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第011話:光芒の一閃

ステラの放った黄金の衝撃波は、広間を埋め尽くしていた死者の軍勢を文字通り「消滅」させた。その圧倒的な神威を前に、浮遊していた死霊術師ネクロマンサーは言葉を失い、激しく動揺する。


「なっ……!? 我が不浄の軍勢が、たった一撃で……」


術師が絶句したその瞬間、背後の影から一筋の蒼い閃光が飛び出した。リィンだ。ステラが軍勢を一掃し、ナイトを両断したそのわずかな「間隙」を、彼女は逃さなかった。


「ハァァァッ!」


リィンは全魔力を脚部に集中させ、ステラが切り拓いた最短の道を駆け抜ける。その速度は、一層での戦いとは比較にならないほど鋭く、洗練されていた。


ステラはリィンの背を見据えながら、静かに指先を動かす。放たれた加速魔法がリィンの体を黄金の粒子で包み込み、その速度を限界を超えて引き上げた。


(……驚いたわね。恐怖を乗り越えるたびに、これほどまでに研ぎ澄まされるなんて)


ステラの内心に、驚きとわずかな誇らしさがよぎる。リィンの動きには、もはや迷いも無駄もなかった。


術師は慌てて防壁を展開しようと杖を掲げるが、リィンの速度がそれを凌駕する。リィンはステラの魔力と共鳴した短剣を逆手に持ち替え、術師の眉間――魔力の核が集中する一点を目がけて跳躍した。加速されたその姿は、術師の目にはもはや「光の矢」にしか見えなかった。


「これで……終わりですッ!」


ザシュッ、と硬質なものを貫く音が広間に響き渡る。


リィンの短剣は、術師の展開した闇の防壁を紙のように切り裂き、その眉間を正確に貫いた。


「ギ、ギャァァァァァッ!!」


術師の悲鳴と共に、杖が砕け散る。核を破壊された死霊術師の体は、内側からあふれ出す浄化の光に耐えきれず、激しく発光しながら霧散していった。


広間に静寂が戻る。


肩で息をしながら、リィンはゆっくりと着地した。短剣を握る手はまだかすかに震えていたが、その瞳にはかつての臆病な少女の面影はない。


リィンはその場に落ちた術師の魔石を拾い上げる。


三層へと続く巨大な両開きの扉。その重厚な鉄門を前に、ステラはリィンの歩みを止めた。


「……今日はここまでにしましょう。この先は、これまでの試練とは質が違うわ」


廃城の外は、すでに夕闇に包まれ始めていた。二人は二層の比較的損傷の少ない小部屋を選び、夜を明かすことに決める。リィンが崩れた家具を寄せて寝床を作り、ステラが入り口に強力な結界を施した。


ステラはリィンの肩の傷にそっと手をかざす。淡い光が傷口を包み込み、瞬く間に皮膚を再生させていく。


「……やりましたね、ステラさん」


「ええ、見事だったわ。……疲れたでしょう」


リィンはステラから手渡された保存食を口にし、小さく息を吐いて頷いた。窓からは廃城の冷たい風が吹き込むが、ステラの魔法が灯す小さな光が、部屋を暖かく保っている。


「でも、不思議です。あんなに怖かったのに、今は少しだけ……あの扉の先が楽しみなんです」


「それは、あなたが自分自身の力を信じ始めた証拠よ」


ステラは優しく微笑むと、リィンの隣に座り、夜の静寂を見つめた。リィンの驚異的な適応能力と、実戦の中での急成長。ステラは、この少女が秘める「器」の大きさを静かに噛み締めていた。


「明日に備えて、早く休みなさい」


リィンは頷き、毛布にくるまる。ステラの隣という安心感からか、深い眠りに落ちるまで時間はかからなかった。

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