第5話
――なぁんて、不安に思っていた事もありました……と。
私は入試当日。不安と緊張で落ち着きがなかった自分を思い出しながらに小さく「フッ」と苦笑いを浮かべ、既にディーンが確認した届いた封筒の中身を自分の目で確認した。
「……」
そこに書かれているのは「合格」の文字と、横に括弧で書かれた「上位クラス」の文字。
――結局、試験自体は本当に簡単なモノでつつがなく終わったし。こうして結果も良好……と。
なんて思いながら私は深くイスに座る。
小さく「ふぅ」と息をついて「ようやく終わった」と思うと同時に、どことなく「物足りない」という気持ちにもなった。
――あれだけ緊張していたくせに何言っているんだろ……って我ながら思うけれど。
ゲーム上では、魔法に関する筆記の試験は「よし、出来た!」とは書かれていたが、それ以外に特に詳しい説明はなく、実技がチュートリアルだった。
――まぁ、それは他のテストでもそうだけれど。
だからこそ、私が心配していたのは「実技」ではなく「筆記」の方だったのだ。
しかし、そんな私の不安を余所に筆記も実技も案外簡単で、結論から言えば「ディーンの言っていた通り」の結果だった。
――まぁ、ディーンが「心配はいらない」って言ったのは、私がちゃんと勉強していたからでしょうけど。
だが、これがもしゲーム上のカナリアの様に何も勉強をしていなければ、当然ディーンも「心配はいらない」なんて言う事もなかっただろう。
――むしろ、お母さんみたく口酸っぱく「勉強しなさい」って言ったのかしら。
多分、もう少し丁寧な言い方をするだろうが……それでも「ちょっとだけ見てみたかったかも」とそれを考えるだけで、少し笑えてしまう。
「それにしても……」
結果的に私はゲームの様に下位のクラスではなく、上位のクラスに振り分けられ、公爵家令嬢としてのメンツは保たれたと思う。そこは一安心だ。
「でも」
しかし、ディーンが試験会場で見たという「主人公の姿」は確認が出来ず、またグレンの姿も確認出来なかった。
――うーん、受験会場が別だったのかしら。あれだけの人数が受けた事を考えるとその可能性人はあるだろうし。
それに、試験を受けていてあからさまにクラスを貴族の位で分けていた事は何となく察していた。
――まぁ、お兄様が心配していたのは「試験の最中に私に言い寄って来る不埒な輩がいるんじゃないか」って事だろうけど。
そう、試験には受験生以外が試験会場に入る事は許されず、本来は喋る事も許されないのだが……。
――でも、こういう時って決まって「何か勘違いヤツ」っているのよね。
しかし、そういう「何か勘違いをしている人間」は決まって見つけ出されてつまみ出されるのがオチである。
――本当にお馬鹿よね。
そして、今回も残念な人がおり……例外なくつまみ出された。
だが、こういう人物に限って「俺は○○家の人間だぞ!」と暴れるのだが。
――全く、魔法学校は基本的に貴族の身分とか関係のない実力主義の学校だって言うのに。
しかも、魔法学校は基本的に王族の権力が及ばない。つまり、貴族の権力も及ばない場所なのである。
――まぁ、それを考えると、本来であればゲームのカナリアの様な振る舞いは許されないはずなのだけれど。
「……」
そこまで考えて私は小さく「ふぅ」とため息をつく。
――まぁ、入学式でクラス分けが張り出されるし。
私は「そう急がずともその時になればきっと主人公もグレンにも会えるだろう」と思う事にし、合格通知書と一緒に同封されていた入学式のご案内の紙を見つめたのだった――。




