また考えてる。
思わずため息がもれる。オトは食事を終え寝室で過ごしていた。少女は今日一日が悪夢の中にいるように感じていた。いや、昨日から続く悪夢。
まだ眠るには早い時間。ソラに会いたいと思ったが彼はどこにも見当たらない。長老は一人になりたいのだろうとソラの気持ちを察して言っていた。
私は一人になりたくない。そうオトはワガママを言いたかった。ベットに腰をかけ人魚の尾びれをパタパタと揺らす。
魔法、、、科学、、、世界の危機、、、そのどれもが他人事のように思える。さっさと目が覚めて悪夢が終わって欲しいと思う。全部が夢だったと、、、。
脳裏にソラの姿が浮かぶ。そのまま頭からベットへ倒れ込む。後頭部を布団の柔らかさが包む。
「目が覚めてもあの子だけは本物であってほしいな、、、」
そんな言葉が口をつき声になっていたことに気付き思わず咳払いをする。顔をベットに埋め恥ずかしさを堪える。
誰もいない部屋で誰かに聞かれていないかと悶える。呼吸を整え再び身体を仰向けにする。
「バカみたい、、、。」
また声がもれる。頭にはソラの姿がこびりつく。なんでこんなに頭から離れないのだろう。天井を見上げしばらく呼吸だけに集中する。
落ち着きを取り戻し立ち上がった。水を一杯飲もうと思い食堂へ向かう。
食堂へ向かう廊下でも食堂でもソラの影を探してしまう。また考えてる。なにかが変、自分が変。オトは気づくと空になっているグラスを見つめる。自分が水を飲んだかすらもわからずもう一杯。
"綺麗な歌声だった。鈴みたいな"
ふと、ソラの言葉が脳裏に甦る。なぜか胸が温かくなる。オトは目をつぶり胸をおさえる。ソラの言葉をそっと脳の奥で再生する。呼吸で邪魔をしないように丁寧に息をする。
心の中の大事な箱に壊れないようにその言葉をしまい目を開ける。少しだけ視界の色が鮮やかに見えた。
さきほどまで話し合いを続けていた長老や神官たちの声は聞こえない。もう寝てしまったのだとオトは思う。皆今日一日張り詰めていた。
神殿の外に出る。夜風が肌を冷やす。
(ソラのいた世界では水中で風に当たる感覚は不思議なんだろうか。)
どうして、またソラのことを、、、。頭がソラを連想する。首をふる。呼吸を深くして気持ちを落ち着かす。歌いたくなった。どうしても声を出したい。
オトは尾びれを揺らし泳ぎ始める。街の外でまた歌おう。きっと歌えば気持ちは落ち着く。いつだってそうだ。
"鈴みたい。感動した。"
胸が跳ねる。ソラの言葉がまた甦る。オトは尾びれをこぐスピードをあげる。息があがるほど全力で進む。
街の外に出た。魚たちが集まってる。なにか起こっている。オトはそう直感した。魚群に近づき話を聞くと見た方が早いと誘導される。
心臓がまた跳ねる。ソラだ。岩影に思わず隠れる。息を整えもう一度目線を戻す。冷静になって様子を伺うとソラの傍にもう一人いる。
アイオン・ヴァレフォール。魔王。オトの胸を今度は不安が叩き始めた。




