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27話 蜥蜴男の営む老舗床屋でクラシック散髪、髭剃り、極上シェービング 〜それを見つめるもの〜【4】


【木こり:薬草の翁】



「馬を用意せい!」って、いかんいかん。それじゃクサナギにバレちゃうわ、てへ。コソコソ歩いて屋敷を出よう。あ、警備員の奴が近づいて来おった。「ん? 誰が空き巣じゃ、こら! ワシじゃオキナじゃ! お前らの雇い主じゃ! わかったら2度と舐めた口きいとったら、あかんど!」ったく、やれやれ言うにことかいてワシを泥棒と勘違いしおってからに、まぁワシが歩いて外出するなんて久しぶりじゃからの。前は毎日のように山を闊歩しておったのが懐かしいわい。今は何をするにも馬、馬、馬。これじゃあ、体が訛っちまってしょうがねぇなぁ。まぁ、アッチの方は愛人がいるおかげで全く鈍る気配なし、むしろ絶好調。グヘヘヘ。


って、いかんいかん。

オキナブランドが絶好調ゆえ、ついつい余裕こいて下ネタが出てしまうわい。

気を引き締めんと。

なんたって今まさに我が社は、クサナギが選ぶ相手によってさらに発展するか、はたまた火の車になるかの瀬戸際。


そんなことなど露知らず我が娘は、ルンルンとスキップしながらものすごいスピードで屋敷から程近い街の方へ。

なんて速さじゃ。

着いていくのがやっとじゃわい。

それだけ想い人に早く会いたいのか?

神であるクサナギが人間らしい心を持ってくれたのは何というか嬉しいが、それと会社の存続はまた別の話。

相手が歌い手だったら許さんぞ。

いやしかし、相手が皇子という可能性もまだある。

そうだ。

実はクサナギは皇子からのアプローチが嬉しかったんじゃないか?


だから逆にラブレターに対して恥ずかしさゆえに反応しなかったし、肖像画に一目もくれなかったのも羞恥心からだと考えれば納得がいく。

ということは皇子とクサナギは両思い。

じゃあ、なぜ夜中にコソコソ会っているのかというと、それは皇子が薬草屋の娘と真昼間に堂々とデートするのは週刊誌に撮られかねないし、キラサギの立場からしても皇子とデートしているところを他の男たちが見たら嫉妬のあまり暴動が起きて国家転覆みたいなことが起こっても困る。

何より昼間に男の人とデートするのはうぶな乙女心、恥ずかしい。

ということでの深夜密会。

人目を避けての身分違いの恋……何と甘酸っぱいことじゃ!


まぁ、クサナギは神なのだから身分違いと言ってもクソもないというか、クサナギの方が皇子より圧倒的に立場は上の気もするのだけど、とりあえずそれは置いといて、とにかくアレじゃ。

これからクサナギが会おうとしているのは皇子で確定!

ていうか、そうであってくれええええ!!


はっ!

クサナギが止まった。

街の外れ。

癖の強い飲み屋とかブラックマーケットなど怪しい店が集まる地区。

こんな場所でデート?

いや、こんな場所だからこそ気持ちが盛り上がるのかもしれんわい。


うわっ、クサナギのやつ。

何をやっとんのじゃ。

通りの角にある建物。

オレンジ色の明かりが漏れる建物に吸い寄せられるようにススス。

そして、その窓に顔を埋めるような勢いで両手をついて中を見ておるではないか。


普段のお淑やかなクサナギからは想像もつかん。

むしろ、アレが本来の姿なのか。

それともデートだから浮かれてあんなことをしておるのか。


ということは、あの窓の向こうにデート相手が!?

ていうか、ちょっと待て。

クサナギが覗いている建物。

ありゃ、サリーの床屋じゃ。

間違いねぇ、あの店構えには見覚えがあらぁ。


昔っから、この街にある床屋「サリーズ」。

クラシックな雰囲気といえば聞こえはいいが、単にボロいというか年季が入っているというか。

それでも料金が安く、仕事も丁寧なので結構な人気店。

かくいうワシも金のない頃には、随分とこの店に世話になったものじゃ。


って、懐かしんでる場合じゃないわい!

そのサリー店の窓にクサナギがトカゲのように張り付いているのは、どういうことじゃ!?

店の中には当然、サリーがいるわけで。

ということは、アレか!?

ワシの娘が恋をしているのは、サリーなのか!?


いやいやいや、それはない!

なんたってサリーは既婚者じゃ!


何年も前に結婚して、子供も五人いる。


しかも聞いて驚くなかれ。

何を隠そう、サリーは蜥蜴男(リザードマン)

種族が違うのじゃぞ!?


そんなやつにクサナギが恋をするか!?

むむむ、しかし今は多様性の時代。

人間と既婚者蜥蜴男(リザードマン)の二重禁断の恋もありうるか?

というか、クサナギは人間ではなく神。

だからこそか?


神だから、相手が既婚者だとか種族とか関係なくビビってきちまったもんは、容赦無く好きになっちまうのかえ!?

なんにせよ、マズい。

このままだと、クサナギが床屋の嫁に!

せっかく、皇子と結婚して未来永劫、歴史に名を残すというワシの計画が!


こうなったらサリーのやつが、クサナギの告白を断ってくれれば一番いいのだが、おそらく無理じゃろうて。

なんたって、ちょっと街をブラついただけでその場にいる男たちを全てガチ恋勢にしてしまう魔性全振り神。


いくら妻子がいようと、クサナギに言い寄られてはサリーもひとたまりない。

いや、すでに言い寄られて、クサナギといい仲になっていうとこうことも!

そうか!

だから夜なのにこうして店に明かりを灯して、愛しきクサナギを迎え入れる準備をしておるのじゃ!


ええい、サリーめ!

妻と子供がおりながら、まんまとクサナギの色香に惑わされおって!

許さん!



【続く】



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