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36: 最強のチーム・アルファ

全国大会準決勝——チーム・ペクウォン高校アリーナの前に立ちはだかるのは、ランキング一〜三位が揃った最強チーム・アルファ。圧倒的な実力差を前に、スンヒョクたちはそれでも全力でぶつかっていく。勝敗が決した後、スンヒョクは静かに一つの選択をする。国家代表の枠を仲間へ譲り、自分だけが知っている別の道へと歩み出すために。周囲からは美談として語られるその決断の裏に、誰にも見せない本音が静かに息づいていた。青春の光と影が交差する、等身大の成長譚。

# 最強のチーム・アルファ


2028年2月、俺は『チーム・アリーナオンライン』を引退した。


全国大会準決勝まで駒を進めたのだから、当初の目的は果たしたと言っていい。未練はない。今年は高校三年生——そろそろ勉強に本腰を入れなければならない時期だ。


「はあ……」


制服のシャツを整えて図書室へ向かう廊下。ポケットの中のスマートフォンが振動した。


*ユ・セリン?*


「うん、セリン。どうしたの?」


相手の声は明るかった。


「全国大会準決勝進出、本当におめでとう。よく頑張ったね、スンヒョク」


その短い言葉に、一瞬だけ目頭が熱くなりそうだった。セリンはいつもそうだった。多くを語らなくても、必要な瞬間に、必要な言葉をちゃんと届けてくれる人だった。


「……ありがとう。お前がいなかったら、ここまで来られなかったよ」


セリンの応援は、いつだってスンヒョクのプレイに最後のバフをかけてくれた。もうゲームじゃない——現実をプレイする時間だ。


しばらく沈黙が続いた後、セリンが恐る恐る聞いてきた。


「ねえ……準決勝に進んだ後、急に棄権するって言ったって聞いたけど? 勉強しなきゃいけないからって。本気なの?」


スンヒョクは苦笑した。


「あ、あれ? ただ思わず口から出ちゃっただけだよ。急にプレッシャーがどっと来てさ。でも、せっかくここまで来たんだし……楽しんでいくことにした」


電話越しに、セリンがほっと息をつく音が聞こえた。


「そうだよね? 冗談だよね? よかった……うん、絶対優勝してね。私はいつだってあなたの味方だから」


「うん。ありがとう、セリン。じゃあ切るね」


通話が終わり、画面が暗くなった。再び、静かな図書室への廊下が続く。


今度こそ本気で——ゲームじゃなく、自分自身のために戦う時間だった。


なのに不思議なことに、なかなか足が前に進まなかった。『自分自身のために』という言葉が、頭の中で空虚に響いていた。自分自身のためになんて、この国の中で本当に可能なのだろうか。


スンヒョクは静かに首を振り、歩き始めた。


---


2028年2月、全国大会準決勝第一試合——チーム・ペクウォン高校アリーナ対チーム・アルファの対戦が予定されていた。


チーム・アルファは、フェイク・イム・サンヒョクとゼウス・チョ・ウジェ、そしてユルウォン高校のチェ・ヨヌが一チームを組んだ、全国ランキング一〜三位の圧倒的実力派チームだった。スンヒョクはチーム・アルファの戦績を調べてみた。


百勝一引き分け一敗。その一敗も不戦敗として記録されたものだった。


事実上の無敗と言っていい圧倒的な記録に、胸の奥がじわりと重くなった。


その知らせを聞いたジウンが言った。


「スンヒョク、もう楽しもうよ。調べたら、あの人たちって全国ランキング一位、二位、三位なんだって。この試合はどう考えても勝てないよ」


スンヒョクは淡々とうなずいて答えた。


「そうだな、どうせ……」


語尾が消えた。でも、その目つきは違った。敗北を受け入れた諦めと、それでも何かをやり遂げなければならないという奇妙な気概が、同時に宿っていた。この試合は単純な勝ち負け以上の意味を持っていた。


準決勝は明日だった。スンヒョクは空を見上げた。


噂にしか聞いたことのなかったフェイク、ゼウス、チェ・ヨヌを実際に目にすることになるとは。全国大会ベスト4で敗退したとしても、もうここまで来られただけで十分だ——そう思おうとしていた。


---


翌日、競技場に審判の声が響き渡った。


「それでは、準決勝第一試合! チーム・アルファ対チーム・ペクウォン高校アリーナの試合を始めます!」


数百人の観客が『フェイク、フェイク』と大合唱しながら声援を送った。フェイクはeスポーツ国家代表として全国最多チャンピオンを誇り、アリーナオンライン現韓国ユーザーランキング一位だった。


