↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/81

第十三話 研究所

夜。


研究所外周。


風がコンクリートを擦っていた。


サーチライトが地面を流れる。


白い壁は高く、監視塔の灯りは遠い。


カイは見上げて顔をしかめた。


「……デカすぎだろ」


横ではタマが壁の向こうを見ていた。


赤い目は動かない。


細い霧だけが左右へ伸びている。


まるで何かを探しているみたいだった。


ポケットから身分証を取り出す。


角は擦れていた。


「借りるぜ」


入口へ向かう。


黒服が二人。


立っている。


だが。


反応しない。


身分証を読み取り部へ当てる。


電子音。


緑ランプ。


重い金属音。


扉が開く。


カイは眉をひそめた。


「……おかしくねえか」


警備員。


動かない。


監視カメラ。


こっちを向いている。


なのに止めない。


通報もしない。


普通ならあり得ない。


胸の奥がざわつく。


罠。


その言葉が頭をよぎった。


だが。


足は止まらなかった。


研究所の中へ入る。


白。


床も。


壁も。


天井も。


全部白かった。


吐き気がした。


長い廊下を歩く。


白衣。


端末。


書類。


誰も顔を上げない。


案内板だけが残っていた。


【被験体管理区画】


【資料保管室】


【廃棄処理場】


足が止まる。


処理場。


被験体。


管理区画。


どれも嫌な名前だった。


だが。


今は一つだけだった。


知りたい。


何をされた。


何で自分だけ生きている。


何でタマがいる。


何で管理局が追う。


それだけだった。


資料保管室へ向かう。


途中。


ガラス越しの部屋が見えた。


拘束具。


薬品。


ベッド。


血の臭い。


薬品臭。


胸の奥がざらつく。


知らないはずだった。


なのに。


見覚えがある気がした。


資料保管室。


鉄扉。


半開き。


滑り込む。


暗い。


モニターだけが青白く光っていた。


タマは部屋の隅を歩き回る。


棚を嗅ぎ。


床を嗅ぎ。


また戻る。


カイは端末へ向かった。


キーを叩く。


画面が切り替わる。


数字。


数字。


数字。


死。


死。


死。


【NO.751 心停止】


【NO.760 脳死処分】


【NO.771 廃棄】


スクロール。


また死。


また死。


また死。


その中。


赤文字。


【NO.776 生存】


指が止まった。


喉が鳴る。


もう一度見る。


776。


また見る。


776。


俺。


画面を睨む。


【最優先回収対象 被験体776】


「……俺かよ」


リーが浮かぶ。


ワンが浮かぶ。


胸の穴。


血。


全部浮かぶ。


奥歯が鳴る。


その時だった。


ガチャン。


重い音。


資料室の扉が閉じた。


振り返る。


赤ランプ。


点灯。


電子ロック。


起動。


沈黙。


罠だった。


最初から。


理解した。


なのに。


カイの視線は。


すぐモニターへ戻っていた。


逃げる。


そんな考えは一瞬だった。


知りたい。


その方が強かった。


スクロール。


続き。


見せろ。


スクロール。


見せろ。


見せろ。


見せろ。


画面が流れる。


【第一次二核生成実験】


【成功】


眉が寄る。


二核。


何だそれ。


スクロール。


【一次因子定着】


【二次因子定着】


【二核生成成功】


タマを見る。


黒い犬。


自分を見る。


二核。


二つ。


俺とタマか。


違うかもしれない。


でも。


何かが繋がる気がした。


見せろ。


さらにスクロール。


【黒体発生】


視線が止まる。


タマを見る。


また画面を見る。


黒体。


タマ。


偶然か。


そんな訳がない。


見せろ。


見せろ。


もっとだ。


【機能不全】


【実用性なし】


【経過観察対象へ移行】


【記憶処理実施】


【研究区画退所】


息が止まる。


記憶処理。


退所。


知らない。


覚えていない。


なのに。


確かにそこに書いてあった。


スクロール。


さらに下へ。


その瞬間。


画面が暗転した。


【アクセス制限】


舌打ち。


キーを叩く。


もう一度。


叩く。


表示は変わらない。


「見せろ」


叩く。


変わらない。


「見せろ」


もう一度。


画面を叩く。


拳が震える。


目が血走る。


あと少し。


あと少しで分かる。


そう思った。


その時だった。


画面下。


赤文字が浮かぶ。


【被験体776】


【最優先回収対象】


【プロトコル起動】


遠く。


ロックが一つずつ解除される音。


何かが来る。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。