第4話
「……」
ディーンはその表情を見て、アーリアが何を言いたいのか分かり、思わず固まる。
「コレ、あの子のアイディアでしょ?」
「……鋭いですね」
ニッコリと笑うアーリアに対し、ディーンは思わず苦笑いを見せる。
「鋭いってね。コレが元々はどこで作られているか……なんて、有名な話よ?」
「……そうでしたね」
完全に頭からその事が抜けていた事に、ディーンは気がつき、それに対してアーリアは呆れた様にため息を吐いた。
「それに、私の記憶では確か、カーヴァンク家はこういったお菓子や雑貨などの業界にはあまり積極的に参加はしていなかった。でも、ここ最近は活発に動いている。コレって、あの子の要望に答えた結果でしょ?」
「……」
ここまで言われてしまっては、もうほとんどお見通しなのだろう。だから、ディーンは観念した様に「はい」と頷いた。
「やっぱり。まぁ、こういったお菓子や可愛らしいレターセットはこの世界では受けも良さそうだし。この辺りは、前世の世界の知識が役に立ったというところかしら」
「……はい。お嬢様は、お菓子に目がありませんでしたから」
そして、可愛らしいレターセットや雑貨などは本人の希望である。
――ただ、お嬢様はあまり手紙を出す様な方ではありませんでしたが。
それでも、何も装飾がされていない「真っ白い紙」というのは、やはり気になっていたらしい。
そして、カナリアはディーンに相談し、そこから兄のアルカに話がいきがカナリアの要望を聞いて、可愛らしいレターセットが生まれた。
「お兄様であるアルカ様はお嬢様に甘いところがありますから」
「まぁ。それに答えて最終的に商売に繋がるんだから、喜んで答えるでしょうね」
「そうですね」
――結果として、それが貴族だけでなく、庶民にも手が出せるようなお手頃価格のモノまでレパートリーが増えましたし。
この世界は、そもそもカナリアの前世の様に『スマートフォン』いや『電話』すら存在していない。
そうなると、必然的に「手紙」が連絡手段の主流になる。
カナリアとしては、そこまで考えてその事を兄のアルカに言ったワケではないとは思うが、商品として売れそうであれば、当然アルカが飛びつきそうなのは目に見えていた。
「でも、こういったヒット商品を生んでいれば、貴族の一人や二人。興味を持って会いに来そうなモノだけど?」
アーリアの疑問に対し、ディーンはあまり良い表情をしていない。
なぜなら「有名な人。話題の人に会った」というのが、話の話題にするという魂胆が目に見えて分かったからである。
「それは兄で当主のアルカ様が対応されています。お嬢様はあくまで『提案』しているだけですので」
ディーンがそう答えると、アーリアは「そう?」と答える。
しかし、実際のところは。そうして他の貴族が来て、カナリアの事を別の第三者に話される事を避ける為である。
――下手をすると、王子の耳に入ってしまうかも知れませんし。
正直、一番の懸念はそこである。
そして、どうやら兄のアルカはそれを察しているらしく「商品のアイディアを出しているのは自分」という事にしている様だ。
――その結果。お嬢様は学校に入学した後に「最近話題のモノを作った令嬢」と囲まれる事はありませんでしたね。
ここでもし、アルカ様が「妹がアイディアを出した」と言っていた場合。カナリアは入学式の前に囲まれていただろう。
「……まぁ、それだけじゃなくて学校の成績も良いし、まさしく非の打ち所がないって感じね。王子が同い年じゃなければ、多分。代表挨拶はあの子だっただろうって教師たちが言っていたわ」
アーリアがそう言うと、ディーンは少し誇らしく思えた。
「それはお嬢様が昔から努力をされてきた結果ですよ」
「ええ、それもあるけど……。あの子、稀少魔法の使い手でしょ?」
そうアーリアに探る様に言われ、ディーンは思わずその場で固まった。なぜなら、この事はカナリアから「目立つから言わないで欲しい」と頼まれていたからだ。
――あくまでお嬢様は「目立つ」という事を避けている。
だからこそ、魔法の授業でも『氷』の次に得意な「水」を基本的に使っている。
「……まぁ、言いたくないのであれば無理に言わなくてもいいわ。でも、それらも含めてこれらの功績をそこまで言いたくない理由って……もしかして『王子』が関係しているのかしら?」
アーリアにそう言われ、ディーンは全て見透かされた様な気持ちになった。




