三極の悪友2
「美少女戦士に、ゼクト君じゃない。いらっしゃーい。こっちおいでよ。じゃあみんな。ウチはこいつに用があるから一回お開きってことで。解散」
さっきまで優雅に佇んでいた雰囲気はどこへやら。成金マグカップに入っていたお茶をぐびーっと飲み干し……また注いでいる。僕と話をするために一気飲みしたんじゃないのか?
僕が現れたことにより取り巻き達に一方的に解散を勧告するが取り巻きたちも中々渋る。
毎日毎日静吉に付きまとって飽きない奴らだ。まあ今から僕が独占するけどな。
「退くんだ貴様ら! 貴様らの神である静吉様が解散と言っているんだ! 文句言う暇あったら僕のためにアーチを作るんだな! 人間ブリッジだぁー!」
今からこいつに用があるんだと僕は蹴散らすように取り巻きを排除しにかかる。
しかし簡単に立ち退いてくれない取り巻きたち。しかも静吉から離れたくないから渋っているのではない。
『げぇ! 美少女戦士だ!』『美少女戦士よ! 握手してもらった方がいいかも』『そんなことしたら触ることになるだろ! それはヤバい!』
僕の人気者っぷりが如実に表れてしまったな。端々によくわからない、人を人外のような物言いを吐いて取り巻き達は退散していった。
決して嫌われているのではない。むしろこれが僕の扱いなのだ。人気者だからこそこんな扱いを受けるのだ。決して泣いてなどいないぞ僕は。
「毎度毎度思うけど、僕は珍獣か何かか」
「ハハッ。君は本当にバカだな」
刹那。背中を押すような突風が隣を駆け抜ける。テーブルを踏み砕き、カップの皿を浮かせ、パラソルを靡かせ、ゼクトの人差し指は静吉の右目眼前で制止する。
食堂を巻き込んでの静寂。突然飛び出して攻撃行動をとるゼクト。僕はほんの数秒だけどその光景に呆気に取られて口あんぐり。だけどすぐ我に返って拳骨で静寂を打破した。
「何をしているんだ君は! 何で初対面の人に無礼どころか打ち首獄門クラスの愚行を行っているんだ!? 君は自害癖だけじゃなくて処刑されたい願望でもあるのか!? テーブルから足下ろせやこのタコ!」
「だって、だってゴトゥディンがバカにされて」
「バカにされてもいいの! だいたいゴトゥディンって何だよ! 僕は主人公、」
「ゴトゥディンは御主人って意味よ。それとちょっとした警戒心」
は? と僕は間抜けに声を漏らす。
「何、ちょっとした警戒心でしょ。ウチは別に怒ってないし。許すよゼクト君」
「警戒心だぁ? そうなのか?」
静吉は何もなかった、まるで風に靡く木の葉ほども慌てる様子もなく優雅にお茶を飲んでいる。
そして踏み砕かれた机。落ちて割れたカップの皿。倒れたパラソル。ゼクトによって破壊されたもの全部が巻き戻されたテープのように元の状態になっていた。
ゼクトもこの光景に少々戸惑いを見せている。
まあ僕は驚きもしない。だってこれが普通なんだもん。元に戻ることが普通なんだ。
「はい。何であなたは、サカナの名前を知っていたんですカ? きっとあなたはゴトゥディンの命を狙うエージェント。だからゴトゥディンの騎士であるサカナの名を知っていたのです! なぜあなたはブギュゥ」
僕はゼクトの頬を突いた。その疑問は、至極当然だ。ゼクトは自分のことをサカナと呼んでいる。まして、静吉はゼクトが言葉を発する前からゼクトと呼んだ。何故知っているんだと疑問心を煽られるのも理解できるが静吉に至ってはその論は通じない。いらぬ論なのだ。
「こいつはそれが普通なんだ。気にするだけ無駄だぞ。個人情報覗き見女だからな」
「ヒドイ言いようですナ。あっと、一つだけいいですカ? 今ゴトゥディンは美少女戦士と呼ばれましたが、なぜゴトゥディンは何で美少女戦士って呼ばれてるんですカ? サカナ、気になります」
「それについては君が知る必要は」
「きーちゃんとウチの出会いは一年の時。なぜか浮いてたのよねきーちゃんは。だからまずウチはきーちゃんに居場所を与えるために学園祭時、常に巫女服を着せ悪乗りさせた。評判が良かったから違うクラスに出張貸出しを行い学年全体にその存在を知らしめるためにバックアップ&ダイレクトマーケティング。次にこれこそたまたま何だけど暴力振るう不良がいてね。イラついてたきーちゃんは不良たちを巫女服のまま懲らしめて知名度が爆発的にアップ。これぞ戦う美少女の真骨頂。その年の学園祭に置ける超ド級の人気者となったの。またしてもウチはその情報を全面的にバックアップし宣伝、きーちゃんは学園祭で『もっとも輝いたで賞』を受賞することになり美少女戦士の字名を襲名。後夜祭でヤケクソ状態だけど、壇上で満面の笑みで歌うきーちゃんは輝いてたなぁ。あ、これがその写真ね。かわいいでしょ」
この女余計な情報をペラペラしゃべりおって。




