第1話
「うーん……」
ここに一人の少女がいる。
彼女の名前は『エステル・リオナ』と言い、この世界……いや、この国『グリーンアクア王国』の魔法学校に通っている生徒だ。
――今日はアンディのイベントに進む事が出来たし。
そう、今日の放課後にはゲームの中では『隠しルート』として設定されている現宰相の息子である『アンディ・ブライト』のイベントを遂行してきた。
隠しルートを攻略も出来ているのだから、進行としては「順調そのもの」と言いたいところなのだが……。
――なんでか推しの『ゲーテ・グリーンアクア王子』の攻略が上手くいかないのよねぇ。
実は彼女は『転生者』で、前世ではこの世界観……いや、この国の魔法学校を舞台とした乙女ゲームをプレイしていたプレイヤーだったのだ。
だからこそ、攻略キャラクターたちの行動や好みなどを熟知していて……それと同時に『あるアイテム』も使って『親愛度』を効率良く上げられた。
「うーん」
しかし、彼女には大きな誤算があった。
それはこの世界が「ゲームと全く同じ」というワケではなかった……という当たり前の『事実』だ。
そもそも彼女はゲームの中での彼女の立ち位置は『主人公』で、ゲーム通りであれば「上位クラス」に所属していなければならない。
しかし、今の彼女の所属は「下位クラス」で、コレは入学試験の結果で決められたモノである。
実はこの事から、この世界は「ゲームの設定」や「ストーリー」なんてモノは存在せず、ただの「現実」だという事を導き出せるはずなのだが……。
「そもそも私が「下位クラス」って言うのがおかしいのよ。本来なら、そこには『悪役令嬢』のカナリアがいるはずなのに!」
どうやら彼女はまだその事に気がついていないらしい。いや、そもそも「受け入れられていない」というだけなのかも知れないが。
――大体、何でゲームの世界にまで来て『勉強』しないといけないのよ!
などと彼女は部屋で一人怒り狂っているが、この時点でおかしい。
なぜなら、この世界は「ゲーム」ではなく「現実」の世界で、彼女は実はカナリアと同じ様に既に死んでいる身だからだ。
つまり、彼女もカナリアと同じくこの世界を生きている一人の人間に違いはなく、そこに優劣など存在していないという「前提」が彼女の中で完全に抜け落ちていた。
だからなのか、彼女はこの世界で主人公の『エステル・リオナ』として生まれてからこれまで、特に何も……それこそ「努力」などもせずに生きてきたのだ。
そして『勉強』なんてする事もなく、それなのに「私は上位クラスになるモノ!」というよく分からない自信の元に入学試験を受けたのだが……。
何もしなければ当然試験の結果が振るう事もなく、彼女は「下位クラス」に分けられた。
ただ、この結果は言ってしまえば「当たり前」の結果だ。しかし、彼女は未だにそれが受け入れられずにいた。




