第3話
「あ! お姉様~!」
「アーリア」
こうしてアーリアから「お姉様」呼びを許可してしばらくが経ち、いつもの学校に行くと、私に気がついたアーリアが笑顔で近づいてきた。
「おはようございます!」
「おっ、おはよう」
朝から元気よくはきはきとした口調でパッとした笑顔を向けるアーリアの眩しさに思わず目を細めそうになる。
――本当に、朝から元気だなぁ。
それに引き替え私は……と言うと、実はあまり朝が得意ではなく、いつもの調子を取り戻すのはお昼のちょっと前である。
――寝不足……ではないとは思うけど。
前世では漫画やテレビなどがあり、なんだかんだ寝不足になる事が多かった。
「お姉様、今日も眠いのですか?」
「え? ああ、大丈夫。お昼にはちゃんといつも通りになっているから」
私がそう答えると、アーリアは「そうですか」と口では言っているモノの、どこか納得していない顔をしている。
――多分「カナリア様がそう言うのなら」っていう感じなのでしょうね。
「そっ、それよりも。もう学校には慣れた?」
話題を変えるように尋ねると、アーリアは「はい」と口では言っているモノの、その表情はどことなく暗い。
「どうかしたの?」
「いっ、いえ! お姉様を心配させるような事は何も……」
アーリアはそう言いつつなぜか私から顔を背ける。
「……本当に?」
そう再度尋ねると、アーリアは「うっ」と小さくうめき声を上げる。
――本当に、この子はありあまる「元気」でこういった事は隠すのが上手いのよね。
しかし、何となくその理由は分かる。
実は一言で「魔法学校」と言っても、数はまり多くはないが様々な国に存在しており、どうやらこの国の「魔法学校」はとりわけレベルが高いらしい。
――だからこそ、この子の様にわざわざ隣国から通いに来る人もいるほどなのだけど。
しかし、授業のレベルが高い故になかなかついて行けずに置いて行かれてしまう人も多いようだ。
――しかも、この子は一週間とは言え遅れて入学してきたから……ついて行けないのかも知れないわね。
それを考えると……どうにも可哀想な気持ちになってしまう。そこで私は小さく「ふぅ」と息を吐きつつ「ねぇ」と声をかけると。
「はっ、はい!」
何を勘違いしたのか、アーリアは体をビクッとさせて驚いた。
――別にお説教とかじゃないんだけど。
「いっ、いや。そんなに驚かなくても良いと思うけど」
「すっ、すみません」
そう言って申し訳なさそうに謝るアーリアに対し、私はもう一度「はぁ」と小さく息を吐く。
「まぁいいわ。とりあえず、お昼休み。空いているかしら?」
「え、はっ。はい」
アーリアは「よく分からない」と言った様子で私の方を見る。
――全く。本当に、可愛いわね。
そのキョトンとした様子があまりにも可愛らしく写ってしまい、私は気を取り直す様に小さく咳払いをした。
「勉強、教えるからお昼休みの予定を空けておきなさいと言っているのよ」
私がアーリアに向かってそう言うと、突然。後ろから「じゃあ、僕も教えてもらいましょうか」と言う声が聞こえてきた。
「……え?」
ただ、その声があまりにも突然で、私は思わず驚いて後ろを振り返ると……。
「お久しぶりです。カナリア様」
「グッ、グレン」
そこにはいつものように穏やかな笑顔で私を見下ろすグレンの姿があった。




