第055話:紅蓮の絆
登録を終えたアイラは、晴れやかな表情でリィンとステラの待つテーブルへと歩み寄った。
「待たせたな。さあ、出発しよう!」
弾んだ声の背後から、「お待ちください」と制止の声がかかる。
三人が振り返ると、受付のヴィンセントが書類を抱えて立っていた。
「アイラさん。出発の前に、パーティーの結成を強くお勧めします」
ヴィンセントはリィンとステラへ視線を向けながら言葉を継ぐ。
「これまではステラさんがリィンさんの『守護者』という形でしたが、アイラさんが加わるとなれば、今後の報酬分配や責任の所在を明確にすべきです。何より、パーティーを組めば『指定依頼』を受注できるようになります。これは通常クエストとは報酬の桁が違います」
「パーティーか! 冒険者らしくて、実によい響きではないか!」
アイラが身を乗り出すように食いついた。
傍観していたステラとしては、正直どちらでもよかった。むしろ指定依頼などという面倒が増えるのは本意ではない。だが、守護者としてリィンの意向を無視するわけにはいかなかった。
「リィン、貴女はどう思う?」
「パーティー……! お父さんも、かつてパーティーを組んで活躍していたと聞きました。私も、ぜひ組んでみたいです!」
リィンの瞳が輝くのを見て、ステラは小さく息をつき、観念した。
「そう……。なら、パーティー名を考えないといけないわね」
アイラは「パーティー名か……」と腕を組み、リィンも「何がいいでしょう……」と真剣に考え込み始める。
ステラは、奇抜すぎなければ何でもいいと思いながら、念話でラルスに問いかけた。
【ラルス、いる?】
【はっ、近くで皆様のお話は伺っております。ですが、私に名のセンスを問うのは酷というものです。……かつての私のパーティーも、結局は外見から取った無難な名に落ち着きましたから】
ラルス――すなわち金髪のガイの言葉を思い出し、ステラは内心で苦笑する。
やがてアイラが顔を上げ、提案した。
「私たちはリィンを軸に集まった同志。ならば『七星の同志』というのはどうか?」
「私たちは三人よ。もっといるように誤認させてどうするの?」
ステラの即座の指摘に、アイラは言葉を詰まらせる。
だがそのやり取りの中で、ステラはふと呟いた。
「……でも、『同志』という言葉自体は悪くないわね」
そこから思考を巡らせたステラが、静かに口を開く。
「アイラ。貴女の異名は確か『紅蓮の戦姫』だったかしら?」
「……ええ。本意ではないが、そのように呼ばれているな」
少し照れたように視線を逸らすアイラ。その言葉を流しつつ、ステラは続けた。
「リィンの名の意味は、古の言葉で『絆』。二人の象徴を重ねて――『紅蓮の絆』というのはどう?」
それを聞いた二人は、弾かれたように顔を上げた。
「ステラさん……とってもカッコいいです!」
「其方はやはり底知れぬな。私たちの特徴を、そこまで美しくまとめるとは思いも及ばなかった」
二人の即座の賛同に、ステラは軽く肩をすくめる。
「……決まりね。では『紅蓮の絆』で登録しましょう。それからアイラ、リーダーは貴女にお願いするわ」
「えっ、私が? ……ふふ、わかった。任せておきなさい!」
傍らでやり取りを見守っていたヴィンセントに、ステラが告げると、彼は深く一礼した。
「承知いたしました。パーティー『紅蓮の絆』、ただいま受理いたしました」




