第4話
「……初めまして、ゲーテ王子」
「え。なっ、何……突然」
突然の「ゲーテ王子」と言う発言に、少年は思わず冷や汗が流れそうになる。
そもそも、少年は「ゲーテ王子」と呼んだ目の前にいる同じ学校に通う少女に「今日の昼休みにここに来て欲しい」と呼ばれてこの場所に来た。
しかし、少年にとって「昼休み」とは幼少期から仲良くしている友人が図書室で勉強している時間帯で、彼にとっては大事な「交流」の時間だった。
その友人は「女性」だったのだが、そんな友人にも新たに友人が出来、少し騒がしくなって、少年にとっては「新しい同性の友人が出来て嬉しそう」という気持ちと、自分以外の人と楽しげにしている彼女を見て「少し寂しい」という気持ちに日々悶々とする日々が続いていた。
少年は『グレン・アシュタルト』と言う名前で、この国の王子『ゲーテ・グリーンアクア』ではない。
そもそも、見た目も全然違う。
「アッ、アーリア様」
普段であれば、いつもの様に幼い頃からの友人である『カナリア』が言うところの「穏やかな笑顔」で聞き流せるのだが、この時の彼は内心。思わず冷や汗が出てしまうほど焦っていた。
なぜなら、グレンを「ゲーテ王子」と言った『アーリア・フリークス』は、何か確証を持っているのか、自信満々で言ったからだ。
しかも、今の彼女はグレンが知っている「可愛らしい妹」の様な雰囲気ではなく、むしろその真逆の「大人な雰囲気」が感じられる。
「……」
その雰囲気の違いを感じ取れないほど鈍感ではない。
「そんなに怖い顔をしないで。別にそれを誰かに言おうとか考えていないから」
「……」
アーリアはそう言うモノの、簡単に「はいそうですか」とはいかない。
しかし、アーリアに「来て欲しい」と言われた場所は植物庭園の様な場所で、学校からは少し離れた場所にあるために、あまり生徒は近寄らない。
ただ、出入り口が一つしかないために、外に出るのは難しいそうだ。
「……まぁ、警戒するなって方が無理な話よね」
グレンが出入り口の方をチラチラと見ている事に気がついたのか、アーリアは小さく「はぁ」と息を吐く。
「でもね。あなたは私の最初の問いかけに答えていないのよ」
「……それは、僕がゲーテ王子という事に対してでしょうか」
そう聞くと、アーリアは「ええ」と答える。
「まぁ、隠し通そうと言うのならそれでいいわ。ただね、あなたをここに呼んだのはちゃんと理由があるの」
「理由……ですか?」
グレンが不思議そうに尋ねると、アーリアはまたも「ええ」と頷いた。
「でも、その前に……」
アーリアはそう言って出入り口の方へ視線を向けると……。
「え」
そこから現れたのは意外な人物。
「ディッ、ディーンさん?」
「こっ、こんにちは。グレン……いえ、ゲーテ殿下」
そう、そこに現れたのは友人。カナリア・カーヴァンクの執事を彼女が幼少の頃から務めている『ディーン』だった。




