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星の守護者 〜地上に降り立った最強の龍皇女は、神具に選ばれた少女を守り抜く〜  作者: 森人
第二章 迷宮編

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第089話:終焉の流星雨

地上では、ガルクとキリカが地を這うサラマンダーの大群を相手に、文字通りの死闘を繰り広げていた。

サラマンダーたちは超高温を宿した鋭い爪で獰猛に躍りかかるだけでなく、その凶悪な顎からドロドロに溶けたマグマを吐き散らし、二人の足場を容赦なく奪っていく。


「クソッ! 前回はただの炎のブレスだったから、アリアの防壁で完封できたんだが……!」


ガルクが舌打ちする。


「やっぱりこいつらも、あの神鳥の魔力で強化された上位種なんだよ!」


アリアが絶え間なく注ぎ込む神聖な耐熱魔法の加護のおかげで即死こそ免れているものの、キリカは大地に広がる溶岩溜まりを紙一重で回避しながら、愛用の双剣を閃かせた。超高速の連撃がサラマンダーの硬い鱗を切り裂く。


その直後、死角から別の個体が獰猛な牙を剥いてキリカの首筋へと肉薄した。


「――調子に乗るんじゃねえよっ!」


凄まじい風切り音と共に、ガルクの巨大な大盾が横合いから割り込み、サラマンダーの頭部を真っ向から全力で殴り飛ばす。硬固な衝撃音が響き、敵の体勢が崩れたが、今度は上空から『プラチナ・チック』が放った白熱の熱線が容赦なく降り注いだ。


ガルクは咄嗟に大盾を掲げて熱線を強引に弾き返したが、衝撃で腕に凄まじい負荷がかかる。視線を横に向けると、そこではエルフィラたちによる壮絶な「後衛魔法戦」が展開されていた。


眩い白金に輝くプラチナ・チックの群れは、残像を残すほどの高速移動を繰り返しながら、エルフィラとルインを目掛けて全方位から熱線を掃射し続けている。

だが、そこに氷の巨兵『アイス・アイギス』が立ち塞がる。巨大な氷盾と反射魔法壁を目まぐるしく展開し、雨あられと降り注ぐ熱線を完璧な精密さで遮断していく。

その盾の影から、反撃とばかりに『ブリザードイーグル』が氷結の嵐を放ち、『フロスト・ジェリー』が鋭利な氷針を乱射するが、熱線を纏って舞う雛鳥たちは、少しの衝撃によろける程度ですぐに空中で体勢を立て直してしまう。


「だめね、あの雛たちの表面温度が高すぎて、小規模な氷結攻撃じゃ有効打にならないわ!」


「――だったら、彼らの撃滅は全部僕に任せて。召喚獣たちは防御と牽制に集中して!」


ルインはそう言い放つと、普段の眠たげな雰囲気を一変させ、その瞳に鋭い魔導士の光を宿した。


彼が虚空に手をかざすと、濃密な冷気を孕んだ巨大な『氷の魔矢アイス・アロー』が次々と形成されていく。ルインが指を弾くと、放たれた青白い光の矢は、逃げ惑うプラチナ・チックたちの軌道を完全に予測し、まるで生き物のように自動追尾ホーミングを始めた。


ドォン、と空中ではじける氷結の爆音。

ルインの超高密度な氷矢が直撃したプラチナ・チックは、その圧倒的な冷気によって体内の熱源を強引に凍結され、そのままガラスのように砕け散って虚空へと消滅した。


「ふぅ……地道に一匹ずつ潰していくしかないね。エルフィラさん、タゲ逸らしの援護よろしく」


「わかったわ、任せなさい!」


普段は「めんどくさい」を連呼している天才肌の青年が、今や楽しげに、かつ冷徹な正確さで次々と氷矢を番えていく。エルフィラはその頼もしい横顔に一瞬だけ不敵な笑みを浮かべた。


「これだけ綱渡りの戦いを強いられているっていうのに、本当に大した肝っ玉ね……」


エルフィラはそう呟きながら、さらに神話の神鳥を相手に、戦を繰り広げているアイラとリィンの背中を見つめた。


――――


空を統べる神鳥に対し、アイラは激しい跳躍の中で空中に魔力陣を形成。空を統べる神鳥に対し、アイラは空中に魔法陣を展開する。そこへ自身の剣を突き通すことで、ブレードの周囲に荒れ狂う嵐の刃を纏わせる『魔法剣』へと変質させた。


「――ハァァァッ!」


鋭い踏み込みと共に放たれた、不可視の真空波を孕んだ鋭烈な剣撃。

実体を持たないはずの神鳥の炎の身体を、アイラの風の刃が強引に切り裂き、その巨体を大きくのけぞらせる。


「リィン、今だっ!」

「はいっ!!」


アイラが作った一瞬の隙を見逃さず、背後から急加速したリィンが、神具『メルクリウス』を大上段から振り下ろした。

バチバチと大気を焦がす紫電の追加効果が発動し、超重量の打撃が神鳥の翼のコアを直撃する。打撃の衝撃波に加えて狂おしい雷撃が神鳥の体内へと駆け巡り、神話の魔獣の巨体から無数の炎の羽がボロボロと引き剥がされていった。


『――グ、オオオオッ!? 』


神鳥は苦悶の咆哮を上げ、一旦高空へ退避した。そして、神鳥は、その巨大な両翼をこれ以上ないほど大きく広げた。

これまで、神鳥から放たれる散発的な熱線を強固な障壁で完全に防御しつつ、『ドラゴンスケイル』の刃で周囲の雑魚を牽制していたステラだったが、上空の神鳥から立ち上る「不穏な魔力の対流」を敏感に察知した。


(……ここからが本命というわけね。大技を繰り出すつもりよ)


ステラがロッドを握る手に力を込めた、その直後。

ズズズ、と大地を底から揺るがすような、不気味で重厚な地鳴りが一帯に響き渡った。


「な、何の音……!?」


空中から着地し、神鳥の様子を警戒していたアイラが即座に辺りを見渡す。

地鳴りは徐々に、確実に大きくなり、足元の大地が激しく振動し始めた。地上でサラマンダーを抑えていたエルフィラたちも、このただならぬ異常事態に即座に気づく。


「アリア! 上空の神鳥が何かを起動させたわ、最大級の警戒を!」


「ええ! ――『聖域展開・金剛不壊アブソリュート・ウォール』! 物理・魔法防御を最大展開します!」


アリアが悲痛な声を上げて杖を突き立てた、まさにその瞬間だった。

鼓膜を破らんばかりの凄まじい爆発音が轟き、火山の火口付近から、空を完全に覆い尽くすほどの漆黒の黒煙が噴き上がった。――大噴火だ。


神鳥が空で猛然と羽ばたくと、噴煙の中から吐き出された大小無数の、真っ赤に融解した『噴石の雨』が空を埋め尽くす。そして、まるで流星群のように圧倒的な質量となって、アイラたちへ向かって降り注ぐ。


「そ、そんな……防ぎきれない……っ!」


天を埋め尽くす絶望的な炎の質量を仰ぎ見ながら、リィンが思わず絶望の声を漏らす。

アリアの最大防御結界を以てしても、このエリア全体を消し飛ばすような物理と熱の複合質量を受け止めれば、結界ごと圧し潰されるのは明白だった。

パーティ全員に一瞬の絶望が走った、その時。


後方に佇んでいたステラが、手にしていた白銀のロッドを、まるで用済みとばかりにそっと亜空間へとしまい込んだ。そして、夜空から迫り来る赤黒い破滅の雨を見上げ、フッと妖艶に微笑んだ。

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