第5話
正直、ゲーテは「ここでカナリアが出て来たら……」と内心焦っていた。しかし、まさかディーンが来るとは思っておらず、驚いてしまった。
「なっ、なぜ。ディーンさんが……」
それこそ、思わず声を漏らしてしまった程である。
「突然申し訳ございません」
「いっ、いや。そっ、そもそも僕はゲーテ王子では……」
ゲーテはそう口では言いつつも「もうバレてしまっているのだから良いのでは?」と思い始めていた。
「……」
「……」
それに、二人は最初から「ゲーテ殿下」とグレンの姿であるにも関わらずそう言った。つまり、二人には『魔法』を使っている事は既にバレているという事になる。
現に、こうして認めようとしないゲーテに対し、二人は何とも言えない表情をしている……様に見える。
多分、二人はゲーテの気持ちも察しているのだろう。
そもそも、ゲーテが「魔法を使って全くの別人になってお茶会に参加した」というのも「王子という立場を忘れてお茶会に出たかったから」という気持ちからだった。
でも、まさかそこで友人が出来るとは思いもせず、しかもそれが……今まで続く事になるは思いもしなかったが。
「……」
しかし、既に二人が分かっているのであれば「もはや魔法を使う必要もないのでは?」と思えてしまう。
「ふぅ。もう既に分かっているのであれば、これ以上誤魔化しても意味はありませんね」
観念した様に言って魔法を解くと……二人は「やっと認めたか」と言った様な表情を見せた。
「頑固ですみません」
そう言うと、二人は「事情があるのだから仕方ありません」と答える。
「でも……なんであの子には言っていないの? タイミングはいくらでもあったでしょう?」
アーリアにふと聞かれた質問に、ゲーテとディーンは思わず固まった。
「え。なっ、何。その反応」
しかし、アーリアはどうしてそんな反応をしているのか分からず、目を白黒としている。
「えーっとですね。おっ、お嬢様が……その」
言いにくそうに説明をしたのは、ディーンだった。
「殿下を前に申し訳ないのですが、実は殿下に会いたくないらしく……」
ディーンは申し訳なさそうに言ったが、ゲーテとしては「やっぱりか」とカナリアのかなり近しい人物から改めて言われて、内心納得していた。
それと同時に「やはり、言わなくて良かった」とホッともしていた……が、それは決して人には言えない。
「そう……なのね」
何となく気まずい空気に察したのか、アーリアは言葉少なに答えた。
「そっ、それで。わざわざここに来てもらったのは、ちょっと協力欲しい事がありまして」
「協力して欲しい事……ですか?」
「ええ。実は……エステルって子に関して何だけど」
「……聞きましょう」
実はこの時。ゲーテは『エステル』という名前を聞いて何となく二人の「協力して欲しい内容」が分かった様な気がした――。




