えば歩けるし、「戦おう」と思えば、思念伝達を通じて思うように体が動くのだ。

 ゲーム内での生活に慣れすぎてしまった俺とユカリは、そういった違和感を抱えつつ、重たい体を引きずって喫茶店へと移動した。


 しかし、飲み物という現実の飲料が俺たちを現実へ引き戻してくれた。


「はぁ……なんだろう、この、コーヒーを飲むという幸せは」

「わかる……だが、なんだかゲームのしすぎで体を動かすのがだるいな……さっきも起き上がる時に頭の中で起きろと念じて体が起き上がらないから不思議な感じだったし」

「あたしなんて、『喫茶店へ転移トリップ』とか念じてたし、このゲームダメ人間製造機かもね」


 などという会話をしながらも、結局俺たちの話はアナザーワールドのことで持ちきりだった。

 こんなにも自由度の高いゲームは他にはない。

 そして、ユカリが作ろうとしている世界の話――NPCに自我を与えようとしている――を聞いて、改めてこいつは奇才なのではと思ったところに、思わぬ客が飛び込んできた。


「ユーカーリーせーんーぱーーーい!!」


 喫茶店のドアをぶち破るような勢いで登場した彼女は……。


「ひどいっすよ! 先輩この2週間どこにいってたんすか!! マジで探したんすよ!」

「いや……別に探される筋合いもないんだけど」

「そんなこと言わないでくださいっすよ〜!! あ、アイスカフェラテ1つガムシロ多めでー」


 興梠 茜(こおろぎ あかね)

 その昔、高校生くらいの頃だったか、あることがきっかけでユカリがやさぐれていたのだが、その時に出会ったユカリの後輩……らしい。

 なんでも、ひと睨みで数多の不良たちを撃退した――本当は、当時病んでいたため病的に目つきが悪かっただけ――ユカリの姿を見て憧れたらしく、一方的に崇拝している。

 そのユカリを見たのがアカネが中学生くらいの時だったのだが、今ではこの地域一帯を閉める女番長だ。

 喫茶店の周りをアカネの舎弟たちが取り囲んでいて、まるでマフィアのボスみたいだ――というか、窓からガンつけてくるのやめてくれないかな、舎弟たち……。


「はぁ……なぁ、お前もいい歳してこんなことやってないで、とっとと高校卒業して進学でもしたらどうだ?」

「あぁ? テメェエラソーに俺に説教たれてんじゃねぇぞ、ぶっ潰されてぇか」


 ぶっ潰されるのは勘弁だ……。

 なにせ、コイツは空手で全国大会に出場するほどの猛者であり、海外遠征で猛威を振るった赤い嵐と呼ばれるほどの強者だ。

 まぁ、最もそれは――足を怪我するまでは、の話だが。


「アカネ……トウカの言う通りだぞ。ちゃんと勉強もしないと、いいおマンマ食いっぱぐれちゃうからね」

「はい! ユカリ先輩が言うなら、そうします! でも、まだまだユカリ先輩の境地に達してないんで、卒業は早いっす」

「……お前、今何歳だっけ」

「……19歳」

「……はぁ」

「なんっすか! その顔! 超ムカつく! いいじゃないっすか〜! 単位取らなきゃ卒業しなくていいルールなんっすから!」


 ……ようするに、高校生のうちに一睨みで大勢の不良を撃退できるようになるまでは卒業しないと言う人生縛りプレイをしているらしい。

 いや、それ以前に街の不良ほとんど束ねてるから!

 一睨みで蹴散らすって言うか、コイツらが人睨んでますから!


「そんで、この2週間二人ともどこで何してたんっすか?」


 アイスカフェラテを飲みながらキラキラした目をユカリに向けているのを見ると、これはただでは引いてくれないだろう……俺たちは観念することにした。


「ついでだから、てっしーにも声をかけておくか」



 ◇◇◇



「おぉーー!! なんっすか! このゲーム!!」


 アナザーワールドにログインしたアカネは、開口一番にそう叫んだ。


「これ、二人で作ったの!? すげぇ……流石だ」


 あまりの興奮に自分のキャラを忘れて素が出ているアカネだが、そこは気にしないであげよう。

 この子は舎弟たちの前では悪ぶっているが、根はとてもいい子だ。

 真面目で猪突猛進タイプ、と言うべきだろうか。

 そのためか、アカネの姿アバターは、一言で言えば獣人間であった。

 赤い髪の毛に赤い瞳。

 こめかみのあたりからは角が二本生えており、そして、狐のような耳がある。

 腕と足は竜のような硬い甲皮で覆われており、腰辺りからは尻尾まで生えていた。

 どうやら尻尾も思念伝達で動かせるらしい。

 初めはガイコツの見た目である俺を小馬鹿にしていたが、どうやら慣れたようだ。

 普通に話しかけてくるし、尻尾の使い方も実践して見せてくれた。


「(このままいい色に染まってくれれば普通に可愛い女子高生(?) なんだけどなぁ)」


「ところでトウカ、てっしーは?」

「大学の学生会の仕事だって」

「あの子、そんなに忙しいんだねー……」

「――それで、この場所に連れてきたのは?」


 予想はついていた。

 喫茶店で聞いた、この世界のNPCの在り方――。

 俺も違和感を持った、NPCとの会話の無機質さ、とも言うべきだろうか。

 それを改善させるべく組み直したプログラムとやらのお披露目がしたいのだろう。

 案の定ニヤニヤしながら、ユカリは一人の少女を連れてきた。

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