観客席に座ったキソンとジウンが静かにささやき合った。


「あれがフェイクか……」


フェイク・イム・サンヒョクの隣には、全国ランキング二位『ゼウス』チョ・ウジェが並んで立っていた。二人が並んでいるだけで、競技場の空気が変わるようだった。


試合開始と同時に、フェイクが口を開いた。


「先に攻めてこい。主力は誰だ?」


キソンとスンヒョクが主力として立った。二人はそれぞれオルフェウスとローランのカードを取り出し、フェイクを狙った。派手なスキルエフェクトとともに猛烈な攻撃が降り注いだ。


しかしゼウスが軽く手を上げて一枚のカードを差し出した瞬間、強力なバリアが展開されてすべての攻撃を無力化した。


「フェイク兄さんが出るまでもないな」


ゼウスの自信に満ちた口調。スンヒョクはその一言が誇張でないことを、すぐさま肌で感じた。


キソンとスンヒョクは素早く次の戦略に切り替え、必殺技を連発した。鮮やかな光とともに強烈な一撃がチーム・アルファを襲ったが、ゼウスは今度も微動だにせず防ぎ切った。彼のバリアは単なるスキルではなく、ほぼ無敵に近い完璧さだった。


*これが……全国ランキング一位と二位の差か。*


スンヒョクは奥歯を噛んだ。自分が積み上げてきたものが、この競技場の中でいかに小さいか——初めて、鮮明に感じた。


フェイクはそこでようやく、ゆっくりと手を伸ばして自分のカード『ローラン』を取り出した。


「お前ら、初めて見るか? これが、カードと使い手が一つになる『同体化』という技だ」


声は穏やかだったが、その奥には揺るぎない自信が宿っていた。ローランのカードから瞬く間に青白い光が広がり、フェイクの動きとカードのスキルが完璧に一体化し始めた。


ゼウスも静かに口を開いた。


「俺もそろそろ決めるとするか」


彼が取り出したカードは『ゼウス』だった。稲妻が走るような強烈な光が競技場全体を白く照らした。


二人の息はまるで一つの体のように完璧だった。ゼウスのカードが雷鳴のごとく強烈な電撃を浴びせかける間に、フェイクは同体化したローランの決定打で相手の防衛線を完全に崩壊させた。


審判が試合終了を告げた瞬間、観客席は熱狂の渦と化した。


チーム・アルファの完勝だった。


スンヒョクは息を整えながら、その結果を静かに受け止めた。悔しくはなかった。ただ——あの壁がどれほど高いかを、体で確かめた。それだけだった。


---


試合が終わった後、スンヒョクはフェイクに近づいた。


「フェイクさん、戦えて本当に光栄でした」


その声には敗北の悔しさではなく、尊敬と感嘆がにじんでいた。キソンも躊躇なく歩み寄り、言った。


「フェイクさん、サインをお願いできますか」


フェイクはしばらく二人を見てから、静かに言った。


「俺はこれが仕事だ。お前たちは学生の身でここまで来たんだから、十分すごいよ」


その言葉が、重く残った。負けても不満を見せず、むしろ光栄だと言う二人の姿に、フェイクは何かを見たようだった。敗北の重さは跡形もなく消え、互いへの敬意だけが競技場を満たしていた。


---


数時間後、予想通りチーム・アルファは決勝でも相手チームを完膚なきまでに叩き潰し、全国大会優勝を手にした。


スンヒョクは深くため息をついて言った。


「俺たちの実力じゃ、どっちみち負けてたよ」


キソンはうなずいて言った。


「スンヒョク、あんな人たちと一度でも戦えただけで十分じゃないか。俺は死んでも悔いはない」


ジウンは二人を見て、柔らかく微笑んだ。


「素晴らしい試合だったよ。負けるのは仕方なかった。でも、三人ともよく頑張った」


彼女はそっとスンヒョクの手を握りながら言った。


「スンヒョク、お疲れ様」


スンヒョクはジウンの温かい手の感触に、胸の奥がじんと熱くなった。負けたけれど、共に過ごした時間と互いへの声援は、どんな結果よりも長く心に残り続けるだろう。


スンヒョクは静かにため息をついて言った。


「カードゲームを始めた頃は、校内大会でさえ怖かったのに……こうして全国大会ベスト4まで来られるなんな。俺たちの話自体が、まるで奇跡みたいだ」


ジウンは頷きながら、温かく言った。


「スンヒョク、しかも今度は国家代表の受験資格も手に入ったよ。チーム内ランキング一位はあなたよ」


スンヒョクは少し迷いながら答えた。


「あ……その枠はキソン兄さんに譲ろうと思ってる。実は俺には別の計画があって。あの人は家も貧しいのに、俺たちのために時間を作ってくれたじゃないか。国家代表の枠は、絶対に兄さんに譲りたい」


