第1話
「協力者……ですか」
「ええ。と言うより、あなた自身も気がついているでしょう?」
アーリアの言葉に、ディーンは慎重になりながらも小さく頷く。
ただ、アーリアの言っている『協力者』がディーンの「考えている人物」と一致しているか……という事までは、まだ分からない。
「正直なところ。私から見てもあのエステルって子の行動は、どうにも目に余るモノがあるのよね」
「……」
「正直、あれだけ様々な男性と仲むつまじくしていると……他の令嬢たちは面白くない。そうなると、目を付けられちゃうのも当然な話なのよね」
「……それはつまり」
「ええ。イジメが起きているって事」
「……」
しかし、むしろそれはアーリアの言う通り「当たり前な話」なのかも知れない。
――ただ、イジメは容認出来ませんが。
ディーン自身もその現場を目撃したワケではないが、カナリアからもその話は既に聞いている。
「ただでさえ彼女が仲良くしている男性陣は令嬢たちにとって憧れの存在。それに、彼女は男爵令嬢。位の高い令嬢たちがそうなるのも無理もないとは思うわ」
そう言いつつ、アーリアは「正直ね」と小さく息を吐く。
「ただ、彼女の目的はどうやら殿下。そして、彼らと仲良くしているのは……」
「殿下と仲良くしたいため」
アーリアの言葉を引き継ぐようにディーンが言うと、アーリアは無言でそれに頷く。
「正直、彼女の位では彼らと釣り合わない。本来であれば、話す事すら敵わない相手。でも、ここは魔法学校だから、そういった『貴族の階級』は考慮せずにみんな仲良くって事にはなっているけど」
「なるほど……」
「まぁ、あくまで表面上はね」
「……しかし、殿下はそんな彼女の魂胆が見えているのか一切関わらない様にむしろ彼女を避けている……と」
そう言うと、アーリアは「ええ」と答える。
「まぁ、殿下が何をしているのか……なんて、大体分かるんだけど。それよりも、あの子が殿下にずっと引っ付いていると……いつかバレてしまうかも知れないと思ってね」
「バレる? 一体何をでしょう?」
「あら、あなたも気がついていたんじゃないの? グレンって子の事」
「!」
アーリアから『グレン』の名前を聞いて、ディーンは思わずハッとした。
「……」
――いえ、私でさえ気がついたのですから……この方が気付くのは当たり前……ですよね。
少なくとも、アーリアの実力はディーンよりも上。それは、色々な面を考慮しての話である。
――そもそも、彼女が『アーリア』としてこの世界に途中で干渉せずに最初からこの世界にいれば確実に「上位クラス」だったでしょうし。
それこそ、カナリアよりも相当上……である。
――それを考えると……むしろこの人の方が。
ここに来てようやくディーンはカナリアよりもアーリアの方が『イレギュラー』の様に、思えてならなかった。




