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三極の乱入3

「三つの立とはそれぞれ『確立』と『成立』と『独立』の三つを指します。確立は全ての基礎であり原点。それを応用した成立は組み立てや調整、配分を自分の中で決める知識。さらに発展させた独立は三立を能力として自分とは違うものにする力。さらに三つの立を含めた三つの基盤。一つは総称にもなっている三立。二つ目は『三部門』です。魔法の偽物と言っても一概に一括りではない。学校の科目のように大きく『魔』『錬金』『召喚』の三つに分けられています。これらは三つの立ととても密接に関わっていて確は魔に、成は錬金に、独は召喚となっています。なぜそれぞれに密接に関わっているか。確立は成立、独立に発展させていく上での基礎であり、三立を行使する上ですべての土台となり、魔も錬金と召喚と違いもっとも魔法に近い科目としての言わば原点的存在です。どんな優れた力、才能が有ろうと基礎を疎かにする者は年を追うごとに凡人に成り下がるのは当然。錬金は三つの中で一番計算が難しいとされていて三部門の中でも理系的存在に近い。高度な計算式や図式を成立させることでより高度な錬金として発展します。独立と召喚は言わずもがな、それぞれ自分とは違うものと言う点で共通しています。召喚した対象を個としての見ることと同時に自分の力の一部であるという認識が大切だとされています。最後に、」

「分かった。座学の勉強をしているのは分かった」



 少し戸惑った様子で先生はもういいと言ってくる。が、止まる気などない。



「いいえわかっていません。先生に出された問題をまだ全て回答していないのですから。それとも、先生は生徒の問題に対しての意欲ある回答をしかしせからしもうよろしと教師の権限を用いて強制的に中断するのですか? 確かに僕は先生の言う通り、山彦オウム返し合わせ鏡と言葉を借りて言いますと、居眠り快眠いびきにグースカ自己腕枕で目を覚ましたらおはようございますと爆睡と言わずとも意欲的ではない態度をとっていました。しかし先生はそんな不真面目な生徒に対して授業を中断しながらも僕個人に対して問題を出してくれた、とても思慮深い教師の鑑です。僕は口から感動が物質として這い出てきそうな中、それを飲み込み僕のための問題を誠心誠意一生懸命、矮小で不真面目な脳内を探り必至で答えようとしました。しかしなぜ先生は分かったという言葉が出たのでしょう? もしかして僕の回答に何か間違いでもあったのでしょうか。しかし僕もまだ学生であり教師の鑑であるあなたから教えを乞う身です。多少の間違いは大目に見てもらいたい。むしろ! 失敗は成功の母。失敗から学ぶことこそ成功への道筋。そして間違いがある生徒がいるからこそ、教師がいるのではないのでしょうか? この意見を加味してもらった上で僕に回答を続行する権利をいただけないでしょうか?」



 止まらない演説にも似たセリフの羅列に教室そのものに沈黙が訪れる。 

 この空間ごとと気圧される感触。たまらないねぇ。僕はにぃいっと口角を吊り上げる。



「その沈黙は肯定の意思として受け取りましょう。引き続きご静聴お願いします。『三立』『三部門』と来て最後に残ったのは『三発現』です。この三発現。他二つの物と違い三立の基盤の一つと数えられながら、完全なる三立の発展技術と言う二律背反の性質をもちます。まず一つ目、」



 言葉は轟音と共に遮られる。言葉を遮ったのは『轟音』だ。教師の権限を用いた発言とは違う。強制的なシャットダウン。どれほどの轟音かどうかは。目の前の真っ二つに砕かれた机からよくわかると思う。

 僕の机がものの見事に真っ二つ。こんなことができる奴はと言うと手をピストルのように模して、それを下に向けている、窓側二列目前から三列目に座るカミ子だ。


 これが三発現の一つにして学校で唯一、カミ子だけが行使できる三立を使うための計算式や思考を行動の一つに置き換えることで発動させることのできる『行現(こうげん)』だ。

 カミ子。授業中までぶっ放すのか。



「主人公。私はアンタが上官殿のことを本当に尊敬していることは日ごろから口酸っぱく聞かされてるから分かってる。それに私はアンタの長々な話はこう聞こえる。『僕はこんなに勉強をしています。三立の才能は無く、行使もできませんけど、こんなにも努力しています。一字一句の取りこぼしもなくあなたの教えを覚えています。ですから、」

「分かった。分かったカミ子。僕が悪かったからそれ以上はやめてくれないか」



 何こっぱずかしいことを言っているんだ。僕はただ寝ていて習っていない範囲を答えろと言われてちょっとムッと来たから丸々全部答えてやるって気持ちでしゃべっただけだ。

 なのに何でそんな解釈に至るかわからないしありもしないボクの内心を代弁した気にならないでほしい。恥ずかしいわ!



「分かった、分かった、分かった。アンタは分かったって言うけど、その分かったと上官殿の分かったは同じ。上官殿もちゃんとアンタのことは理解してる。だから授業中くらい大人しくしていなさい」



 勉強机をぶっ壊した君にだけは言われたくないとは言えない。非常識とは言え、大人しく授業を聞いていろと言われてそれに反論するなんてのはただの不良生徒だ・

 カミ子は貪欲なまでに真面目だ。教師、彼女の言う上官との話題になると、狂信的な従順さを見せる。教師が有能であれ無能であれ、厳しくあれ優しくあれ。

 

 まあ、ちょっとしたいやがらせついでの回答だったからここら辺が潮時だ。これ以上は本気でカミ子が介入してきそうだし。



「すいませんでした。座っていいですか?」

「あ、ああ……だが、机が真っ二つになってるんだが」

「授業中なんで昼休みにでも片付けときます。それまでは後ろに押し込めてと。ノートは窓を机代わりにするので支障はないので大丈夫です」

「……じゃあ、授業を続けるぞ」



 どこか不安を声に混じらせているように、黒板の板書を再開する。


 ちょっと不便はあるけど、可もなく不可もなくだ。周りのクラスメイトの視線も熱いけど、気にも留めてもしょうがない。どうせあいつ変態だし、みたいなこと思っているんだろうから気にしない。

 

 しかしやっぱり窓を机代わりにするのは書きづらい……ん?


 ふと、窓からの日光が遮られる。しかしその影の形はどうにも不自然でまるで人が逆さまになった形だ。



「なんか……嫌な予感」



 嫌な予感は当然のごとく。うわぁ白い塊がいる。

 どうやっているかはわからないけど、上下逆、逆さま状態のゼクトが窓の外でぶら下がっていた。後頭部の高いところで二つに結わいで、さらに首辺りで縛られた髪が重力に逆らわずに砂時計のような形になってる。面白いシルエット。まんまハングマンだ。

 呆気にとられて、口あんぐり意気消沈。進んでいたペンも息をしていない。


 とりあえず、帰れ! 絶対ロクなことにならない。僕はゼクトに必至になって『帰れ』とボディランゲージを示す。



『……………ッ!』



 何を理解したのか親指を立ててのグッドサイン。よかった。分かってくれたんだな。ん? ちょっと待て。理解したんじゃないのか? 

 何で腕を振りかぶっているんだ? 何で……窓ガラスぶち破っているんだ?

 音が教室の内部を侵食する。音と言うシグナルがクラスメイト達の意識を一つにして、まるで一匹の生物のように窓に眼を向ける。


 それは颯爽と侵入してきた。布を靡かせ、光を纏うような容姿の彼女は、こちらを向いて、こう言った。



「ゴトゥディン。お弁当忘れてますヨ! でも入っていいよって手招きしてくれて助かりましたヨ!」



 元気いっぱい。笑顔で言い放ってくれおった。

 ああ、これじゃあ全部の責任をボクに押し付けられたも同然じゃないか。

 でもまだそれはいい。窓ガラスぶち破って、アクションスター顔負けのアクロバティックな侵入もまだ許そう。そんなことより大変な問題がある。



「お弁当、持ってないじゃないか、君ってやつは……!」


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