キソンは最初、きっぱりと首を横に振った。


「それは絶対にできない。お前がランキング一位なんだから、お前が出るべきだ」


「兄さん」


スンヒョクが静かにその名を呼んだ。キソンは言葉を止めた。


「兄さんがこのチームでどれだけ多くのものを犠牲にしてきたか、俺は全部わかってる。兄さんがいなかったら、俺たちはここまで来られなかった。国家代表の枠は兄さんのものだよ。本当に」


長い沈黙が続いた。キソンは頭を下げた。肩が少しずつ震えていた。


「……ありがとう、スンヒョク。お前の気持ちを受け取るのが正しい気がする」


その瞬間、二人の間には言葉では言い表せない重く深い信頼と友情が宿った。スンヒョクもそんなキソンの姿を見て、責任感とともに、心がすっと軽くなるのを感じた。


---


翌日、スンヒョクが国家代表の枠を譲ったという話が、学校の中に静かに広まった。仲間のために自ら一歩引いたその話は口から口へと伝わり、校内で小さな話題となった。


「チェ・スンヒョクがキソン兄さんに枠を譲ったって? マジで?」


廊下を行き交う言葉が聞こえてきた。先生たちもそっと肩を叩きながら一言ずつかけてくれた。


スンヒョクはいつも通り、黙々と学校生活を送った。


「俺はただ、チームのために、仲間のためにやっただけですよ」


謙虚に笑いながら答えた。周りの人たちはその言葉を聞いてうなずいた。


でも、おかしかった。褒められるたびに、心の内側のどこかが少しずつ空洞になっていくような気がした。周りの人が見る『チェ・スンヒョク』と、今ここに立っている自分との間に、微妙なずれを感じた。


*これが俺の話なのか。*


スンヒョクはその思いを静かに飲み込み、笑った。


---


家に帰ったスンヒョクは、部屋でひとり窓の外を眺めた。


試合が終わった後になって初めて浮かんでくる顔があった。ハインツ。数ヶ月前のビデオ通話で彼が言った言葉が、また耳元で回り始めた。


「準決勝進出おめでとう、スンヒョク君。センター試験の成績をドイツのアビトゥア基準に換算してみると、ドイツ国内の国公立大学への入学は十分に可能だ。確か人文学を専攻するって言っていたね? 社会学と……宗教人類学で合ってるかな?」


「はい」


しばらく間があって、ハインツは苦く笑いながら続けた。


「でも韓国では……それは贅沢と見なされるだろうね」


「……?」


「大学が人材を育てる場所ではなく、就職率を管理するシステムに成り下がったとき、真っ先に消えていくのは人文学だ。学生たちとの議論もなく廃学科を決め、十二年間の教育が結局一つの目的地だけに向けて設計されているなら……その国で本当の勉強をするというのは、孤独な戦いだよ」


スンヒョクは頭を垂れながら答えた。


「はい……二〇一〇年代以降、ずっとそうです」


ハインツはため息をついた。


「だから本物の人材が出ていくんだ。そしてその流れは、遠くないうちにもっと速くなるだろう」


あのとき、スンヒョクは何も言わずにただ静かに聞いていた。反論できなかった。間違ったことは何一つ言っていなかったから。


部屋の静寂の中で、スンヒョクはその日の会話をもう一度かみしめた。


*だから、俺がここに留まる理由はない。*


人々が自分を褒めれば褒めるほど、その確信はより固くなっていった。周りから見られている自分と、自分が望む人生は、最初からまったく別の方向を向いていた。国家代表の枠を譲ったのは美談なんかじゃない。ただ——自分が望む方向が、最初から別のところを向いていただけのことだった。


ペクウォン高校を卒業したらすぐに休学届を出して、ドイツへ発つつもりだった。センター試験は受けて願書も出す予定だが、それはただ一つのプロセスに過ぎない。もう心は決まっていた。


スンヒョクは静かに窓を見つめながら、小さくつぶやいた。


「*Hallo Deutschland…… warte nur ein Jahr.*」


——やあ、ドイツ。一年だけ待っていてくれ。


その言葉は、部屋の空気の中へと、ゆっくりと溶け込んでいった。

ここまで読んでくださり、ありがとうございます。今回の話で一番書きたかったのは、「正しいことをしている人間が、必ずしも満たされているわけではない」という場面でした。スンヒョクは仲間を思いやり、譲り、笑っています。でもその笑顔の奥には、誰にも言えない空洞がある。褒められるたびに少しずつ遠くなっていく自分——そんな感覚を、うまく書けていたら嬉しいです。ラストのドイツ語のひとことは、彼の本音そのものです。次回もどうぞよろしくお願いします。

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