39: ジウンとの誓い
留学まで二週間。偶然立ち寄った書店で、スンヒョクはジウンと再会する。「もう二度と会えないかもしれない」——そのひと言が、三年間胸の奥に眠っていた感情を静かに呼び覚ます。告白でも別れでもない、ただ互いに知っていたことを確かめるだけの夜。街灯の下で交わされた言葉と、最後のキス。スンヒョクはその夜、一つの誓いを立てる。成功した姿で生きるまでは、絶対に連絡しないと。青春の終わりに訪れた、静かで切ない夜の物語。
第39話 – ジウンとの誓い
2029年3月、街の中の書店。
留学まで一ヶ月を切ったスンヒョクは、ドイツとイギリス関連の書籍を落ち着いた様子で眺めていた。
「……これで計算すれば、イギリス側のスケジュールも合わせられそうだな」
つぶやきながらページをめくっていた瞬間、誰かと肩がぶつかった。
「あ、すみませ——」
顔を上げると、見覚えのある顔が目に入った。
「……え? スンヒョク?」
ジウンだった。
「……ジウン?」
スンヒョクは少し驚いた様子で目を瞬かせた。
「本当に久しぶりだね。眼鏡外してるから最初わからなかった」
ジウンは軽く笑いながら言った。
「そうだね。久しぶり」
スンヒョクはぎこちなくうなずいた。
「セリンから聞いたよ。ドイツに行くんだって?」
「うん。休学の申請も終わって、二週間後くらいには出国すると思う」
「私も引っ越すよ。キソンオッパがいる天安に」
「そう? よかったね」
「うん……見たんだね」
ジウンはぎこちなく笑った。しばらく流れる沈黙の中、書店の静かなクラシック音楽が二人の間を流れていった。
「もうほんとに会えなくなるね、私たち……」
ジウンは静かに言った。瞳がかすかに揺れた。
「……そうかもしれない」
「卒業式のときもそのまま行っちゃったじゃない。何も言わずに」
「あのときは言ったら行けなくなりそうで」
「今は?」
「今も……同じだよ」
ジウンはしばらく何も言わずその場に立っていたが、ゆっくりとうなずいた。
少し間が空いた。ジウンがためらってから、そっと口を開いた。
「あのさ……前の商店街のほう、ちょっと一緒に行ってくれない? 話したいことがあって」
スンヒョクは手に持っていた本を見てから、静かに言った。
「今日家に帰って飛行機の予約しなきゃいけないんだけど……」
ジウンは顔を下に向けたまま、低い声で言った。
「三十分でいいから。私たち……もう二度と会えないかもしれないのに、それくらいもできない?」
その言葉にスンヒョクはしばらく黙ってから、うなずいた。
「うん。すぐ時間作れるよ」
ジウンは小さく笑った。二人は無言で書店の外へと歩き出した。
商店街の前のバス停がぽつんと置かれていた。周りは静かで、時折街灯の明かりだけが地面を照らしていた。
ジウンはバス停の前で足を止めて、振り返った。
「スンヒョク……わかるよね」
ジウンは静かに言った。目を合わせることなく、地面を見ていた。
「……何が?」
スンヒョクは不思議そうに聞いたが、その瞳は揺れていた。
「わかるよね……何の話か」
バス停の横の自販機からコーラが落ちる音だけが、小さく響いた。
スンヒョクはしばらく黙って立っていた。風が彼の髪をかすかに揺らした。そしてやがて、静かに口を開いた。
「……うん。もしかしたら、君もとっくに気づいてたかもしれない」
その言葉にジウンはゆっくりと顔を上げた。表情は穏やかだったが、目の端がわずかに赤くなっていた。
ジウンはしばらく見つめてから、先に言葉を切り出した。
「この三年間……あなた、本当にたくさん成長したよ。拒食症も治して、全国大会ベスト4まで上り詰めて。私と同じチームで……あの頃、あなたと一番たくさん話した男友達は私だったと思う。何時間もメッセージして、真夜中を過ぎても」
「……わかってる。覚えてるよ」
