第4話
――でっ、でも。本当にどうしよう……。
思い返してみると、確かに『違和感』というのは主人公の姿と攻略キャラクターたちの姿を見た時からあった。
――だって、あまりにも「早すぎた」から。
その仲の良さは、とても入学して数週間で出来る様なモノではなく、それこそ「小さい頃からの延長」と言わんばかりだった。
――でも、これが本当に『アイテム』によって「作り出されたモノ」だったとしたら。
主人公の辿る末路は両極端な二つしかない。
「……」
いや、本来であれば『ハーレムエンド』と『ゲームオーバー』の二つなのだが、正直なところ『ハーレムエンド』は難しいだろう。
――だって……。
ゲーテ王子はあまり主人公に良い印象を持っている感じがしないのだ。
――むしろ毛嫌いしている様にすら感じる事があるけど。
ただ、それが主人公に伝わっているか……と言うと「暖簾に腕越し」といった感じではあるが。
主人公であるはずの『エステル』が転生者であるのはほぼ間違いないだろう。そして、私は『悪役令嬢』だ。
本来であれば、私は彼女の邪魔をしなければいけない役どころなのだが……。
――でも、それと同時にこの世界を生きている一人の人間。
つまり、言ってしまえば私は『カナリア・カーヴァンク』という名前と姿形を受け継いだに過ぎず、実際のところ。ここは「ゲーム」ではなく「現実」の世界なのである。
――だから「絶対」にストーリーの通りに動く必要はないモノ。
そして現に私はストーリー……いや、設定通りではなく毎日を過ごしているが、特に大きな問題は起きていない。
「それにしても……一体どこに行ったのかしら。ディーン」
なんて、この時は他人事の様に言っていたのだけれど、その答えを知るのは……もう少し後の事だった――。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「……ん?」
朝。いつもの様に登校すると、そこにはなぜか人だかりが出来ていた。
――どうしたんだろ?
「?」
いつもであれば気にしないところだけど、昨日の事も気になり、私はその人混みの中へと進んで行くと……。
「ちっ、違うの! 私は決してみんなを騙そうと思っていたワケじゃ――」
「うるせぇ!」
そこには主人公と攻略キャラクターたちがおり、不思議な事に何やら言い争いをしている様だ。
「?」
――なっ、なんで?
私の記憶が正しければ、彼らと主人公はつい先日もみんな仲良くお昼を食べていたはずだ。
「騙そうとしたワケではない? ではなぜ、この様な『薬』が出て来るのですか?」
「しかも、君。それをあろう事か殿下にそれを使った『クッキー』を食べさせようとしていたんだよね? それで信じて欲しいって、虫が良すぎると思わない?」
そう続ける二人も既に攻略されたはずのキャラクターだ。
――どっ、どういう事?
困惑する私を置いて三人は主人公に対し、言い寄っていて、主人公はそれに対し言い淀んでいる。
「うぐ」
――でも、ここで言い淀むって事は……。
要するに「本当」という事なのだろう。
――あれ、でも。
しかし、軽く辺りを見渡したモノの、周辺にゲーテ王子の姿はない。
「――それで三人で寄って集るのか」
「でっ、殿下!」
そんな時。ふいにゲーテ王子が私の後ろから現れ、私は思わず振り返った。
「はぁ、こんな朝早くから醜い言い争いをするな。しかも、こんな人が集まる場所で」
ため息混じりに言う王子に対し、三人は「しかし」となんか言いたそうだったけれど、殿下の後ろにオドオドした様子のアンディの姿を見ると、すぐに黙った。
「あ! 殿下! あの、私……」
「――連れて行け」
何を思ったのか主人公はゲーテ王子に対し、猫なで声で近づこうとした瞬間。すぐにそう言うと……。
「はい」
そう言って突然リュアが現れ、主人公だけでなく攻略キャラクター共々全員そのまま連れて行かれてしまったのだった――。




