光。
夜の海は沈むほどに暗く闇に包まれる。久遠蒼真は海を潜りながらその闇に自身が溶けていく感覚を楽しんでいた。夢の中のような一日の出来事。
覚めないでくれ。この夢。創作の血肉とするためにこの世界をもう少し見させてくれ。そう願う。
球体の光が二つ蒼真の周りを動き回る。野球ボールほどのその黄色く発光する球は蒼真のイメージした照明の魔法だ。蒼真の周り数メートルを淡く照らす。
光の届く数メートル以降は完全な闇だ。海面の月あかりすらも届かぬ深海。海の中を呼吸できるこの世界では潜っても水圧すらない。
それに気づくと蒼真の好奇心は抑えられない。元いた世界では深海は未知の領域。宇宙よりも近くしかし、謎に満ちている。
もちろん、元いた世界とこちらの世界では常識がちがうため同じ深海というわけではない。それでも探求心は抑えきれない。
「だいぶ、潜ったな。ここで、、、」
久遠蒼真は今の自分の考えを自ら押さえ込み首をふる。さすがに我ながらイカれてる。と思う。蒼真は好奇心から海の中で呼吸ができるという概念の魔法を解こうとした。思わず苦笑いしてしまう。
こんな深海でそんなことをすればと想像すると心臓が逃げたしたいように飛び上がる。自分の好奇心の危うさに対する呆れで冷や汗がでる。
蒼真の身体はさらに下へと進む。彼の周りをつつむ光には深海の景色はずっと変わらない。右手に壁のように続く岩肌。それを便りに下へと落ちていく。
変わらぬ壁に数メートル先の闇。潜り初めて一時間近くたつがここ数十分、生物には出会っていない。景色にまるで変化がない。
本当に自分は深海に潜っていっているのか不安になる。上下左右、感覚がわからなくなる。
蒼真は頭を海面の方向に向けエレベーターで下りるかのように海底を目指している。一時間近くたって彼の悪い癖がでてくる。
彼がストイックな規律を設けてルーティンを守るのは自身のその癖を理解しているからだ。それは飽き性、熱しやすく冷めやすい。その癖を習慣化という方法で創作をモチベーションではなくシステムとして続けられるようにしている。
今この刺激のない一時間で彼は限界がきた。海底都市は海面の光が入る浅い位置にあったのだなと理解しながら頭を海底に向ける。頭を海底、両手を海面方向にむけると蒼真は魔法を発動する。
両手から海面方向に勢いよく水が渦巻く。それを推進力に彼の身体は海底まで突き進む。彼の手から伸びる渦は長く伸びる。身体は凄まじい速さで下に向かう。
数分としないうちに蒼真の視界に変化が見える。両手から伸びる渦の勢いを緩め彼は様子を伺う。視線の先。海底になにかがある。
光。発光するなにかが目に映る。徐々に彼は海底のそれに近づく。思わず笑みがこぼれる。
近づくごとにわかる。これは思ったより巨大。一体なにが光っている?
その疑問が蒼真の好奇心を刺激し心拍をあげる。海底の謎、未知に近づく感覚は彼の顔を明るくする。




