クロエ、暴走8
上から何か聞こえてこないかしら?
と、菊子は耳を澄ましてみる。
菊子がそうしているうちに応接間から雨が出て来た。
「あ、目黒さん」
菊子が雨に声を掛ける。
雨は菊子の姿を認めると菊子の側までやって来た。
「菊子、掃除? ご苦労様」
菊子が握りしめるフローリングワイパーに雨は視線を止めて言った。
「ありがとうございます。でも、仕事ですから」
菊子がそう言うと雨は、「ははっ、そうだな」とにっこりする。
菊子の眉が微妙に上がる。
雨の為に面倒な状況に置かれている菊子にはその笑顔が複雑だった。
「菊子、廊下の掃除が終わったらで良いんだけど、二階のゲストルームの掃除とベッドメイク、お願いできるか? 今日、クロエが泊まる事になって」
クロエが泊まる。
そう言えば、そんな事を日向が言っていた事を菊子は思い出す。
「はい。あの、さっきに二階にクロエさんと日向さんが一緒に行くのを見て……二人って仲が良いんですね」
さり気に二人の事を雨に訊ねる菊子。
何だかドラマに出て来る家政婦の様に務める家の事を知りたがっている自分が可笑しかった菊子だが、菊子は好奇心が湧くのを止められないのだった。
ゲストルームの掃除をこれから菊子がするとなるとクロエがいるのは、まず日向の部屋だろう。
図書室の可能性もあるが、何となく菊子には日向の部屋の線が濃厚に感じる。
日向の部屋は菊子は門前払いだ。
そう考えると二人が特別な関係に思えて来る菊子。
「ああ。日向はクロエの事を妹みたいに可愛がっているから。それに、クロエは日向の仕事のパートナーだから」
「え、仕事のパートナーってどういう事ですか?」
そう言えば日向が何をやっているのか菊子には分からなかった。
雨を手伝いながら暮らしている事は分る。
しかし、それ以外の事は菊子には知れなかった。
仕事を持っているのか、それとも雨の財産で暮らしているのか謎な所であった。
女子高生とする仕事とは一体どんなものだろう、と菊子はもやもやと考えた。
「日向は作家なんだ。アクセサリーとか小物何かを作ってネットで売ってる」
「へぇー、日向さんが?」
日向にそんな顔があったなんて菊子には意外だった。
「中々人気があるみたいで、まあまあ稼いでるよ。クロエは日向の作る作品のアドバイザーなんだ。日向の作品の購入者は大体が女性なんだけど、日向は女性の事はさっぱりだからクロエがアドバイスして、それで作品を完成させると言う訳」
「なるほど」
納得の菊子。
確かに日向さんには女性の為のアクセサリーのアイディアは湧かばなさそう。
日向さん、漢一色って感じだから。
「今頃、日向の部屋で次の作品の相談でもしているんじゃないかな。日向は自分の部屋をアトリエにしているんだ」
「そうなんですか。アクセサリー作りのお仕事って、何だかとっても素敵。日向さん、どんな作品を作ってらっしゃるんですか?」




