第2話
あまりにも王子の態度が良くなかったため、主人公は一瞬「ビクッ」と怖じ気づいたように見えた。
「……あっ、あの! 実は」
しかし、主人公はめげない。
――でもそれって、戦う時かそういった時の話なら分かるけど。
こうした時の主人公の「めげない」はちょっとニュアンスが違う様に感じてしまう。
「コッ、コレを渡したくて!」
そう言っておもむろに手渡しのは『クッキー』だった。
「……」
――やっぱり。
ここで私は「主人公は私と同じ『転生者』だ」と確信を持った。なぜなら……。
――この世界でクッキーが作れる人は、いないもの。
それは、兄であるアルカが「クッキーのレシピは門外不出」としているためである。
――それに、普通の貴族が料理どころかお菓子作りなんてしないもの。
「そっ、それじゃあ!」
「なっ、おい!」
王子の手に渡った事を確認すると、主人公はそのまますぐに走り去ってしまい、その場にはクッキーを持ったままの王子が取り残された。
「コレをどうしろって言うんだ」
あまりにとも突然の事で、王子は放心状態で小さく呟き、手渡されたクッキーをジッと見つめる。
――思わず敬語を忘れてしまうほどに……驚いたのね。
先に言っておくけれど、私は決してこの一部始終を見ていたかったワケではない。
そもそも、私はいつも誰よりも早く学校に着いて勉強をしていて、私の席が廊下に近いのも最初からである。
――でも、今のは「手渡すだけ手渡して逃げた」って事よね。
しかも、手渡した相手はこの国の王子。
――焦っている……のかしら?
確かに、他の攻略キャラクターたちは隠しルートのキャラクターも含めて攻略済みの様だが、ゲーテ王子の噂を耳にした事はない。
――でも。食べるのかしら?
そこそこ親愛度が高ければ食べてくれるとは思うが、先程の王子の様子を見た限り、とても良好な関係には見えなかった。
――そもそも、王族に限らず貴族にだって『毒味』の係はいるし。
この世界でも「毒殺」という心配は上位貴族ほどあり、カナリアの場合はディーンやリサが行っていた。
「……ん?」
――そういえば……確か、効率良く親愛度を上げるアイテムがあった様な?
「!」
そこでふと私の脳裏に過ぎったのは『とあるアイテム』の存在だ。
――でも、ちょっと待って。あれを手に入れようと思ったら……かなりの金欠になっているはずなんだけど。
しかし、彼女が転生者である事と攻略の効率の良さから「そのアイテムを使った可能性が高い」という結論に至った――。




