わくわくしない⁉
円盤から現れた少年がなにかを取り出す。水晶で様子をうかがうソラにはそのなにかは拡声器のように見える。少年がそれを口許に近づけると不快な機械音が辺りに響く。少年が語り始める。
『海底都市の諸君。ごきげんよう。』
妙に落ち着いた、大人びた口調。声変わりしていない少年らしい声に違和感を感じる。一同は少年の次の言葉を待つ。緊張で時間の流れが遅く感じる。
『さてさて、ここは実に素晴らしき魔法の世界。うん。
非科学的、非常識とは言わないよ。こちらではこれが常識、自然の摂理。うん。
現にほら、、、』
水晶に映る少年の手が口許を指す。
『僕も呼吸ができてる。』
口角をあげ白い歯がのぞく。子供らしい笑顔ではない。どこか不気味で大人びた微笑。目の奥は笑っていない。
少年はオーバーに二、三度深呼吸をする。最後の一息をついてから話を続ける。
『さてさてさて、何から、、、うん。
これから、について話そっか。』
妙に子供っぽい話し方をする事をソラは不気味に思う。横で聞いている久遠蒼真の表情は冷めている。彼が何を思っているのかはソラには想像できない。スンとした横顔をチラりと見ただけでソラはすぐに目をそらしてしまう。
『正直ね、僕はこの世界を支配とか冥月王とか、、、うん。
本当に興味がないの。知識をくれた元"月の住人"たちには申し訳ないけど、、、まあそれもさほど悪いとは思ってないけどね、うん。』
掴み所のない少年の主張にソラたちは困惑する。長老から「なにが言いたいのだ、コイツは?」と思わず苛立ちと本音がもれる。
ただ、、、と少年は続ける。その顔に本当の笑みが広がる。目や口が顔中に溶けたような笑い顔を作る。
『ただ、試してみたいんだ。実験だよ。
科学と魔法、どちらが優れているかの実験。力比べ。ワクワクしない⁉』
少年の言葉に長老は眉間にシワを寄せる。街を破壊し海底都市の住人を再起不能にしておいてゲームのように楽しむ少年に長老の拳に力がはいる。
しかし、あの超科学を前になにもできない自分に長老は唇を噛む。隣に立つ人魚のオトの顔が不安に歪む。
対して、久遠蒼真、アイオン・ヴァレフォール、二つの世界の天才は同じように歯を見せる。水晶に映る少年の"わくわくしない⁉"という言葉が二人の脳内で反響する。
「「するねえ。」」
二人の声がシンクロする。そう口にしたあと、二人は堪えられないというように笑いだす。子供がほしかったオモチャを手に入れたようなキラキラした目をして、、、
少年も同じようにガラス玉の中で笑っている。ソラにはこの得たいの知れぬ三人はエイリアンのように思えた。
彼らは自分たちの好奇心を満たす為なら他人の迷惑や命など関係ない。そう考えているとソラは思った。
混ぜるな危険な三人が揃っている。彼らが魔法側だろうが科学側だろうと意味はない。彼らはどちらにつこうが味方ではない。そのことがソラの中でアラームを鳴らす。
海底都市に危険を報せるクラゲの赤い光はまるで自分の心の不安が反射しているようだとソラは思った。




