27話 蜥蜴男の営む老舗床屋でクラシック散髪、髭剃り、極上シェービング 〜それを見つめるもの〜【11】
【木こり:薬草の翁】
「はっ!」
目を覚ますと、ワシはベッドの上。
ここは……宿屋か?
それもかなりラブな感じの。
エロティックな間接照明に、それはもう様々な形状の小物がベッドの周りに多数。
そのベッドも天蓋付きで部屋の四隅には卑猥な像が、あらゆるものをおったてながらコチラを睨んでおる。
そして、
ジャアアアア。
シャワールームの方から水音。
魔王か!?
魔王がシャワーを浴びておるのか。
というか、この状況はなんじゃ!?
てっきり、正体がバレたから魔王城に連れて行かれて拷問でもされるかと思ったが、まさかのエロエロの雰囲気!!
ということは、まさかアレか!?
実際のところワシの変装はバレてなくて、魔王のやつはクサナギ(ワシ)にムラッときちゃって、モリッときちゃって、そんでそんで、ワシをお姫様抱っこして、このエロ宿に連れてきたってわけか!?
まぁ実際のところ、ここが街の宿なのか、はたまた魔王城内の一室なのか、それはわからん。
わからんが、一つだけ言えることは魔王がこれからワシ相手、いや正確にはクサナギに扮したワシ相手にエッチなことをするということじゃ!
このエッチな部屋の雰囲気。
ベッドに寝かされていたワシ。
そして、シャワーを浴びているであろう魔王が何よりの証拠じゃ。
やれやれ、正体が見破られなくてよかったよかった……って、呑気にベッドの上でダンスを踊ってる場合じゃないわい!
たしかにワシの身バレは防げたが、このままだと魔王にエッチなことをされてしまうではないか!
冗談じゃない!
ワシがクサナギに変装したのは、油断させて闇の薬草を食わせるためで、決してベッドを共にするためではない。
何が悲しゅうて、あの世界の混沌を凝縮したような悪夢の象徴である魔王とくんずほぐれつせにゃならんのじゃ!
早くこの場から逃げなくては……ううう、しかしココがどこなのか分からんし、仮に逃げたとしても怒り狂った魔王の矛先がワシではなく本物のクサナギに向かい、最悪、愛娘が惨殺されかねん。
そうなればもう元の木阿弥じゃ。
クサナギが死んでしまえば、光の薬草自体が収穫できなくなる恐れもある。
逃げちゃダメじゃ、逃げちゃダメじゃ!
ここで、魔王を葬り去らなければ、もはやワシに未来はない!
よぉし、こうなったら!!
ワシは服を脱ぎ捨てる……別に、魔王に身も心も捧げるとか、そういう話ではない。
むしろ逆、魔王を亡き者にするための覚悟の脱衣。
そして、こうじゃ!
ペタペタ。
何をしているかというと、ワシは闇の薬草を糊で全身に貼り付ける!
枝のようにか細い手足に、ぽっこり出た下腹に、股間に、身体中に余すとこなく薬草を添付し、コツコツと時間を刻む時計の針が人差し指ほど進んだ後、
「で、できたぞい!」
差し詰め、ワシはギリースーツを着込んだ子供向け番組のキャラクターのような風体。
側から見たらかなり不気味な感じだが、これも魔王を葬り去るためじゃ!
コソコソとコソ泥ムーブで、浴室の前へ。
シャワーの音はまだ止んでいない。
よし、やるぞ!!
意を決して、浴室の扉をバァン!!
「うっふ~ん、魔王様! 私を食べて~ん! きゅるるるボンバー、にゃんにゃんにゃん」
どうじゃ!
これこそ、ワシの渾身の一手!
身体中に闇の薬草を貼り付ければ、エッチなことをする前に必ず薬草を食べなきゃならん!
魔王が闇の薬草をパクパクして、いざ本番に挑む頃には、毒が体に回り突然の死。
悪は滅び、世界に平和が訪れるというわけじゃ。
題して、女体盛り作戦。
実際に盛られている器は、ジジイじゃが、とにかく魔王が勘違いしてくれれば良し!
さぁ、くるぞ!
ワシの魅力に抗えず、魔王のやつがシャワーをほっぽり出して、闇の薬草に飛びついて……!
「きゃああああああ!!」
え?
この声は……ふぎゃああああ!!
突然、シャワーの中から飛び出してきた拳が、ワシの顔面にクリーンヒット!
鼻血を噴き出しながら、ワシは床に尻餅。
な、なんじゃ!?
殴られた!?
なんで!?
まさか、ワシの演技クオリティが低くて正体がバレたか!?
そんでもって、魔王が怒りの鉄拳を!?
いや、もし仮に魔王の巨腕による右ストレートを顔面に食らったとしたら、今頃ワシの頭はこの世から消滅しているじゃろう。
シャワーから飛び出してきた腕は、色白で枝のように細かった。
そして、先程の叫び声は……あ!!
「ああああああ!!」
思わず腰が……!!
腰が抜けたわい!!
だって、シャワー室に立ち込める蒸気の中から現れたのは……!!
【続く】




