第2話
「――と言う事があったのよ」
「アーリア・フリークス様……ですか」
紅茶を淹れながらディーンは呟く。
「ええ」
「しかし、まさかお嬢様が同い年の方から『お姉様』と呼ばれるとは」
さすがに表情では分からないが、最後の方で少し声が上ずったのは……多分、私の聞き間違いではないだろう。
しかし、それを咎めるつもりはない。なぜなら……
――私も違和感があるなって思っているわよ。
そう言いたいくらいだったからである。
しかし、あの小動物を彷彿とさせるアーリアの視線を見てしまうと……どうしても拒否が出来なかったのだ。
「はぁ」
「失礼致しました。ただ、同い年の方にそう呼ばれるとは……正直驚いてしまして」
「分かっているわよ。自分がそんな『お姉様』なんて言われる様な存在じゃないって事くらい」
「……いえ、私としてはむしろ合っている様に思いますが」
ディーンの反応は意外にも普通で、むしろ私の方が面食らってしまうほどだった。
――というか。
「え、合っている?」
「はい」
むしろこの反応に戸惑ってしまった。
「ちょっと待って。何が合っているって?」
「ですから、お嬢様が『お姉様』と呼ばれる事に対してですよ」
「……いや、だからなんでよ」
あまりにもディーンの反応が意外で、私は思わず質問を返してしまった。
「いえ、私としてはお嬢様が他の方たちよりも大人びていると思っているだけですので、そのアーリア様がお嬢様の話を教師の方から聞いてどうしてそう思われたのかは分かりませんが」
「……そうね」
確かにディーンはアーリアとは違い、昔から私を知っている。
――それを考えたら、確かにディーンとアーリアとは最初から立場が違うわね。
そうなると、ディーンにその話をしてもあまり意味は無い。知りたければそれこそ、アーリア本人に聞くしかない。
――でも、話を聞いても……正直あんまり分からなかったよね。
とりあえず分かったのは、彼女が私の事をかなり懐いてくれている事だけである。
「しかし、良かったですね」
「何がよ」
「お嬢様。ご自分でなかなかクラスになじめないと悩んでいたではありませんか」
「ああ。でも、あの子はクラスメイトではないけどね」
私がぶっきらぼうに答えると、ディーンは「それでもですよ」と苦笑いを見せて答えた。
「ところで……」
「ん?」
話題を変えるようにディーンは私の方を見る。
「お嬢様の話を聞く限り、その方はかなり目立つ容姿をされている様ですが」
「え、ええ。かなり幼い感じの見た目で、しかも翡翠色の髪だったから……遠くから見てもかなり目立つと思うわよ」
そう答えると、ディーンは「そうですか。翡翠色の」と小さく呟き、なぜかその場で考え込む様に固まってしまった。
「どっ、どうかしたの?」
「いっ、いえ。すっ、少し想像してかなり目立つ方だな……と思いまして」
ディーンは何事もないかの様に答えたが、この誤魔化している様な言い方があまりディーンらしく思えない。
――でも、この言い方をする時って決まって。
私が何度聞いてもディーンは決して答えてくれないという事を私は長い付き合いからよく知っていた。




