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生まれ変わったら『悪役令嬢』でした。  作者: 黒い猫
第六章 少年からのお誘いとお話
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第5話


「……お嬢様」

「――言わないで」


 ディーンの視線が痛い。しかし、その理由は自分がよく分かっている。


 ――まさか自分から誘うなんて思わなかった。


 これには自分でも驚きだった。


 確かに最初はかなり警戒していた。警戒していたにも関わらず、話をしていく内に楽しく……いや、多分。私は緊張していたのだろう。


 だから私は、その緊張を隠そうと思ってあんな事を言ってしまったのだ。


 ――そうよ、きっとそう! でも……。


「はぁ、なんであんな事を」

「照れ隠し、楽しかったから……理由は様々あるとは思いますが……。テンションが上がったから……というところでしょうか」

「いっ、言われなくても分かっているわよ」


 自分でも分かっているからこそ、改まって指摘されるとふて腐れたくなってしまう。


「アルカ様にはどのように説明致しましょうか」


 ふいに尋ねられ、私はキョトンと「え、普通に説明すればいいでしょう?」と答えると……なぜかディーンは首を左右に振って否定した。


「――お嬢様。全く自覚がない様なので改めて言いますが」

「……うん」

「アルカ様しかり旦那様しかり……お二人はお嬢様を溺愛しております」

「えっ、ええ。知っているわよ」


 そうでなければ、様々な事から私を庇う……なんて事は出来ないはずだ。


 ――最終的には捨てられたけど。


「いいえ、分かっていません。しかも、今はお嬢様が見てきたストーリーとは違う道筋を辿っています」

「それは……そうね」


 現に私は王子の婚約者ではなく、ゲームには登場しなかった『グレン』という少年と仲良くなっている。


「それを踏まえても警戒は怠らずに然るべきなのですよ」

「うっ、うん」


 確かにそうだ。今は王子の婚約者になっていないが、ゲームの本編が始まるのは十年ほど後だ。


 ――それを踏まえて考えても……。


 まだまだ安心は出来ない。


「しかし、あの『グレン』という少年……」

「? どうしたの?」


 ディーンは先程の事を思い出しているのか、何やら考え込む様なリアクションを見せている。


「――いえ、なんでもありません」


 しかし、ディーンはすぐに顔を上げて訂正し、私は「そう?」と答えると、そのまま馬車は屋敷へと戻って行った――。


◆  ◆   ◆   ◆   ◆


「……ふふ」

「――どうされましたか」


 二人が帰った後『グレン・アシュタルト』という少年も、同じように帰路へと向かっていた。


「いや、あの子。かわいいなと思ってね」

「……意外ですね。あなたが他の方に興味を持たれるとは」

「そうかな?」


 小さく笑いながら答える少年に対し、執事の彼は「はい」と断言する。


「お前にそう言われるという事は、きっとそうなんだろうな」


 そう言って少年は窓の外をソッと見る。


 この少年。実は周りにはあまり心を開かず、こうして砕けた口調で話せるのは執事だけだった。


 いや、今日会ったあの少女もひょっとすると――。


「まだ、正体は明かさないつもりですか」

「……そうだね。今は『まだ』その時じゃないかな」


 しかし、少年は慎重な性格だった。


 まぁ、この少年の立場を考えると……そうなってしまうのも無理はないだろうと失意は思う。


「分かりました。ですが、お気を付け下さい」

「ん?」

「こういった隠し事はタイミングを逃してしまうとなかなか明かせないモノですので」


 彼がそう言うと、少年は「肝に銘じておくよ」と小さく笑う。


「はい、ぜひ肝に銘じて下さい。ゲーテ王子」


 少年に向かってそう言うと、少年は執事の彼の方を見て小さく「フッ」と笑った――。


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