スンヒョクは視線を逸らしながら小さく笑った。そして少し間を置いてから、頭をふっと下げて静かに言った。
「そうだよ。実は……好きだったんだ、君のこと」
ジウンはその言葉に驚かなかった。むしろ穏やかにうなずいた。
「私もずっと前から気づいてたよ。言わなくてもぜんぶ伝わってたから」
彼女は少し言葉を止めてから続けた。
「それでも、一度も言わなかったじゃない。すごいと思った」
「言ったら、私たちの間がぎこちなくなりそうで。それが嫌だった」
スンヒョクはまだ顔を上げられないまま答えた。
街灯の明かりが二人の影を長く伸ばした。冷んやりとした夜の空気の中で、長い間抱えてきた感情が静かに水面へと浮かび上がった。
ジウンは言いかけて迷い、静かに目を伏せた。
「実は……私も本当にたくさん考えたんだ。あなたのことを」
スンヒョクは黙ったままジウンを見ていた。
「でも、やっぱり……男の子としては違ったみたい。あなたという人が嫌いなわけじゃないよ。ただそういうことなんだよね」
短かった。でもその短さが、かえってはっきりと刻みつけられた。
スンヒョクはしばらく目を閉じた。黙って受け入れているような表情だった。
「……知ってる。わかってたよ」
「それでも、あなたは私の最高の男友達だったよ。本当に」
ジウンの声が少し柔らかくなった。
「あなたとメッセージして、ゲームしながら話すの、本当に楽しかったし、同じチームで活動したことも全部いい思い出だよ。あなたといると楽だったから」
それが慰めなのかどうか、スンヒョクにはわからなかった。でも本心だということはわかった。
「私はキソンオッパが好きなんだ。あなたじゃない」
ジウンは最後にはっきりと言った。
スンヒョクはしばらく唇を噛んだ。
「……そういうことは言わなくていいよ。どうせ君にまた連絡するつもりもなかったし」
その瞬間、ジウンが静かに彼の前へ歩み寄った。
そしてゆっくりと、スンヒョクの頬を包んでキスをした。
一瞬の沈黙。
スンヒョクは驚いた目で彼女を見つめた。拒むことができなかった。
ジウンはそっと微笑んだ。
「お別れのキスだよ。最後に。それでもあなたは……私と一番長く話していたチームメンバーで、私の最高の男友達だったから」
彼女は再び顔を上げた。瞳は揺れていなかった。
「でも、お願いがあるんだ。プライベートな連絡はしないでほしい。残酷なのはわかってる。ごめんなさい。でも……私はもう好きな人がいる、二十歳の女の子なんだよ」
スンヒョクはゆっくりとうなずいた。
「当然だよ。君は俺に全部してくれたんだから。ごめんなさいって言わなくていい」
ジウンはわずかに目を潤ませながら、小さく言った。
「ドイツで成功して、幸せに生きてね。チェ・スンヒョク」
「ペクウォン高校のチェ・ジウンとして、君のことを覚えておくよ。絶対に」
ジウンは軽く微笑みながらうなずいた。
「うん、私もあなたを覚えてるよ」
二人はそうして、最後に互いを見つめた。
その日、俺は誓った。成功した姿で生きるまでは、絶対に連絡しないと。
その夜、スンヒョクは家に帰るなりSNSでジウンをブロックした。
指先が一瞬止まった。でも彼女のお願いだった。従うことにした。
窓の外を見ながら、彼は静かにつぶやいた。
「俺はあの日、自分のすべてをそこに置いてきた。思い出も、感情も、そして……一番大切だった人も」
夜は深まり、出国まで二週間が迫っていた。
最後まで読んでくださり、ありがとうございます。この場面は、ずっと書くのが怖かった場面でした。スンヒョクが三年間一度も言えなかった気持ちを、別れの夜にようやく言葉にする。でもそれは報われない。ただ、互いにわかっていたという静かな事実だけが残る。「最高の男友達だった」というジウンの言葉は、優しさであると同時に、一番深く刺さる言葉だと思いながら書きました。次回からいよいよドイツ編です。どうぞよろしくお願いします。




