第1話
王宮でのお茶会後。そこで知り合った「伯爵家の息子」と言う不思議な少年『グレン・アシュタルト』からお茶のお誘いを受けた。
「……」
――なんで自分の家じゃなくてお店なのかって気になるところだけど……。
それ以上に少年の言う「美味しいスイーツ」というのには興味がある。
――元々好きではあったけど。
この世界に来て以降。さらにお菓子を好きになった。
――でも、その理由って多分……
基本的に「魔法」というのは『集中力』だけでなく『体力』をものすごく使い、適度に糖質などで補わないといけない。そのための糖分摂取だ。
――まぁ、魔法の勉強は普通の勉強と一緒だし「魔法を使う」のは「運動」と一緒と考えれば分かりやすいのだけど。
もちろん、家庭教師に教えてもらう。
しかし、ディーンの言っていた通り今の私の学習状況は「普通の五歳児」が学ぶ範囲をとっくに越えており、今では「得意分野を伸ばしつつ苦手分野を補っている」ところである。
――ただ、どうにもなぁ。
元々私の魔法適性が稀少価値の『氷』という事もあり、家庭教師はなかなか苦労をしているらしい。
――それに加えて私がどんどん知識を得て先に進んでいるのも原因だと思うけれど。
でもまぁ、今の時点でこの状態であればゲームの様に「貴族なのに下位クラス」とか影でコソコソ言われる事はないはずだ。
「……」
――もしかしたら、何かの因果が働いて無理矢理でも下位クラスになる可能性も否定出来ないけれど。
そう、この世界は前世で私がプレイしていたゲームの世界観で、私はそのゲームでは『悪役令嬢』と言った役柄である。
――現実とは違うって思いたいところだけど。
それでも「自分の意思に反してゲーム通りになってしまう」と不安があるのはある程度仕方がない話だろう。
「……って、ちょっと待って!」
そこで私はハッとしてクローゼットを開けた。
――やっ、やっぱり。
そしてそこに広がる光景を前にして私は愕然とした。
なぜなら、そこに並んでいたのは「とにかく可愛い!」を追求したフリフリのレースとリボンが満点のドレスたち。
――お茶会の時はディーンに「お茶会に着ていても恥ずかしくないモノを」と指示をして持ってきたモノをそのまま着たけれど。
どうやらディーンは今の私の好みを考慮した中で選んで持って来てくれたらしい。
――あれでも「うーん」って思っていた位なのに。
しかし、思い返してみると普段着もやけにリボンが多いのは気になっていた。
それでも「どうせ普段着だし」という面倒くさがり屋な性格が出てしまい、今この時まで放置していた。
――でも、さすがにお茶会で来ていた服をそのまま着るのも……でも、この服のどれかを着て行くのも……。
ここにある服たちは多分、カナリアが買ったモノだという事は分かる。そして、そんな彼女の趣味を否定するつもりはない……ないのだが、ただ私の好みではない。
「……」
それこそ「女の子」を全面に出した様な……。でも、ゲームの中で『悪役令嬢』に位置づけられている私。カナリア・カーヴァンクには……ちょっと可愛すぎる。
――いや、こういった「かわいい」っていうのが悪いってワケじゃないし、憧れるのも分かるのだけれど、とりあえずお父様……いえ、お兄様に言って新しい服を買わないといけないわね。
そう、この家のお金の管理をしているのは父ではなく兄のアルカである。ただ、私が知る限りゲーム上のカナリアは浪費家だ。
――でっ、でもお兄様も「そろそろ新しい服を買わないとな」って言っていたし!
お茶会に行く準備をしている時、お兄様はそう言っていた。しかも、お父様から「街に行っても良い」という許しももらっている。
「よし!」
クローゼットを締め、私は意気揚々と部屋を出た。
でも、あの時そこまで楽しかったのか……それは多分「この世界に来て初めて街に出られる」という事と「友達からお誘いを受けた」という二つの出来事が重なったからだと、今となっては思う。




