表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星の守護者 〜地上に降り立った最強の龍皇女は、神具に選ばれた少女を守り抜く〜  作者: 森人
第一章 王都編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

44/80

第043話:エルドの大平原

翌朝、王都『ルアス』東門前。

ステラとリィンは「黄金の牙」のメンバーと合流し、手配された馬車に乗り込んだ。

そして、揺られること数時間。


視界の先には、地平線まで続く黄金の海が広がっていた。

王都の胃袋を支える穀倉地帯――「エルドの大平原」。


収穫期を控えた麦穂が朝日に照らされ、風に揺れる様は、まさに黄金の波だった。


「わあ……綺麗……」


リィンが思わず声を漏らす。


だが、その穏やかな光景とは裏腹に――前方から土煙と重苦しい足音が迫っていた。


「見惚れるのはそこまでだ、リィン。……セレン、位置を!」


ガイの声が鋭く飛ぶ。


音もなく前に出たセレンが、長弓を構えた。



今回のクエストは、魔獣『アーマード・バイソン』の討伐。

三日前から異常発生し、断続的に群れで襲来している。


すでに複数のパーティが対応しているが、数が多すぎる。

そのためギルドから緊急増援が出されていた。


視線の先では、銀ランクのパーティが必死に食い止めていた。


戦士が突進を受け止め、魔導士が後方を削る――

それが一般的な戦い方だった。


だが。


「群れは五十。……一気に削る」


セレンの矢が放たれた。

空中で分裂。十数本に増えた矢は、意思を持つかのように軌道を変え、急降下する。

直後、遠くで悲鳴が上がった。

すべての矢が――バイソンの前脚関節だけを、正確に撃ち抜いていた。

機動力を奪われた群れは、次々と折り重なって崩れる。


「突っ込むぞ!」


馬車が一気に距離を詰める。


「ルル、まとめて」


「任せて! ……重力よ、跪きなさい――『グラビティ・プレス』!」


黒い魔法陣が空に展開される。

直後、空間が歪んだ。

見えない圧力がバイソンの群れを押し潰し、一点に縛り付ける。


「よっしゃあ! 仕上げだ!」


馬車を飛び降りたゴードンが群れに突撃した。

巨大な大剣が唸りを上げ、暴風のように振り抜かれる。

鋼鉄の皮膚ごと、バイソンが次々と両断されていく。

逃れた個体も、セレンとルルが瞬時に処理した。



戦闘は数分で終わった。


リィンは呆然と立ち尽くしていた。

自分が銀ランクに上がった時の実感。

それが、まるで子供の遊びのように思える。

圧倒的な差。


「ふう。どうだった?」


ガイが笑う。

最後の一体は、ガイの手で仕留めていた。


「……凄すぎます。魔法も、剣も……全部」


震える声。

その一方で、ステラの表情は険しかった。

彼女は魔石に還りかけた死骸に手をかざす。


【ラルス、これを見て】


【……!? これは……】


毛並みの下に刻まれていたのは、紋章。

自然発生ではない。


【魔力暴走ではありません。人為的な『誘導紋章』です】


ガイは表情を変えず、仲間に指示を出し続ける。


【何者かが、意図的に群れを誘導していると……】


【その目的は?】


ステラの視線が、遠くの戦場へ向く。

他のパーティも、まだ戦闘を続けている。

王都騎士団は帝国への対応でまとまった戦力が王都を離れ、守備兵力が薄くなっている。そして、王都所属の冒険者の主戦力は――今、この平原に分散している。


【……王都の注意を、外に向けさせるため】


一瞬の沈黙。

その意味を、ラルスも理解した。

ステラはゆっくりと顔を上げる。


麦畑の彼方。

王都ルアスの方向。

その向こうにある――「空白」。


「……王都の防衛網が、からにされている」


風が、黄金の波を揺らした。

まるで――嵐の前触れのように。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