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第13話 アレクの町でハーレムデート!(後編)


 晴れた青空の下、俺はみんなを連れて自分の街を案内していた。

 スクラシスやドミナさん、邪竜姉妹の好感度が上昇したのは実感できたが、ルベルだけは不満そうだった。


 ルベルが暖かな陽光を見上げて、うっとうしそうに目を細める。

「結局これが、君のやり口と言うわけだな」

「はい。みんなを幸せにするためです」


「うまくやってると言っておこうか。ただし、私の居場所はここにはないようだな」

「ああ、ないですね」

 あっさりとした口調で俺はうなずいた。腕に抱く二人の頭をぽんぽんと撫でながら。



 すると、胸を押しつけて抱きつくスクラシスが眉をひそめて見上げてきた。

「ハーレムを作るのではなかったのかの?」


「この町では限界がありますから――ただ最後までは見て欲しいですね。俺の家はすぐそこです」

 港に面して大きな建物があった。二階建ての広い屋敷。白壁や赤い屋根が日差しを浴びて輝いている。


 邪竜姉妹が目を細めて笑う。

「あんたにしちゃ、きれいな家じゃない」

「みんなで暮らせないぐらいには小さすぎなくて、でもすれ違ってしまうほどには大きすぎなくて、すてきだと思います」


「ありがと、ケイ。お互いの温もりが伝わらないほど広すぎるのはどうかと思ってね」

 屋敷を見ただけで俺の考えをわかってくれたようで嬉しかった。


 けれども、ルベルが鼻で笑う。

「ふんっ。我が城に比べれば、どうということもない家だな」

「そりゃ、魔王城と比べたらなんでも小さくなるよ。まあいいや、行こう」



 みんなを連れて敷地に入った。

 外の門をくぐって庭を通る。ケイが庭の花壇を楽しそうに見ている。ドミナさんは、薬草が多いことに気がついたのか、口の端に怪しい笑みを浮かべていた。


 玄関を開けて中に入る。広いエントランスは吹き抜けになっていた。

 左右に通路が続き、正面には二階へ上がる幅広の階段がある。


 ケイに掴まれていない方の腕を広げて笑顔で説明した。

「入って左側はみんなで使用する娯楽室と休憩室。休憩室には本棚もあります。入って右側はみんなで使用する食堂とお風呂です。あと調理場。二階に各人用の個室があります」


「使用人はいないのかしら?」

「はい、ドミナさん。わりとみなさん、一人暮らしというか、個人で暮らすことが多かったように思うので。掃除と食事だけお手伝いさんに通ってもらうようにします」


「私は大勢が仕える暮らししかできない」

「わかってるよ、ルベル」

 俺はケイとスクラシスを抱えて歩きだした。階段を回り込む。


「およ? アレクよ、どこに行くのじゃ?」

「階段の裏側です」

 階段の裏は一見、小さな物置小屋になっていた。木の扉がついている。

 扉を開けると、下へと続く階段が現れた。



 俺に抱き着くスクラシスが目を丸くした。

「ほう? 地下室かの?」

「そうです。まあ、行きましょう」


 俺を先頭にして、ぞろぞろと階段を下りていく。

 降りた先には、床に魔法陣のかかれた小さな部屋があった。正面の壁には黒いもやがかかっている。部屋の隅には可愛い服が掛かったハンガーと棚があった。



 スクラシスが眉をひそめて俺から離れた。足を肩幅に開いて警戒態勢を取る。

「なんじゃ、これは。嫌な感じがするのじゃ」


「ここから魔界へ通じてるんですよ」

 俺が軽く言うと、ルベルが赤い目を見開いた。

「いつの間に!」


「魔王として君臨しなくてはいけないのだから、この町には住めない。でも、一日の仕事が終わったら、休みに来てくれていいんだ」

 俺はできるだけ優しい声で諭した。



 しかしルベルは赤い瞳に狡猾そうな光を浮かべてニヤリと笑う。

「くくくっ。地上へとつながるゲートを人間側がわざわざ造るとは、恐れを知らないようだな。ここを使って配下の軍勢が大挙として地上へ押し寄せるであろうっ」


「そのときは俺が真っ先に相手になるよ。だから俺の屋敷だし、一人ずつしか通れない狭さにしてあるんだ。それでもやる? 無駄に全滅すると思うけど?」


「ぐっ……一番厄介なのがいると言うのかっ」

 ルベルは悔しそうに赤い唇を噛んだ。


 俺は近くにいた彼女に手を伸ばすと、紅の髪をぽんぽんと優しく撫でた。

「だから世界を征服したかったら、まずはルベルが一人で乗り込んで俺を倒すことだね」


「ええい、頭を撫でるな! 気安く触るな!」

 ルベルは顔を真っ赤にして俺の手を払った。怒りなのか恥ずかしさなのかまではわからなかった。



 ――と。

 ドミナさんが顔を上げた。どこか遠くを見る。

「あら、そろそろろうそくが燃え尽きる時間だわ」


「むう。じゃあ、本日はお開きじゃの」

「え~。みんなで寝る寝室も見ましょうよ~。大きいベッドに、枕を六つも用意してありますから!」

 

「一番見たくない! もう帰らせてもらうっ」

 ルベルが肩で切りそろえた赤い髪を広げてきびすを返す。



 俺はその背に呼びかけた。

「ルベルだけは、こっちのゲート使って帰ってもいいんじゃないかな?」


「む、それもそうだ……だが、テストはしてあるのか? 他人の造ったゲートなど心配だ。特に貴様が作ったのであれば、余計にな」


「安心してください。ちなみにルベルの大きさにぴったり合わせてあるので、ほかの魔物や魔族は利用が難しいですね。腕や首がとれるかも」

「怖いわ! 安心できるかっ!」


「ルベルは絶対大丈夫ですから、どんどん使用してください。ただ、体ぴったりなんで服は脱げます」

「使用できるかっ!」


「いいじゃないですか、俺とルベルの仲なんだし、裸のつきあいをしましょうよ~」

「普通に帰らせてもらう!」

 ルベルが怒って大股で階段を上がっていった。



 邪竜姉妹やドミナさんが髪を揺らして後に続く。

 スクラシスも続いたが、一度だけ俺を振り返った。

「頑張るのじゃぞ……困ったことがあれば遠慮せずにわらわを頼るのじゃ」


「ありがとうございます。じゃあ次、頼みます」

「ぬ?」

「今のところまでは順調ですが、次はスクラシスの番になります」


「なるほど。そういうことか――ふふんっ、任せるのじゃ」

 頼もしい女神の言葉に俺が微笑むと、彼女もまた銀髪を揺らして微笑み返した。


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