クロエ、暴走9
菊子が訊ねると雨は膝の上に置いたスマートフォンを手に持ち操作して、「これだよ」と言って菊子にスマートフォンを手渡す。
菊子はスマートフォンを受け取り画面を見た。
Prism。
タイトルにそう書かれたページはとてもシンプルだったが、商品の枠には可愛らしいアクセサリーや小物が並んでいた。
冠を被った青い小鳥のブローチに、小さなフォークのチャームの付いたネックレス。
薔薇の模様の生地にファスナー部分に金の蝶のチャームが付いたペンケース。
トランプの形の小さなピルケース。
「凄い可愛い」
菊子は目を大きく開いてスマートフォンの画面に見入った。
「全部、日向の手作りだよ」と雨が言う。
「えっ」
手作りだなんて信じられない。
「日向さん、凄い」
すっかり感心する菊子。
「日向は昔から手先が器用だったから。でも、俺もまさか日向がこんな事を始めるだなんて思いもしなかったけど。ずっと一緒にいても相手の事なんて何も分からないものだな」
しみじみ雨が言う。
「そういうものかも知れませんね」
菊子はスマートフォンを雨に返しながら言った。
「俺も自分の部屋に行くから、何かあったら声掛けて」と雨に言われて、「はい」と菊子は答える。
「じゃあ」
雨は菊子に手を振って自室へ向かった。
静まり返った廊下。
菊子はエプロンのポケットからそっとスマートフォンを取り出す。
スマートフォンをいじって、さっき雨から見せて貰った日向の作品が載っているページを探す。
ページは直ぐに分った。
自分のサイトだけでなくフリマアプリなどにも作品を出している事が分かる。
菊子はprismのページを改めて見てみる。
商品を眺める菊子からはため息が漏れた。
本当に可愛い。
女の子の世界って感じ。
うーん、若い子が使ってそうなアイテムが多いな。
このハートのチャームのブレスレットとか私が付けたらやばいかも。
いや……ぎりぎり行けるか?
自分の腕を見ながらブレスレットをはめている姿を脳内でシュミレーションする菊子。
菊子は微妙な表情をしてシュミレーションを終える。
クロエちゃんが作品のアドバイスをしてるって事だから発想が若いのかしら。
菊子は、しばらくの間prismのアイテムを見ていたが、はっと、仕事がまだまだ残っている事を思い出して、急いでスマートフォンをしまい、フローリングワイパーを廊下に走らせた。
廊下の掃除を終えて、二階のゲストルームの掃除とベッドメイクを終了させた菊子。
ゲストルームの作りや家具は大体菊子の部屋と同じだがほとんどホテルの一室と言う風であった。




