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星の守護者 〜地上に降り立った最強の龍皇女は、神具に選ばれた少女を守り抜く〜  作者: 森人
第一章 王都編

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第041話:魔道塔の若き主

午後の日差しが王都の白亜の街並みを照らす頃、ステラとリィンはヴィンセントの案内で、魔道庁の中枢へと足を運んでいた。


訪れたのは、天空を突くようにそびえ立つ「青銀せいぎんの塔」。国家の頭脳とも言える魔導士たちが集う場所だ。


「本日お会いいただくのは、主席宮廷魔導師代理のカミーユ・ヴァランタン殿です。若くして第五階位に到達された、当代随一の才子ですよ」


応接室へ向かう廊下で、ヴィンセントが声を潜めて紹介する。


やがて通された部屋で待っていたのは、仕立ての良い官服を隙なく纏った二十代後半の青年だった。


端正な顔立ちをしているが、その瞳の奥には隠しきれない野心と、他者を一段低く見るような傲慢さが露骨に滲んでいる。


「ガストン本部長から話は聞いている。七星の紋章が刻まれた、失われたはずの武具を手にしたそうだな。……ぜひ、その宝剣とやらを確認したい」


カミーユは挨拶もそこそこに長椅子へ深く腰掛け、いきなり本題を切り出した。


歓迎の意など微塵もない、尊大な態度。


リィンはその威圧的な視線に気圧され、ステラの隣で小さく身を固くする。


「リィン、見せてあげて」


ステラに優しく促され、リィンはためらいながらも空間収納から神具『メルクリウス』を取り出した。すでに冒険者ギルドからの報告が魔道庁へ回っている以上、ここで隠す方が不自然かつ不利益だと判断したのだ。


突如として室内に現れた、神聖な魔力を放つ蒼き宝剣。


張り詰めた冷たい気配が場を支配し、カミーユとヴィンセントが同時に息を呑んだ。


「これが……」


カミーユはしばし沈黙し、やがて獲物を品定めするような酷薄な視線で、柄に刻まれた紋章を凝視した。


「間違いない。……紛れもなく、七星の紋章だ」


淡い光を放ち、時折パチパチと鋭い雷を纏う宝剣。


それを持つ少女へと、カミーユは値踏みするような鋭い視線を向けた。


その圧力に、リィンは思わず「ひっ」と小さく息を呑み、ステラの背に隠れる。


「それで、この神具はどのように手に入れたのだ?」


「はい。廃城の最奥にあった祭壇において、突如現れた隠し部屋にてリィンが発見したものです」


ステラが淀みなく答える。


「なるほど。たまたま見つけた、ということか」


鼻で笑うカミーユ。――そこでステラは、あらかじめ決めていた通りの芝居を打った。


「ええ。本当にその通りです。この子は運良くこの宝剣に選ばれただけで、その真の使い方や秘められた価値など、さっぱり分かっておりませんの」


「そ、そうです……っ。私、使い方が全然わからなくて……」


ステラの意図を察し、弱々しく首を振って合わせるリィン。


すると、カミーユの口元が満足げに、わずかに歪んだ。


「……ふむ。だろうな。お前のような経験の浅い子供に、これほどの神具が使いこなせるとは思えん」


「本当に。彼女はまだ駆け出しの冒険者ですもの。これを武器として扱う技量など、とてもとても難しいかと……」


ステラがへりくだって追従すると、カミーユは優越感を隠そうともせず、気分の良さそうな笑みを浮かべる。


「その通りだ。このような歴史的遺物は、相応の実力と知性を備えた国の中枢たる者が持つべきなのだ。……試しに、私にも触れさせてもらえないか?」


ギラギラとした欲望を瞳に滲ませ、メルクリウスへと手を伸ばすカミーユ。


「――おやめになった方がよろしいですよ」


ステラが、鈴を転がすような美しくも、極度に冷たい声で言った。


「以前、同じように無理に触れようとした方の手が……跡形もなく溶けて消えてしまいましたから」


「っ……!?」


カミーユは反射的に、弾かれたように手を引いた。


ステラの声音には、嘘を言っている気配が微塵もなかった。


否、それ以上に――ステラの瞳の奥に潜む「本物の強者」の気配に、本能が警鐘を鳴らしたのだ。


「……資格、か」


「ええ。この剣には、厳格な『所有の資格』があるようですわ」


冷や汗を流すカミーユを前に、ステラは平然と笑みを浮かべて言葉を続ける。


「幸い、この子にはその資格があります。でしたら、王国としては――この子を『鍵』として扱い、他の神具を探させた方が、はるかに合理的ではありませんか?」


カミーユは不愉快そうに目を細め、しばし沈黙して思案する。


力ずくで奪うのはリスクが高すぎる。ならば、利用する側に回るべきだ。


やがて――


「……いいだろう。それが最も効率的だと思われる」


カミーユは吐き捨てるように言うと、一度席を立って部屋を出ていった。


しばらくして戻ってきた彼の手には、一枚の古びた羊皮紙が握られていた。


「この地図には、古の祭壇と思しき場所が記されている。本物かは保証できんが……試す価値はあるだろう。持って行くがいい」


手渡された羊皮紙には、祭壇らしき座標が淡く青白く点滅していた。


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