クロエ、暴走11
透明な扉がサンルームに付いている。
そこから外へ出られる様になっていた。
サンルームは屋根から壁に透明な素材を使っている。
ここから見える景色は地面の白黒の玉石とサンルームの扉から続く大きな飛び石。
飛び石は表側の庭へと続いている様だ。
目の前にはコンクリートの壁が見える。
壁の向こうは隣家があり、隣家の木の葉が少しだけこちら側に侵食して来ていて、サンルームに僅かな影を作っている。
日当たりはあまり良くは無さそうだったが、まあ、洗濯ものくらいは乾くだろう、と言った感じだ。
扉を開けたらそのまま外だろうと思っていた菊子にはサンルームの存在はびっくりだった。
これなら雨の日も洗濯物が干せるわね。
洗濯物を落とさない様にかごをサンルームに運び、扉の真横に置いてあった大き目のサンダルを履くと早速洗濯物を干し始める菊子。
自分の下着と雨の下着は離して干した。
「ふぅ、終わった」
菊子は汗も出ていないのに額を手で拭った。
干したてで綺麗に並んだ洋服やタオルを見ていると清々しい。
しかし、そこに男女の下着が平然とある事が何とも言えない菊子だった。
取り敢えず、離して干したし?
別にやましい事は何にも無いし!
うん、大丈夫!
そう自分に言い聞かせては頷く。
さて、戻ろう、と思った菊子だが、サンルームの扉が気になった。
扉の前には大き目のサンダルが揃えて置いてある。
菊子が今、履いているサンダルの色違い。
扉の前にあるサンダルは少し汚れていて、いかにも外へ出る用と言った感じだ。
菊子は少し迷ってからサンルームの扉の前まで行くと、サンダルを履き替えて扉から外へ出た。
飛び石を踏んで進んで行く菊子。
家と壁に挟まれた道。
二台の室外機が菊子の横をかすめていった。
道を抜けると表の庭に出た。
庭は広い。
桜の木が一本、堂々とある。
家の中の窓から見るより大きく見える。
桜は花びらを散らしコンクリートの庭をピンク色に染めていた。
庭の端は全て花壇が出来ている。
花壇は木や花、雑草で茂っていた。
一体誰が世話をしているものかと菊子は想像する。
雨か、日向か。
それとも業者でも入るのだろうか。
それにしては雑草が存在を主張している。
菊子のすぐ前にコンクリートで出来たデッキがあった。
デッキに柵は無く、白いコンクリートが眩しいばかりだ。
デッキの端に雨がいた。
庭を見ている。
誰かがいるなんて想像していなかった菊子は幽霊でも見ているような気分で目を擦った。
紛れもなく雨だった。
「目黒さん」
黙って立ち去ろうかとも思ったが菊子は声を掛けた。
雨は驚いた顔で菊子を見て、「そんな所からどうした」と言った。




