第2話
「お嬢様、着きました」
馬車に揺られて辿り着いたのは一件のスイーツ店。
「うん。ありがとう、ディーン」
そのお店は市場から少し離れた場所にある小さめの可愛らしいお店だった。
――とても可愛らしいお店ね。
グレンからの手紙には「どういったスイーツがある」といった事は書かれていなかった。それを考えると、ひょっとしたら色々な種類があるのかも知れない。
――ほとんどがケーキとは分かってはいるんだけどね。
それでも「美味しいお菓子」と聞いてしまうと、やはり期待してしまう。
「ドレスも間に合って良かったですね」
「えっ、ええ」
突然ディーンから話を振られて私は思わずハッとして答える。
――あっ、危なかった。
今、私が着ているのはグレンからこのお誘いを受けてからすぐに作ったドレス。
――お兄様に言ったら「いっその事全て買い直すと良い」って言われたから、お言葉に甘えてコレだけじゃなくて、色々と買ったけれど。
しかし、これは決して「浪費」ではない。必要だと思ったから買っただけなのだ。
――お兄様の許可ももらったから、問題はない……はず!
「……」
――それにしても。
実はこのドレスと買いにブティックに行った時。私はかなり緊張していた――。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
そこは流行を取り入れた上に、デザイナーのセンスを随所に散りばめたドレスや小物が人気だ『モンテル・アークナー』という今大人気のブティックである。
「……」
――ぜっ、前世で買っていた様なお店と全然違う。
店頭でマネキンが着ているドレスはどれも私が着ているモノとは違い、スタイリッシュな感じがする。
――かっ、かっこいいとは思うけれど。
今の私は五歳で、来月には六歳を迎える子供だ。確かに「かわいい」よりはこういったモノの方が私の好みではある。
それに、前世での私にとって「おしゃれ」とはどちらかというと無縁のモノで、言ってしまうとお店の外見を見るだけで煌びやかなのが分かってしまう。
――お兄様に「ドレスが欲しい」って言ったら「それだったら、ここがいい」って言われて、紹介されたけど。
その前に「どうして?」と理由を聞かれたのは言うまでもない。
――まぁ、お兄様もディーンもしくは使用人の誰かから手紙をもらった事は知っていただろうし。
そして、その話からドレス購入に直結させるのは……まぁ分からなくもない。
――それに、あの質問は「妹が悪い男に引っかかっていないか」っていう妹を心配する兄の気持ちの裏返しみたいなモノだろうし。
ついでに言うと、お兄様としては以前からカナリアの服の趣味に一言物申したかったらしく、最終的には「お母様が生前からよくここでドレスを買っていた」というこのブティックを紹介してくれた。
――大人過ぎる気もするけど……。
なんて事を思いつつ店内に入り、デザイナーの方からカタログや実物を見たり着たりしながら無事に一通り購入した……のだが。
「それで? 本当の目的は?」
「?」
「あなたのお母様は。本当に大事な事はなかなか言えない子だったからねぇ」
「……」
少しお年を召したデザイナーはどうやらお母様を知っているらしく、領収書と注文書を書きながらチラッとこちらの方を見ながら言う。
――うっ、鋭い。
しかし、このデザイナーの指摘はもっともだ。
しかも実はこの時。私はまだ「グレンと会うためのドレス」については何も言っていなかった。
「……えと、その実は――」
そこで私は観念して……いや、あの言い方は多分最初からバレていた。
だから、もはや「観念」でもないけれど、私は素直にそのデザイナーに目的を話し、私の好みを反映して出来上がったのが、青と白を基調としたシンプルなワンピースだった。




