やればやるほどあだになる2
菊子はクロエの方を見ない様にして布団をベッドに引くと、「では、失礼します」と言って早々に部屋を出た。
扉が閉まると、「ふぅ」と菊子は息を漏らす。
クロエちゃんの威圧感、凄すぎ何ですが。
あれじゃあ、クラスメイトの無視なんかに負けてないわ。
菊子がクロエの部屋の前から立ち去ろうとしたところ、菊子のエプロンのポケットの中のスマートフォンが震えた。
菊子がスマートフォンを取り出してみると電話だった。
相手は雨。
目黒さん?
何?
菊子は電話に出る。
「もしもし」と雨の声。
「もしもし。目黒さん。何で電話なんかして来るんです?」
緊急事態の到来か? と少々緊張する菊子。
「いや、コーヒー、入れて欲しくて」
「はぁ?」
それで電話か。
考えたな。
「分かりました。直ぐ行きます」
電話を切った菊子はキッチンへと急いだ。
菊子の姿が消えた廊下。
クロエの部屋の扉がそっと開く。
扉の隙間からクロエはギラついた目をして菊子の姿の消えた階段のある方をしばらく見ていた。
キッチンに菊子が到着したタイミングでスマートフォンにまた雨から電話が入る。
菊子は電話に出るなり「何ですか?」と雨に問い掛ける。
「あ、何か急いでる?」と雨。
「別に」と菊子。
急いでます。
早くあなたの所にコーヒーを持って行って早くあなたの所から退散したいんです。
早口の菊子の心の声。
「コーヒー何だけど、二つお願い」
雨が言う。
「二つ?」
「うん、二つ」
嫌な予感到来の菊子。
このパターンは……。
「あの、一つは目黒さんの分だとして、もう一つはどなたのでしょう?」
「菊子のさ」
やっぱり。
「目黒さん、私……」
「菊子は休憩取ってる?」
「えっ?」
「さっき廊下に出たんだけど、ぴかぴかだった。リビングダイニングも。他の所も。掃除、頑張ってくれてありがとう」
「いえ、仕事ですから」
「休憩は?」
「……取って無いです」
「コーヒー二つね。じゃあ」
電話が切れた。




