↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
56/90

第五十五話 融合体

灰街の中心部は崩れていた。


 ビル。


 道路。


 信号。


 全部が歪んでいる。


 爆発跡じゃない。


 砲撃でもない。


 何かに引き寄せられたみたいに潰れていた。


 177はその真ん中を歩いていた。


 迷いがない。


 楽しそうだった。


 カイとミックは少し後ろを進む。


 ドローンは残り二機。


 上空を旋回している。


「お前止めろよ」


 ミックが言う。


「無理だ」


 カイは即答した。


 177が止まる理由がない。


 本人も分かっているらしい。


「だよな」


 諦めたように笑う。


 その時だった。


 遠くで何かが動いた。


 巨大だった。


 黒い。


 ビルの影からゆっくり姿を現す。


 六メートル級。


 獣に見える。


 人にも見える。


 輪郭が安定しない。


 身体のあちこちが不自然だった。


 脚の数が合わない。


 骨格も合わない。


 何かを無理やり繋げたみたいだった。


「いた」


 177が笑う。


 怪物が振り向く。


 目が合った。


 次の瞬間。


 177が消えた。


 踏み込み。


 地面が割れる。


 一瞬で怪物の懐へ入る。


 巨大化した腕。


 ハンマー。


 全力。


 轟音。


 怪物の頭部へ直撃した。


 周囲の建物が揺れる。


 瓦礫が吹き飛ぶ。


「おお」


 ミックが思わず声を漏らした。


 怪物が吹き飛ぶ。


 三十メートル以上。


 地面を転がる。


 壁へ激突。


 崩壊。


 土煙。


 177は笑っていた。


「柔らかいな」


 土煙の向こう。


 何かが動く。


 怪物だった。


 立ち上がる。


 ゆっくり。


 首が捻れる。


 骨が鳴る。


 肉が動く。


 潰れた頭部が戻っていく。


 再生。


 いや。


 違う。


 繋ぎ直している。


 別の部位の肉が頭へ移動する。


 その分だけ、肩が痩せた。


 カイの目が細くなった。


「……再生じゃない」


 怪物を見る。


 頭。


 首。


 肩。


 違和感。


 肉の流れが合わない。


 骨格も違う。


 その時だった。


 構造接続。


 頭の中で線が繋がる。


 首。


 胸。


 腹。


 右脚。


 脈動。


 四つ。


 失敗した合成獣。


 研究員。


 研究員。


 子供。


 止まる。


「核か」


 思わず声が出た。


 ミックが振り向く。


「何だ?」


「一つじゃない」


 怪物を見る。


 脈動が四つ。


 心臓じゃない。


 別の何か。


「融合体だ」


 怪物が動く。


 地面が揺れる。


 次の瞬間。


 周囲の瓦礫が浮いた。


 車。


 鉄骨。


 コンクリート。


 全部。


 怪物へ向かって飛ぶ。


「来る!」


 ミックが叫ぶ。


 引力。


 瓦礫の嵐。


 177が突っ込む。


 無理やり突破する。


 だが。


 怪物の身体が光った。


 青白い放電。


 雷鳴。


 電流が街を走る。


 177の身体が吹き飛んだ。


 ビルへ激突。


 壁が崩れる。


「ハハッ!」


 笑い声。


 177だった。


 まだ立っている。


 楽しそうだった。


 怪物が動く。


 今度は地面だった。


 道路。


 瓦礫。


 全部が中心へ集まる。


 圧縮。


 歪む。


 砕ける。


 轟音。


 ビル一棟が崩壊した。


 粉砕。


 カイは目を見開いた。


「破砕因子」


 エストの資料。


 思い出す。


 引力。


 電流。


 破砕。


 三つ。


 全部ある。


 ミックが舌打ちした。


「最悪だな」


 ドローンが飛ぶ。


 レーザー。


 命中。


 怪物の肩を焼く。


 だが。


 効いていない。


 引力。


 ドローンが引かれる。


「っ!」


 ミックが操作する。


 遅い。


 一機消失。


 鉄骨へ叩きつけられた。


 残り一機。


 高度を上げる。


 怪物は追わなかった。


 その代わり。


 歩き出した。


 街の奥へ。


 カイは違和感を覚えた。


 止まる。


 考える。


 おかしい。


 今までの動き。


 攻撃。


 防御。


 反撃。


 全部している。


 だが。


 何か違う。


「逃げてる?」


 怪物を見る。


 177を見る。


 ミックを見る。


 怪物を見る。


 戦っているように見える。


 でも違う。


 本当にやりたいことが別にある。


 そんな動きだった。


 その時だった。


 横。


 タマが低く唸る。


 赤い目。


 怪物を見ている。


 そして。


 頭の奥で声が響いた。


『違う』


 カイが止まる。


「何が」


 返事はない。


 だが。


 タマの視線は怪物から動かなかった。


 まるで。


 何かを否定するみたいに。


 遠くで轟音が響く。


 怪物は街の奥へ進んでいく。


 177は追う。


 ミックは舌打ちする。


 そしてカイだけが立ち止まっていた。


 違う。


 その言葉だけが頭に残っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。