クロエ、暴走7
「ああっ? 何だって?」
二人は睨み合う。
火花が二人の間に散る。
最早、一触即発か?
「ひーちゃん、どうしたの?」
菊子と日向は我に返る。
クロエがいつの間にか日向の隣にいて心配そうに日向を見上げている。
「家政婦さんと喧嘩?」
そう訊くクロエに日向は豹変した様に優しい声で「何でも無い。あにきが待ってるから部屋に行きな。俺は洗濯物を片付けて来るから」と言う。
「えーっ、早く戻って来てね」
「ああ、直ぐ戻るから」
そう言って日向はクロエの背中を押す。
クロエが行ってしまうと日向は菊子に「兎に角頼んだから」と言い残し、去って行った。
残された菊子は苛立ち紛れに床を強く踏んだ。
クロエちゃんが私に嫉妬?
あの日向さんの態度は何なの?
目黒さんはどういうつもりでいるの?
何から何までちんぷんかんぷんで菊子の脳の疲労はピーク。
今日一日はだまだこれから。
クロエ達に振り回される、この一日の予感に菊子はがくりと肩を落とすのだった。
日向が洗濯機を空けて、念願叶って洗濯を終えた菊子は洗濯機が回っている間にと家の中の掃除に専念していた。
キッチンの掃除は何となく終えたが、他の部屋の掃除はどこにどう手を付けていいやらで、今は取り敢えず一階の廊下をフローリングワイパーで拭き掃除をしているところだ。
この廊下、ボーリングが出来そう。
余計な物がまるで置かれていない、広く長い廊下を端まで見て菊子は思う。
廊下にいると応接間からの話し声がたまに漏れて聞こえてくる。
それは主にクロエの笑い声で、楽し気な感じからご機嫌は治ったと伺える。
随分と話し込んでいるわね。
二時間以上は話してるわ。
あ、お茶とか持って行った方が良いのかしら?
そう菊子が考えついた瞬間に応接間の扉が、からり、と音を立て開いた。
中から日向とクロエが出て来る。
二人はちらりと菊子を見ると、菊子には声も掛けずに、何やら二人で話をしながら階段を上って行ってしまった。
何だかな、と思う菊子。
二階には菊子が使っている部屋と日向の部屋、そしてゲストルームと図書室と呼ばれる部屋がある。
菊子の部屋は関係無いとして、一体二人はどの部屋へ行ったのか。
ちょっとした好奇心が湧く菊子。
あの二人って仲が良いのかしら。
日向さんはクロエちゃんの事を可愛がってる様だけど。
そう言えば、日向さんはクロエちゃんの恋を応援してるのかな。
日向さん、クロエちゃんにずいぶん気を使っている様子だった……。
菊子は二人の気配の消えた階段を、うーむ、と声を漏らしながら見る。




