第4話
「……」
そうしてあっという間に迎えた魔法学校入学試験当日――。
「お嬢様。大丈夫ですか」
「えっ、ええ」
いつもおでかけ用に馬車に乗っているにも関わらず、私の気持ちはどことなく落ち着かない。
――うぅ、やっぱり昔からこういったのって慣れない。
どうやら私は小さい頃からこういった試験やテストが好きではなく、大抵はこうして緊張してしまうのだ。
――むしろ「好き」って言う人に会ってみたいわ。
なんて思うが、こればかりは仕方がない。
「……大丈夫ですよ。試験はあくまで簡単なモノらしいですから」
「わっ、分かっているわよ」
ゲームで経験済みのため。その試験が比較的簡単だという事は知っている。なぜなら、この試験はゲームのチュートリアルも兼ねているからだ。
――そして、このチュートリアルは何度でも出来るのよね。
つまり、試験の結果が気に入らなければ何度もトライ出来、しかもその結果が悪ければその先に進む事すら出来ない。
――だから、ゲームが始まった時点で成績上位者なのよね。
しかし『悪役令嬢』である私にそういった待遇は保証されないだろう。だからこそ、ここ最近は勉強を頑張った。
――まぁ、勉強していないと不安で落ち着かないって言うのもあったけれど。
「それにしても……」
チラッと見ると、馬車の外には私と同じように魔法学校の試験を受けると思われる人たちがたくさん見える。
「たっ、たくさんの人が受けるのね」
「魔法の適性がなくても受ける人もいるらしいですから」
「そう」
「何かの間違いで受かるかも……なんて淡い希望を持ってしまう方もいらっしゃるらしいです」
「そんなに」
「魔法学校に合格する。そして、良い成績を収める。その事によって未来が約束される様なモノですから」
要するに「魔法適性がなくても諦めきれない」という人がそれだけ多いのだろう。
――やっぱり「憧れ」は消えないのね。
その結果、残酷な現実を思い知らされるかも知れないのだが……ひょっとしたら「目を覚ますために受ける」という事なのかも知れない。
「ああそういえば、お嬢様の言っていた『主人公』の方らしき人も先程見かけましたね」
「……え!」
そろそろ下りよう……なんて思っていた矢先。ディーンが何気なく言った言葉に私は驚きのあまり思わず動きを止めた。
「何せあの立ち振る舞いや見た目は目立ちますからね。貴族の中でも」
「それは……そうだろうけれど」
果たしてその言葉の意味が「ある日突然貴族になった為ににじみ出てしまう内面」なのか、はたまた「貴族には珍しい外見」によるモノなのか……それは定かではないが、つい最近まで庶民だったのであれば、それは仕方がない。
「それよりも、教えて欲しかったわ」
一応、前世でプレイしていたという事もあって、一目見れば後ろ姿でも分かるとは思うが、それでも遠目であれ何であれ、相手を知っておくのは大事な事だと思う。
「申し訳ありません。何せすぐに会場へと入って行かれてしまったもので」
「それなら……仕方ないか」
いくら私の使用人であるディーンでも、受験者以外が試験会場へと入る事は許されない。
――正直、もしかしたら……って言う可能性もあるから、見てみたかったんだけど。
そう「相手を知っておく事が大事」と思った最大の理由は『相手が自分と同じかも知れない』というわずかな可能性を考慮しての事だったのである。
――でも、こういった世界に何人も私みたいな「生まれ変わり」はそうはいないか。
正直なところ、私としては「ない」と思いたいが「ありえない」という話ではないので、警戒はしていた。
――まぁ、いずれ会うかも知れないし。
これが本当にゲームの通り進むのであれば、きっとそうなるだろう。なぜなら、彼女は『主人公』で、私は設定上『悪役令嬢』なのだから。




