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星の守護者 〜地上に降り立った最強の龍皇女は、神具に選ばれた少女を守り抜く〜  作者: 森人
第二章 迷宮編

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第076話:青の鍾乳洞

石板と、それに共鳴していたリィンの入場証は、徐々に光を失い、やがて静かに沈黙した。

その後、特に何かが起こる様子もなかったため、三人は小休止を挟んで態勢を整え、第二階層へ進むことにした。


「一度、地上へ戻る?」

「いや、このまま先へ進もう」


アイラが階段を下り、行く手を阻む重厚な石扉を押し開く。

三人の目の前に、淡い青の光に満ちた広大な鍾乳洞の世界が広がった。

ひんやりとした涼風が吹き抜け、左手の壁面からは地下水が美しい滝となって流れ落ちている。


「……綺麗ですね」


「ガレスが言っていた、第二層の鍾乳洞エリアか」


青と白が織りなす幻想的な光景に、リィンとアイラは思わず吐息を漏らした。

三人はそのまま洞窟の奥へ足を踏み入れる。

床には薄く地下水が張られており、水のせせらぎに混じって、三人の足音が静かに響いた。


「止まって」


不意に、後方を歩いていたステラが前衛のアイラを制した。


「あそこ、何がいるか分かる?」


ステラが指し示したのは、前方の天井に群生する鍾乳石の影だった。

独特な形状をした岩の隙間に、周囲の青い光へ完全に同化した“何か”が、いくつもぶら下がっている。


「……なるほどな」


「え? 何が見えるのですか?」


目を凝らすリィンへ、アイラが指を差して教える。


「『スティール・ラプトル』だ。周囲の色へ擬態する特性を持つ蝙蝠コウモリの魔獣だな。本で読んだことはあるが、ここでは迷宮の光に合わせて青く化けているらしい」


言われてみれば、天井のあちこちに同じような歪みが無数に潜んでいた。


「このまま気づかずに進めば、頭上から奇襲を受ける手筈というわけね。さて、どうする?」

「真空の刃で切り裂くか。私にやらせてもらおう」


「あら。アイラ、貴女って魔法も結構使えるのね」


「言ったはずだ。そこそこは嗜んでいるとな」


アイラは不敵に微笑むと、短い詠唱の後、鋭い真空の刃を天井へ放った。

鋭利な風の刃が、油断していたスティール・ラプトル数体を正確に切り裂く。

その断末魔と衝撃に驚いた残りの群れが、一斉に翼を広げ、狂ったように飛び立った。

洞窟内が耳障りな羽音で満たされる。


「ほう、思ったより数が残っているな」


旋回し、侵入者であるアイラたちを認識したスティール・ラプトルが、一斉に急降下してきた。


「奴らの翼は剃刀のように鋭い。気をつけろ!」


アイラとリィンが同時に剣を構え、襲いかかる影を次々と斬り捨てていく。

撃ち漏らして後方へ抜けた個体は、ステラの『ドラゴンスケイル』が容赦なく貫いた。

それほど時間をかけることもなく、蝙蝠の群れは完全に駆逐される。


「片付いたようだな」


「そのようですね……。これからは、上にも注意しながら進まないといけないんですね」


リィンはそう言いながら、アイラと共に剣を鞘へ収めた。


「先へ進みましょう」


ステラの言葉に頷き、一行は再び青白い洞窟の奥へ歩みを進める。

途中、行き止まりに突き当たって引き返したり、水路から這い出てきた巨大なカニの魔獣に襲撃されたりしたものの、これといった問題もなく、順調に第二層を攻略していった。

しかし、リィンがふと周囲を見回して首を傾げる。


「……宝箱、全然ないですね」


「ああ。結構な距離を歩いているが、確かに一つも見当たらないな」


前を行く二人の会話を聞きながら、ステラは胸の内に小さな違和感を覚えていた。


(ギルドやガレスの話では、出現はランダムとはいえ、この層ならいくつかの宝箱が見つかるはず。……少し妙ね)


そんな違和感を抱えながら進んでいると、前方から騒がしい足音が近づいてきた。


「冒険者たちのようだな」


現れたのは、八人の男女からなる大所帯のパーティだった。

中には複数の獣人の姿も見え、かなりの手練れである雰囲気を漂わせている。


「よう」


先頭を歩く重戦士の男が、気さくに声をかけてきた。


「あんたたち、まさか三人だけで潜ってるのか?」


「ああ」


すれ違いざま、値踏みするようにこちらの装備を観察する男の視線を受け止めながら、アイラが短く答える。


「豪胆なこった。この迷宮に三人パーティで挑もうなんてよ」


「ええ。普通は二つか三つのパーティーが合同で挑む難所なのにね」


戦士の背後にいたシーフらしき女が、興味深そうにリィンたちを見つめた。


「この先には厄介なトラップが仕掛けられている。気をつけて進むんだな」


「忠告、感謝する」


アイラの言葉に、戦士は手をひらひらと振り、そのまま通り過ぎていった。

彼らと別れてしばらく歩くと、床一面が深い地下水に覆われ、水面が鏡のように天井の鍾乳石を反射する広大なエリアへ辿り着く。


「上下の感覚が狂いそうだな。床と天井の区別がつかない」


アイラは慎重に足元を確かめながら進む。


「あっ――!?」


視覚の錯覚によって、水底に隠れた深い亀裂クレバスへ足を踏み外しかけたリィンの手を、ステラが目にも留まらぬ速さで掴み取った。


「大丈夫?」


「は、はい……! ありがとうございます、助かりました」


リィンは胸を撫で下ろし、ステラに支えられながら体勢を立て直す。

平衡感覚を惑わす危険な『水鏡のエリア』をどうにか抜け、さらに奥へ進む。

すると、前方の鍾乳石の影へ身を隠し、息を潜めながら奥の様子を窺っている、別の冒険者らしき一団の姿が視界に入った。


「……彼らは何をしているのだ?」


アイラが不審そうに低く呟いた。

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