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三極の悪友1

「全く! 在り得ませんネ! 何もあんなに怒ることはないと思いますヨ!」



 見るからにご機嫌斜めなゼクト君。扉を開けて、閉めた瞬間にいきなり文句たらたらだ。先公に聞こえるっての。



「思いますヨ、じゃない! 何てことをしてくれたんだ君は! 何ハングマンで登場してガラスをブチ破りやがって。待っていろって言っただろ!」



 ああ、怒鳴っているけど……これ以上怒る気力も、正直は皆無。

 そう、説教されたんだ。四時間目を中断して、本当に僕個人のためだけに中断してゼクトごと生徒指導室に押し込められて、こいつは誰だ。非常識だ。弁償。僕の何なんだと色々なことを聞かれながら適当に答えながら、今先程解放されたばかりだ。

 

 生徒指導室に押し込められた原因を作り出した張本人は、隣で頬を膨らませている。の凄く反論していたしな。そのせいで僕が見るからに悪者になっていって、もう滅茶苦茶。

 頭を抱えるなんてレベルじゃないほどに荒れた話し合いだった。



「ゴトゥディン。その命令は聞けません。サカナは騎士なのです。主がいつ危機に瀕するかわからない以上、常に御傍に這い寄らせてもらうのが義務なのですヨ」

「這い寄んなよ。普通に近づいて来いよ」



 もう何も言うまい。彼女の行動は全部、彼女の思い込んでいる騎士像を理由に動いているんだ。何を言い聞かせても意味がない。こりゃもう本能で動く虫ですわ。


 まあ言い聞かせる気が失せていようと聞きたいことは朝の時と負けず劣らず山積みだ。



「君はどうやってここまでたどり着いたんだ? 学校の場所を君に教えた覚えはないんだが」

「そりゃもう。ゴトゥディンの脱ぎ散らかした寝間着を顔に押し当て臭いを体に覚えさせて、その臭いを辿ってきました」



 こいつ犬かよ。重度のクンカーじゃないか。人間が臭いを覚えて道をたどって目的地に着くなんて不可能だろう。ますますこいつの素性に謎の靄が立ち込めてくじゃないか。



「臭いを辿るって意外とできるものですネ」

「普通出来ないよ」

「サカナ自身驚きましたヨぅ。まあこれも騎士であるからでしょうナ」



 騎士のキの字も掠らない、全く関係ないじゃないか。この子の中では騎士は万能な何かと勘違いしているんじゃないか。


 にしても臭いを辿った結果が宙吊りでダイナミック不法侵入か。笑えないよ。



「さぁ! 今から自由時間です! サカナはゴトゥディンを命を賭して護りましょう」

「学校で護られるなんてことないからね。危険なんて全くないからね。それより、窓ガラス割って侵入して弁当を持ってきたーと言ったくせに手ぶらじゃないか」



 女の子の手作り弁当をもらえると一瞬でも思ったのに。ちょっと残念だ。でも見るからに料理とかできなさそうだしむしろ持ってきてもらわない方が吉なのかもしれないけど。



「ありますヨ。お弁当を作るのは初めての試みだったのでとりあえず形だけですガ、お弁当ならここに」



 そう言って、自身の豊満な胸の谷間に手を突っ込んで風呂敷に包まれた奥にしまいこんで使うことが無いだろうと思っていた三段重ねの重箱を突きつけてきた。


 何とも面白い光景だ。言葉にならない。



「……もういい。考えたくない。次だ次」

「今からどこに向かうんですカ?」



 ゼクトは駆け足で僕の行く手を阻むように前にでた。



「いきなり前に立つんじゃない」

「サカナたちは今どこに向かっているのでしょうカ?」

「どこって、食堂だ。朝言った、相談する相手の所にだ」



 もう四時間目も終わって昼休みに入っている。あいつは絶対に昼休みは食堂にいるからな。今度こそ話を付けてやる。



「朝……ああ、そういえば言ってましたネ。どんな人なんですカ?」

「君を召喚することになった間接的な原因の奴なんだが、僕から言わせてもらえれば『人間的には信用できるか微妙だけどけど言葉は絶対に信用できる』奴だ」



 他の生徒、教師からの信用は絶大で、カミ子と同じく学生たちの羨望の的。しかし、どんな三立を使うのかどころか魔錬召のどの分野を得意としているかもわからない。授業は基本的にどの学年、クラスにも自由奔放に出ていてこの学園における最高の魔法(三立)使いだ。

 

 他にもこの学園の知られざる幽霊理事長と唯一連絡を取っている人物だとか、全学年のテストの採点に関わっているとか、気に入られたものは幸せになるとかよくわかんない神格化された人間だが、僕から言ってしまえばただの目立ちたがりの大馬鹿だ。


 その裏付けとして今いる食堂。昼休みに入った所なので人もまだ疎らだが、その片隅。勝手に寄ってくる取り巻きに囲まれながら、自分で持ち込んだでっかいパラソルに円状のテーブル。室内なのにカフェテラスチックになっている。

 金色のマイカップで成金根性全開のくせに優雅に茶を嗜んでいる。

 纏っている服装は将校衣風に改造された、何に対して上下関係を示しているのかわからない制服。ブロンドのロングヘアは風もないのに何故か靡いている謎の奇天烈感を醸し出している。


 彼女がこの僕、主人公の天敵であり最高にして最悪の悪友、口鬼静(くちおにしず)だ。その人を従える様から静吉と呼ばれている。まあ僕からのみだけど。


 認めたくないがこんなのでも学園、および日本最高の魔法(三立)使いでもある。

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