半分死んでますが何か?5
それにびっくりする菊子。
泊るだけなのに、何故にスーツケース?
と本人には決して問えない。
「遅いわ」とクロエ。
「も、申し訳ありません」
クロエは、ふんっ、と鼻を鳴らして家の中へ入って行く。
玄関の鍵を閉めて、菊子はクロエに、「あの、二階のゲストルームの準備が出来てますから、お荷物、そちらへお運びします」と言う。
クロエは一瞬嫌そうな顔をしたが、スーツケースと睨めっこを始めて、「お願いするわ」と言った。
やれやれ、と思う菊子。
二人は靴を脱ぎ、廊下を歩いて二階へ向かう。
前をかって知ったるクロエが歩き、その後をスーツケースを持ち上げた菊子が続く。
スーツケースは白のアルミフレームの物。
サイズが大き目で、中に何が入っているのやら、浮かせて持つと重かった。
階段に差し掛かるとスーツケースの重さは地獄であった。
スーツケースが階段に当たらない様に注意しながら力を込めて運ぶ菊子。
これを二階まで……修行かな?
何ぞ思う菊子。
「何ぼんやりしてるの? 早くして」
苛立ったクロエの声に菊子は慌てて、「はい」と答えて、えっちらおっちらスーツケースを運ぶ。
やっとの事で階段を上り終えた頃には菊子の額に汗が滲んでいた。
一息ついていた菊子に「早く」とクロエ。
鬼軍曹か!
菊子は作り笑顔を浮かべて、「はい」と答えた。
こうしてスーツケースをゲストルームに運び終えた時の達成感は何とも言えなかった。
「お布団は今、干していますから後でお部屋にお運びします。では、私はこれで」
丁寧にクロエにお辞儀をして菊子が立ち去ろうとすると「待って」とクロエが菊子を呼び止めた。
びくりと体を震わせ「何でしょう?」とクロエに訊ねる菊子。
クロエは相変わらず不機嫌な顔で、「あなたに訊きたい事があるの」と言う。
そんな不機嫌な顔をして一体何を聞きたいと言うのか。
手短に頼むわ。
菊子はそう願う。
クロエは「雨にいの事だけど」と言って腕を組む。
「はい」
菊子は取り敢えず返事だけをする。
これから何が始まるのか想像しない様に菊子は勤める。
想像すると恐らく地獄しか見えない。
菊子は無心になれ、と己に命じるのだった。
「あなた、雨兄いのどんな所が好きなの?」
クロエの台詞に菊子は、「えっ?」と内臓から音を響かせる。
なに聞いてるの?
ちょっと!
ちょっとーっ!
ちょっと待ってーっ!




