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星の守護者 〜地上に降り立った最強の龍皇女は、神具に選ばれた少女を守り抜く〜  作者: 森人
第二章 迷宮編

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第088話:陽炎の神鳥

迷宮の地上へ帰還した一行は、エデルナの街まで戻る時間を惜しみ、迷宮のゲート付近で野営を行った。

そして翌朝。

十分な休息によって万全のコンディションを取り戻した一行は、再び転移陣を経て火山層最奥――巨大な石扉の前へと舞い戻った。


「私たちが前回この扉の向こうで戦ったのは、炎を纏ったサラマンダーの群れだったわ。数も多く、かなりの苦戦を強いられたけれど……」


エルフィラがかつての戦闘を振り返り、厳しい表情で呟く。

朝一番の突入であるため、先行しているパーティはいないはずだ。もし先客によって石扉がロックされていた場合はこのエリアで待機する手筈だったが、幸いにも重厚な扉は静かに一行を迎え入れた。


「さて――それでは、中に入るとしよう」


アイラの言葉と共に石扉がゆっくりと左右に開き、一行はその奥へと足を踏み入れた。

一瞬、視界が暗転したかと思うと、次の瞬間には爆発的な熱量と共に景色が広がる。

もうもうと黒煙を上げる巨大な火山が、目と鼻の先に聳え立っていた。


「あれ……? 場所が変わっていないような……?」


キリカが不思議そうに振り返る。

そこには、今くぐったばかりの石扉が確かに存在していた。これまでの守護者の間のように異空間へ転移した形跡はない。まるで扉の先が、そのまま火山の山腹へと繋がっているかのようだった。

周囲の景色に変化はなく、あるはずの守護者の姿も見当たらない。ガルクたちは武器を構えたまま警戒を強める。


「――皆さん、あれを見てください!」


リィンが何かに気付いたように叫び、遥か上空を指差した。

火山の山腹。

煮え滾るマグマの噴気口から、凄まじい速度でこちらへと急降下してくる『炎の塊』が見える。

それが巨大な翼を羽ばたかせるたび、美しく伸びた尾羽から白熱した火の粉が滝のように流れ落ち、周囲の溶岩湖を激しく沸騰させていた。


「あれは……『陽炎の神鳥フェニックス』……!?」


その神々しく圧倒的な威容に全員が息を呑む中、エルフィラが震える声を絞り出した。


「なんだと……!? 神話の時代に君臨していたという伝説の魔獣じゃないか!」


ガルクが驚愕のあまり、大盾を握る手に力を込める。


「不死鳥、か。御伽話の存在だとばかり思っていたけれど、本当にいたんだね……」


「ええ。まさか、この目で直接拝む日が来るなんて思わなかったわ」


ルインとアリアもまた、かつてない緊張を浮かべながら神鳥を見上げていた。

巨岩の上へと降り立った神鳥は、黄金に輝く双眸で静かに一行を見据える。


「リィン、剣を構えろ! 来るぞ!」


その圧倒的な威圧感を肌で感じ取り、アイラが鋭く叫ぶ。神鳥の視線がリィンの持つ『メルクリウス』へ向けられた瞬間。その身を包む炎が爆発的に膨れ上がった。


『――待っていたぞ、適合者よ。シトリー様の命により、ここで貴様を討たせてもらう』


「魔獣が……喋った!?」


キリカが驚愕の声を上げる。

その直後。

神鳥が高らかに鳴き声を上げ、大きく翼を羽ばたかせた。

尾羽から零れ落ちた無数の火の粉が地表に触れ、真っ赤な炎を纏う雛鳥へと変貌する。

さらに周囲の溶岩湖が大きく波打ち、赤い鱗を持つ巨大なサラマンダーたちが次々と這い出してきた。


「サラマンダーだ! 前回の比じゃねえぞ!」


ガルクが吠える。

エルフィラも即座にアイス・アイギス、ブリザードイーグル、フロスト・ジェリーを同時召喚し、全力の布陣を展開した。


「ここは、持てる全力を尽くすしかないみたいね……!」


アリアも最高位の耐熱支援魔法を全員へ付与する。

ステラは『ドラゴンスケイル』に加え、白銀の荘厳なロッドを取り出して構えた。


(……これは、今までとは別格の戦いになりそうね)


『適合者よ。その内に眠る力を余すことなく示してみせよ』


神鳥の咆哮と共に、白金に輝く雛鳥――『プラチナ・チック』たちが一斉に飛翔した。超高温の熱線が雨のように降り注ぎ、同時にサラマンダーの群れが地響きを立てて突進してくる。


「あの神鳥は私とリィンで抑える! ガルク、他を頼む!」


「おう、任せな!」


アイラとリィンは神鳥へ。

ガルクたちはサラマンダーへ。

それぞれが役割を分け、激戦の火蓋が切って落とされた。

神鳥が翼をしならせ、烈火の流星のような速度で滑空する。それに対し、ステラがロッドを掲げ、空中へ幾重もの極大氷壁を出現させた。

しかし神鳥は神速の機動でそれらを回避し、そのままアイラへ襲い掛かる。


「――シッ!」


アイラは白金の小手で猛爪を受け流し、反撃の斬撃を翼の付け根へ叩き込む。だが神鳥の身体は炎そのもの。剣は実体を捉えられず空を切った。神鳥が嘴を開き、至近距離から灼熱のブレスを放とうとする。


「――させませんっ!!」


その瞬間。

下方から雷光が弾丸のように突き上がった。アリアの支援を受けたリィンだった。全身に紫電を纏い、神鳥の頭上へ一気に肉薄する。


「はぁぁぁっ!!」


振り下ろされた神具『メルクリウス』が巨大な雷刃を形成する。轟音と共に放たれた一撃が、神鳥の頭部へ真っ向から炸裂した。


『――ぐ、おおおおおっ!!』


明確なダメージを受け、神鳥が苦悶の咆哮を上げる。


「リィン、畳み掛けるぞ!」


「はいっ、アイラさん!」


火山の爆炎を背景に交錯する二人と一羽。

神話の魔獣と『紅蓮の絆』による戦いが今まさに本格化しようとしていた――。

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