第3話
「はぁ」
大きくため息をつきながら、エステルは軽く伸びをする。
――なんにせよ。王子と仲良くなりたいのになぁ。
なんて思うが、上位クラスの王子はいつもなぜか教室にはおらず、その代わりに「王子の右腕」を自称するアンディが彼女の対応していた。
――私としてはどちらでも良かったけれど。
どのみち「隠れルート」と言われているアンディの攻略もしなければいけなかったのだから、むしろ「手間が省けた」とすらエステルは思っていた。ただ、ゲーム本来の流れとは少し違うだけで……。
そもそも彼女はそのゲームのヘヴィープレイヤーだったため、攻略法は頭に入っていた。だからこそ、攻略キャラクターたちの好みやイベントの進め方。そして時には『アイテム』なども利用して効率良く親愛度を上げる事が出来たのだ。
しかし、彼女の誤算は「この世界がゲームではなく現実だった」というところだろう。
だから彼女は本来ゲームでは『ミニゲーム』として遊んでいた「勉強」に力を入れる事はなく、毎回退学ギリギリの点数を取る結果になってしまっていたのだ。
ただこの世界が「ゲームの世界」と信じて疑わない彼女はそんな事は一切気にしていない。むしろ彼女が「気にしている」のは……。
――悪役令嬢もイジメてこないし、王子との親愛度も上がらないし!
色恋についてだけだった。
そして、エステルの目的はあくまで『ハーレムエンド』で、そうするためには学校の卒業までに王子との親愛度を上げておかなければならない。
「それなのに!」
しかし、なかなか王子は捕まらず、ここ最近は自分に好意を向けて来る攻略キャラクターたちに煩わしさすら感じ始めていた。
「……」
ちなみに『ハーレムルート』とは、王子だけでなく他の攻略キャラクターたちの親愛度も最大値にまで上げる必要があり、最終的に結婚をするのは『王子』で「君が王子を好きでも、俺たちも君を想っている」と言う言葉と共に、エンディングを迎えるのが『ハーレムエンド』である。
そして彼女の一番の推しが『ゲーテ王子』であり、王子最優先で行動をしていたのだが……どうにも空回っているらしい。
――はぁ、なーんで上手くいかないんだろう。
しかし、そんな「将来有望な男性たちに色目を使っている」となれば、当然「面白くない」と思う令嬢たちが出て来るのはむしろ当たり前な話で……。
決して「イジメを受けていない」というワケではなかった。
――でも、イジメをしているのっていわゆる『モブキャラ』なのよねぇ。
しかし、ここは『悪役令嬢』でなければ意味がない。それこそ「イジメられ損」である。
「……そういえば」
ゲーム本来では『悪役令嬢』と名高いカナリアだったが、この学校でのカナリアは「色々な品物を生み出すアイディアを出している」と小耳に挟んだ事があった。
そして、その中には――。
「あ! そうだ。いい事思いついちゃった」
エステルはカナリアがアイディアを出したとされる『ある物』に気がついたのだった。




