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星の守護者 〜地上に降り立った最強の龍皇女は、神具に選ばれた少女を守り抜く〜  作者: 森人
第二章 迷宮編

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第071話:雷鳴の一撃

「迷宮にも、“夜”が訪れるのだな」

「ああ、不思議な光景だろう?」


空を模した天井が深い紺色へ染まっていく様子を見上げ、アイラが呟くと、ボルグが同意するように頷いた。


「俺たちはこのままここで野営の準備をするつもりだが、良ければ一緒にどうだ?」

「是非、そうしなよ! 皆さんが一緒だと心強いし!」


騎士のナギも、期待に目を輝かせながらアイラへ声をかける。

アイラがリィンとステラへ視線を送ると、二人に反対する様子はない。そのまま合同で野営を行う運びとなった。

『灰狼の爪』の荷物持ちを兼ねている熊獣人のバルクが、手慣れた様子で茂みに隠していた荷車を引いてくる。中からテントを取り出し、メンバーたちはテキパキと設営を進めていった。


「アイラさんたちの荷車は、どこか遠くに置いてきたの?」


テント設営を手伝っていたナギが、手ぶらに近いアイラたちの様子を訝しげに見て尋ねた。


「ああ。リィンが『収納』持ちだからな。それを利用させてもらっている」


「し、収納!?  あんたたち、本当に何でもありだな……!」


聞き耳を立てていた魔導士のユージンが、驚愕の声を上げた。希少な収納系スキルの存在は、中堅パーティにとっても驚きの対象だった。

やがて食卓が整い、焚き火を囲んで両パーティの食事が始まる。


「結界を張っておいたわ。見張りは不要よ」


交代制の見張りを指示しようとしていたボルグへ、ステラが静かに告げた。


「そいつは助かるぜ。おかげで今夜はゆっくり休めそうだ」


ボルグたちはステラの言葉を疑うことなく受け入れ、焚き火の温もりへ身を寄せた。


「それにしても、ステラさんは本当にどんな魔法も使えるんですね。やっぱり、魔導士なんですか?」


隣へ腰掛けたフィナが、興味津々といった様子で問いかける。


「……そうね。一通りの属性魔法は扱えるつもりよ」


ステラは言葉を濁しながら無難に答えた。天龍である彼女にとって、魔法とは呼吸と同じだ。本来なら、“ブレス”の一撃だけで事足りる。


(まさか、本当の姿は山のような巨体だなんて言えないわね)

ステラは内心で小さく苦笑した。


話題はやがて、アイラの魔法剣へと移っていく。


「アイラさんの一太刀ごとに燃え上がる焔、本当に素敵でした! 私もあんな風に戦ってみたいです!」


「そ、そうか……」


ナギの勢いにやや気圧されつつも、アイラは悪い気はしない様子で答える。


「私にも、あのような技が使えるようになるでしょうか?」

「魔法の適性さえ合えば、不可能ではないと思うが……」


そこへ、リィンが身を乗り出した。


「わ、私にも……! 私にも、教えていただけますか!?」


「リィンが? ……確か雷撃魔法が得意だったな」


アイラは少し考え込み、やがて快活に笑って立ち上がる。


「よし、せっかくの機会だ。ナギ、リィン。魔法剣のコツを教えてやろう」


三人は少し離れた野原へ歩いていった。


「いいか。簡単に言えば、まずは魔法を掌の上で極限まで圧縮し、それを逃がさぬよう剣へ纏わせるんだ。見ていろ――こんな感じだ!」


アイラが掌へ高密度の火球を作り出し、それをゆっくりと剣身へ同化させる。白銀の刃が瞬時に赤熱し、激しい炎を噴き上げた。

風の適性を持つナギが、必死に風だまりを剣へ定着させようとするが、真空の刃は形を成す前に霧散してしまう。


「む、難しいわね……。すぐに拡散しちゃう」

「焦ることはない。魔力を『定着』させるイメージだ」


隣では、リィンが『メルクリウス』へ雷撃を纏わせようと奮闘していた。

だが、もともと紫電を帯びている神具は、外部から加えられる雷撃を拒むように激しく反発する。


「うまくいきません……。弾かれてしまいます」


「……リィン。その剣は、既に魔力を纏っているように見える。無理に『乗せる』のではなく、剣の中に眠る雷を『引き延ばす』イメージで振ってみたらどうだ?」


リィンはアイラの助言を反芻し、深く呼吸を整えた。

追加で雷を放つのをやめ、メルクリウスの芯にある熱量を、切っ先まで繋げるよう意識する。

そして――一気に振り下ろした。


――カッ!!


夜の闇を白く染め上げるほどの巨大な雷光が奔る。

直後、鼓膜を震わせる轟鳴が平原一帯へ響き渡った。


「な、何事だ!?」


焚き火を囲んでいたガレスたちが、腰を抜かさんばかりの勢いで野原を振り返る。


「……いや。リィンが少し、新しい技を開発したところだ。気にするな」


アイラは、焦土と化し、いまだ紫の電光が爆ぜている地面を背に、頬を引きつらせながらそう答えるしかなかった。


ボルグたちの顔には、「そんなレベルの『少し』があるか!」というツッコミが張り付いていたが、誰もそれを口に出す勇気はなかった。


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