第3話
「いらっしゃいませ!」
「待ち合わせをしているのですが……」
お店のドアをディーンに開けてもらい店内に入ると、笑顔で出迎えた店員にディーンが話しかける。
「待ち合わせですね。こちらへどうぞ」
店員に言われるがままついて行くと、そこにはグレン・アシュタルトがお店の一角に座って待っていた。
「おっ、お待たせしました」
「いえ、僕の方が早く着いてしまっただけですので」
私の姿に気がついたグレンはティーカップを置きながら穏やかな笑顔で出迎える。
――ここで「かっこいい」より先に「かわいい」が来るのは多分……彼がまだ子供だからでしょうね。
もちろん私も子供ではあるのだけど。
――それにしても。
「……」
なんて事を考えながら、私はチラッと「ある人物」の方へと視線を向けた。
「ああ、こちらは僕の執事の『リュア』です」
私の視線に気がついたグレンは隣にいる男性を紹介し、その男性は無言で小さくペコリとお辞儀をした。
「はっ、初めまして。あ、こちらは私の執事の『ディーン』です」
「グレン様、初めまして」
そして、こちらもグレンにならってディーンを紹介し、ディーンもお辞儀をする。
「……」
――あれ、この人……。
グレンから『リュア』と紹介された使用人の声を聞いてはいない。今の自己紹介でも無言でお辞儀をしただけだ。しかし、この人を見ると……。
――どこかで見た事がある……様な?
しかし、その男性は短く人目を引くであろう特徴的な白っぽい髪は、すぐに見ればすぐ分かる上に、記憶に残りやすいはずだ。
「どうかされましたか?」
そんな私に、グレンは心配そうに声をかける。
「え、ああ。いえ」
――本当によく気がつく子ね。
これほど気を遣える人は大人でも珍しいのではないだろうか。
「そうですか、それではどれに致しますか?」
「え」
突然そう切り出されて思わず面食らっていると、グレンはメニューを開いて「僕のオススメは『ガトーショコラ』なのですが」と指す。
「あ、美味しそうですね!」
メニューを覗き込むと、そこにはケーキの紹介と共にイラストが描かれている。
「他にも『ショートケーキ』というモノも美味しいらしいです」
そう言うグレンは自分の事の様に笑う。そんなグレンを見ていると、こちらまで笑顔になる。
「そうですね、それじゃあ――」
そして私はグレンからオススメされたケーキを注文する事にした。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「うわぁ!」
運ばれてきたケーキを前に、私は目を輝かせて見ていると……グレンはニコニコと笑っている事に気がついた。
「あっ、あの。なっ、何か」
「いえ、楽しそうだなと思いまして」
「そっ、そんなに顔に出ていましたか?」
私は思わず顔を触る。
「ええ、とても」
そうして笑うグレンに対し、私は思わず顔を伏せる。それこそ、自分でも顔が赤くなっているのが分かってしまうほどだ。
「気を悪くさせてしまったのであれば申し訳ありません」
「いっ、いえ!」
申し訳なさそうに言うグレンに対し、私は顔を上げて謝りながら気を取り直して早速ケーキの一つに手を伸ばして口に運ぶ。
「うーん!」
――この世界のケーキは少し甘さが控えめなのよね。
甘い物は好きだが、実は甘すぎるのはあまり好きではない。でも、この世界のケーキは甘さが控えめだからペロリと食べられる。
「あの、ところで……」
「はい?」
グレンの問いかけに反応すると、グレンはティーカップを置きながらチラッとこちらを見る。
「ここに来る前にどこか行かれたのですか」
「え?」
――なんでこんな事を言うのだろう?
なんて思っていたけれど、グレン曰く「せっかくお天気が良いので、ひょっとしたらと思いまして」という事らしい。
――ああ、別に詮索とかじゃないのね。
ただの興味本位だと分かり、内心ホッとしつつ「え……と、すこし本を探しに……」と答える。
すると……。
グレンは「良い物を見つけられましたか?」となぜかさらに興味を持たれ、私は思わず「え」と面食らったのだった――。




