第4話
――あれは……。
「ゲーテ殿下!」
先程の男性たちに向けていた笑顔よりも更に明るい笑顔を主人公が向けた先にいたのは、ゲーテ王子だった。
――あっ、明らかにさっきと態度が違う。
それはもう「そこまで変えられるなんてすごいわね」とこちらが感心してしまうほどの変わり身の早さだ。
――さっきはさっきで笑顔は向けていたけれど……。
あれはあくまで「外向き」と言わんばかりにこちらの笑顔は百点満点だ。
「……ああ、君か」
しかし、そんな彼女の笑顔とは裏腹に、王子はどことなく鬱陶しそうな表情で主人公の方を見る。
「おっ? どうした? 疲れているのか?」
なんてジョイスは仲良さげに王子の肩に腕を回そうとするが、王子はそれをやんわりと無言でそれを拒否する。
――ん?
何気ない行動だったが、その態度に私は思わず眉をひそめる。
「いや、疲れてはいない。それより、こんな廊下で横に広がって話していると、他の人の迷惑になる。気をつけた方が良い」
そう王子が言うと、主人公はシュンとした様子で「ごめんなさい」と言って下を向く。
「いや、エステルは悪くない。俺たちが広がっていたのが悪いだけだ」
「そうだよ。だからそんな顔をしないで」
なんて攻略キャラクターたちは口々に主人公のフォローへと回る。
――むしろ「それが当たり前」と言わんばかりね。しかも、王子の目の前で。
「……」
その時はそんなやり取りをボーッと眺めていた私は眺めていたのだが、後でふと、王子と他の攻略キャラクターたちのとの間に「溝の様なモノ」があった様に感じた。
――あれ、でも……。
しかし、私は先程の行動も相まってその「溝」に違和感を覚えた。
なぜなら、王子と攻略キャラクターたちは全員が全員幼少期からの知る友人たちで、ゲームの中ではいつも全員一緒に行動をしていたのだ。
――それなのに。
先程、王子は主人公たちの行動を咎めていた。
ゲームの中では王子が彼らを咎めるどころか、自分も一緒に行動を共にしていたというのに。
――と言うか、ちょっと待って。確か王子って……。
私の記憶が正しければ、王子は「上位のクラス」に入っていたはずだ。
――まぁ、ゲームの世界では私は「婚約者」だったから。
結局のところ。気になっていたのだ。
「うーん?」
しかし、主人公と王子を除いた彼らの親密度や同じ方向へと向かっているのを見る限り、多分。彼らは同じクラスだろう。
――つまり、やっぱりゲームと違う……のかしら。
正直なところ、それだけでなくかなり気になる話ではあるが、残念ながら私は社交の場にほとんど出ていない。
――ちょっとでも出ていれば、王子と攻略キャラクターたちの関係性も少しは分かったかも知れないけれど……。
しかし、そういった社交の場のいわゆる『ゴシップ』と言うモノの全てが真実とは言い難い。
――むしろ「嘘」の可能性が高いし、下手をすると……。
こちら側が巻き込まれてしまう可能性もある。
しかも、私は社交の場に出た事のない「世間知らずな公爵令嬢」だ。それでいて「世間知らず」となれば、近寄ってくるのはロクでもないヤツばかりだろう。
――コレはさすがに「社交界」を偏見で見ている……のかしらね。
なんて思ってしまう自分に小さく「はぁ」とため息をつきつつ顔を上げると、王子たちの姿はなくなっていた。多分、次の授業のある教室を移動したのだろう。
「さて……ん?」
お昼休みの時間はあまり長くはない。
しかし、そんな時。ふと、学校の案内板を見つめて固まっているとても目立つ翡翠色の髪を持った幼い感じの少女が立っていのが目に入った――。




