第3話
ディーンの言う「想像力」というのは、多分。私が思うに前世で馴染みの深かった漫画やアニメなどから来ていると思う。
――こうして改めて考えると、なんだかんだ『魔法』って身近だったんだなぁって思うわね。使えないのに。
いや、使えないからこそ……という「憧れ」からなのだろうか。
「ああ。そう言えば、アルカ様と旦那様が『クッキー』がとても美味しかったと言っていました」
「え、本当?」
「普通のケーキよりも手軽で片手で食べられるとも言っておりました」
「そっか。それは良かった」
一応、お兄様からも「美味しかった」と言われてはいた。でも、どことなく「家族だからそう言ったんじゃ……」と心配していたので、ホッと胸をなで下ろした。
「アルカ様も旦那様もいつもお疲れですからね。ちょっとでも気を休められるのであれば、こちらとしても嬉しいモノです」
そう言うディーンの表情は優しい。
「……」
――確か、お兄様はディーンと仲が良かったんだっけ。
そもそもディーンが私の専属になったのも、こうした「お兄様との関わり」も考慮された結果だとお兄様から聞いている。
――それにしても……。
随分とディーンがこの世界になじんでいる事が気になった。
しかし、彼が自称『天使』というところを考えると……果たしてそれも「本当に信頼を得て」なのかは謎である。
――魔法の実力は折り紙つきだし。
「ああ。それと、その『クッキー』なのですが」
「ん?」
そんな私の考えている事なんてつゆ知らず、ディーンは何やら思い出した様にこちらを見る。
「商品化するつもりはないか……と聞かれたのですが」
「……」
でも、まさかそんな事を言われるとは思わず、思わず固まってしまった。
「え」
ディーンはあくまで「お兄様に言われた事」を私に言っているだけ……というのは何となく分かる。
――この世界では珍しいモノかも知れないけど、前世では誰でも作れるし。
しかし、基本的に「スイーツ」と言えば『ケーキ』のこの世界で、前世で食べていたような「スイーツ」を広めたいとは思っていた。
「それにしても、商品化ねぇ」
「はい」
「良い……とは思うわよ。思うのだけど」
「だけど?」
「そんなに難しいモノではないわよ? ディーンも知っての通り、作ろうと思えば誰にでも作れるモノだし」
そう言うと、ディーンは首を左右に振る。
「え?」
「お嬢様、こういったモノは『誰』が許可を持っているのかという事が大事なのです」
「へっ、へぇ」
そう言い切るディーンに対し私が「そんなモノなのね」と言うと、ディーンは「そんなモノです」と返した。
「では、商品化をするという事で」
「えっ、ええ」
いつもより強引なディーンの言葉に頷くと、ディーンは「ついで」と言わんばかりに「試食もお願いしますね」と言って部屋を出ていく。
多分「善は急げ」って事で早速お兄様に言いに行くのだろう。
「ディーンも……」
そんなディーンに対し、私は思わず「随分と遠慮がなくなったな」と感じた。でも、それは決して悪い意味ではない。むしろ、それだけ仲良くなったのだろう。
そう思うと……。
「ふふ」
私は少しだけ嬉しくなったのだった――。




