やればやるほどあだになる1
冷蔵庫にエナジードリンクはあったが、黒いマジックペンで日向と名前が書いてあった。
世の中、上手く行かない事ばかりだ。
菊子は冷蔵庫を開けたついでに夕食のメニューを考える。
冷蔵庫の中には昨日買いこんだ物がぎっしりと詰まっている。
卵にハム。
ベーコン。
トマトに牛乳。
冷凍のほうれんそう。
等々。
雨がぽいぽいと買い物かごに入れいった物だ。
どうもピンと来ないわ。
買い物、行っちゃおうかな。
あ、でも買い物に行くとなると食費が掛かるし、目黒さんに声を掛けなきゃいけないから。
うーん。
夕食の事は、また後で考えよう。
取り敢えず、掃除、終わらせますか。
菊子はキッチンを出て再び掃除を開始した。
階段の掃除を終えて次は二階。
二階にはクロエと日向がいるので出来るだけ物音を立てない様に掃除をした。
二階が済むと一階。
バスルームから始めて、まだ掃除の済んでいない場所を綺麗にしていく。
窓もしっかりと磨き、掃除が終わる頃にはかなりの時間が経っていた。
そして極めつけの庭掃除。
これに、また、随分と時間が掛かる。
疲れた。
菊子は肩を叩く。
あ、お日様の様子を見て洗濯物を取り込まなきゃ。
後、お布団!
ああっ……布団は皆んなの分も干すべきだったわ。
失敗だ。
至らぬところを反省しつつ、菊子は、まずは布団から、と二階へ上がる。
二階まで行くとシャワールームの対面にある扉を開く。
その扉の外はベランダだ。
菊子はベランダに出て布団を取り込んだ。
布団がまだ暖かい事に菊子は一安心する。
しけった布団何ぞ持って行こうものならクロエはさぞかしご立腹だろうと菊子には思われた。
これ、これからクロエちゃんの部屋まで持って行くのよね。
クロエちゃんとの接触は出来るだけ避けたいけど、こればかりは仕方ないか。
菊子は布団を抱えて真っすぐクロエの部屋を目指す。
扉の前で深呼吸をしてノックをする。
「はい?」とクロエの声。
「あの、クロエさん。家政婦です。お布団持って参りました」と菊子。
やや間があって、「ああ」とクロエ。
扉が開き、クロエが顔を出した。
「入って」と菊子に冷たく言うクロエ。
その氷点下の冷たさに、ぐさりと菊子の心に見えない包丁が突き刺さる。
「はい」
菊子は作り笑顔を浮かべたまま部屋の中に入る。




